日本でOYOの勝算はあるか
インド発のホテルチェーンが日本に進出する、というニュース。価格帯として一泊5,000〜10,000円ということなので、日本ではビジネスホテルが競合、チェーンでいうと、東横インやAPAといったブランドのホテルが該当するだろうか。海外ブランドで言えば、アコーホテル系列のibisや、IHG系列のHolidayInn Expressといったところが似たような価格帯で展開している。
記事で読む限りでは、需要予測をAIで行い、価格を変動させて稼働率を高め収益を最適化するところに最大のポイントがあり、そのほか経理や予約、清掃管理などを全てアプリに集約する、といったところが既存チェーンとの違いのように思える。
需要に合わせて客室の価格を大きく変動させることは、すでにAPAホテルが行なっていることは利用者にも知られていて、需要に合わせてかなり大胆と思われる価格設定をしている印象がある。最低価格と比べて、一番高い時で3-5倍くらいになっているのではないだろうか。この価格設定が、どのようなプロセスで行われているかはわからないが、既存チェーンでも、AIを導入した価格の最適化を行うことは、さほど難しくないのではないかと思われる。価格設定だけを変えればよく、そのほかのホテル運営は変える必要がないからだ。
一方で、特に清掃管理といった人手が絡む部分を、どれだけITで効率化できるのかはちょっと判断がつかない。宿泊客の在室やチエックイン・アウトの状況をITで把握して、清掃管理スタッフの行動を最適化することで、どのくらいの効率化が図れ、運営コストが低減できるのか。宿泊客として観察する限りでは、未だに紙の台帳にペンでチェックしながら管理している様子のホテルもあるので、これをデジタル化し、次に清掃する客室をもっとも動線的に無駄がないようにすることで、清掃管理スタッフの人数を減らすことができるのであれば、オペレーションコストが減る分だけ、客室料金が同じだとしても利益は増えることになる。ただ、小さな規模のホテルだとこのコスト低減の効果が出しにくく、一定以上の客室数があるホテルであることが、このメリットを享受する条件になるのではないだろうか。
またスタッフに対する研修を行うことも、日本のホテルチェーンであればさほど珍しいことではないだろうから、あまり差別化につながると思えない。
ポイントは、すでにインドや中国で幅広いチェーン展開をするOYOが、そのブランドの知名度を生かして日本に来るインド人や中国人などの需要をどれだけ取り込めるか、にかかっている気がする。国内の既存チェーンのインバウンド対応、主にはサイトからスタッフに至るまでの言語対応の充実度がキーだと思われるが、その点で国内既存チェーンがOYOに見劣りするのなら、OYOがこうしたインバウンド需要を取り込む可能性は高い。
そうであるなら、国内の既存チェーンがすべき対応は、OYOを真似たデジタル化IT化ももちろんだが、先にするべきは、少なくても英語、可能なら中国語も含めた多言語対応で、英語や中国語で予約から宿泊そしてチェックアウトまで、どれだけ不自由なく過ごせる顧客体験を提供するか、というところがOYOとの競争のカギになるのかもしれない。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO36738920Q8A021C1EA5000/
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?