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灯台下暗し? 内定辞退率が高い地方自治体がDX人材を確保するには?

こんにちは。グローバルでDXの調査・支援をしている柿崎です。
以前、以下のnoteでDXのリーダーについて書きました。今回は、リーダーに限定せず、DX人材全般について書きます。特に学生の内定辞退率が著しい地方自治体を例に課題と対策を考えます。

三顧の礼をしても学生に内定辞退される時代

ここ数年、学生の内定辞退率の増加が話題になっています。21年卒は、新型コロナウイルスの影響で選考そのものが停滞したようですが、22年卒は、20年卒をも上回る増加傾向にあるようです。
三顧の礼をもってしても学生が来てくれない時代になった、という認識が必要です。

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特に地方自治体の内定辞退率が増加傾向

2017年に「北海道庁は6割」という内定事態率に関する衝撃的な記事を見た人は多いのではないでしょうか(2018年も6割を超えました)。日本の反対にある沖縄県庁でも、受験者数が4割も減り、さらに内定辞退率が1.5倍に増えました。
特に地方自治体の内定辞退率が増加しているようです。

肩書き、学歴重視の日本のDX

私は、CDO ClubというグローバルのDXリーダーが所属するコミュニティに属していて、海外と日本のDXリーダーや人材に会う機会があります。欧米企業は年齢や性別、肩書にこだわらず、デジタルやデータ分野における真のリーダーがDXを推進していて、10代や20代の人材に会うことがあります。一方で日本は、役職者の誰がCDOという肩書をつけるか、という点が重視されていて、50代以上のリーダーが殆どで、10代や20代の人材に会う機会は殆どありません。

DXは、ITによる業務改善ではなく、事業や組織を抜本的に「変革」する取り組みです。肩書や年齢より、組織の課題に応じて必要な人材を採用する、という意識をまずトップが持つことが重要になります。その上で、既存のルールやしがらみを破るために、企業風土に染まっていない外部の人材を登用し、その人材がリーダーシップを発揮することで社内に新たな知見を広めていくことが一つの手になります。海外ではこうした手法を採用することが当たり前で、日本でも徐々に増え始めています。特にDX部門において外部からの血を入れる組織が増えていて、デジタル庁もその一つと言えるでしょう。

灯台下暗し? DX成功の鍵は地元の若手にあり

地方自治体の中には、いきなり外部からCDOを含むDX人材を招く体力がないところも多いでしょう。こういう場合、まずは地元の若手に目を向けてみるのはいかがでしょうか。DXの取り組みを、いきなり外部の実績ある人に依存せず、まずは地元の若手を巻き込む選択肢があると思います。

デジタルは若手にとって当り前の分野です。
私が関与している会社の一つに、創業3年で従業員10名強のテック企業があり、AIを活用した画像認識や最適化のサービスを提供しています。
この会社では、中卒のエンジニアのYさんが活躍しています。Yさんは、兵庫県の集落に住んでいて、2020年に中学卒業と同時に海外の大学に留学する予定でした(大学への飛び級入学が決まっていました)。しかし、新型コロナウイルスの影響で出国できず、留学を諦めました。その後、Wantedlyで当社を見つけて応募し、採用されました。

Yさんは大学院卒のエンジニアと一緒に開発をしています。院卒のエンジニアがYさんを頼るケースを見かることがあります。また、Yさんは、非効率なルールや仕事の進め方には忖度なくストレートに言います。組織に染まった人より、圧倒的に仕事が早いです。

Yさんが住んでいる兵庫県の2019年の「行政A(大卒程度)」の一般事務職の内定辞退率は32.5%でした(採用者数80人、辞退者数26人)。兵庫県も内定辞退率に課題があるようです。
https://web.pref.hyogo.lg.jp/ji01/documents/r1.pdf

Yさんは、兵庫県で生まれて、現在も住んでいます。新型コロナウイルスにより、YさんのようにDX人材が地元に留まっている可能性があります。地方自治体にはDX人材を確保できるチャンスが到来しているのではないでしょうか。

ここで、自治体にとって最初に障害になるのが、学歴を重視する採用になるでしょう。中卒のYさんのような人を採用するには、大卒等の学歴に関係なく、DXに必要な知識・スキルを持つ若手を採用する発想に転換ができるかがポイントになります。選考プロセスのゼロベースでの見直しが必要になります。

また、せっかく若手を確保できたとしても、すぐに退職してしまうことが予想されます。若手のスピード感に組織を合わせることが大切で、コミュニケーションや勤務体系も若手に合わせてフレキシブルに変革する必要があります。自治体の仕事だけでは飽きてしまう可能性もあるので、副業を解禁する必要も出てくるでしょう。

サービスの開発を一つとっても、若手はまずプロトタイプの作成から入ります。まずサービスをリリースし、ユーザーの反応や蓄積したデータに合わせて改善するアジャイルな手法を採用します。こうしたスピード感についていくためには、従来の組織の在り方を根本から変える発想を持ってDXに取り組むことが重要です。

最近は、猫も杓子も「DX」と言うので、DXが目的になっている地方自治体のお話を聞くことがあります。DXはあくまで手段です。地方自治体の中には、DX以前に少子高齢化の問題があると思います。今回私が書いたアイデアは、DXのためではなく、少子高齢化対策の一環としてご検討頂くほうが受け入れやすいかもしれません。

今回は地方自治体を例に書きましたが、皆さんの組織では、ミッションに応じたDXのゴール、それに向けてどのような組織にするか、が明確になっていますか。DXを目的にして思考停止に陥ったり、無難な目標を設定するようなことを避けて頂ければと思います。

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