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「聞くことは最高の知性」 テレワーク時代にこそ必携の本

こんにちは、電脳コラムニストの村上です。

1億総発信者時代。古くはWeb2.0と呼ばれたブログの流行、そして今ではSNSの普及により誰もが手のひらでいつでも世界中に発信できる世の中となりました。

ビジネスの世界では『1分で話せ』(伊藤羊一著/SBクリエイティブ)やプレゼンのHowTo本などが溢れていることからも、いかにうまく話すか・伝えるかということに興味のある方が多いかということを示しています。また、若い世代の間ではYouTuberの影響により「論破する」ことがすごいという風潮もあり、これが言い負かすことで優位に立つ方法論として一定の支持を集めているようにみえます。

では、うまく話せて論破できるリーダーは、本当にチームを率いて大きな成果を出すことができるのでしょうか?

確かにコミュニケーションスキルは大切です。適切な言葉使いや論理的な文章の組み立て能力は、リーダーに必須の能力と言ってもいいでしょう。自己啓発のみならずマネジメントにも役立つ名著『人を動かす』(デール・カーネギー著/創元社)の中でも、パーティーで出会った有名な植物学者の話を何時間にもわかり聞いていたカーネギーのことを「世にも珍しい話し上手」と褒めちぎったというエピソードが出てきます。実はこのとき、彼はほとんど話していなかったのにもかかわらずです。

人に影響を与えるための2つのアプローチは、優位と信望です。優位に立つためには、相手につけ入るスキを与えず「論破」すること。それにより他人から権威があると思われます。また、信望を集めれば尊敬・賞賛されるので、やはり影響力が出ます。どちらのアプローチをとるかは人それぞれかもしれません。しかし、ちょっと落ち着いて考えてみましょう。

優位に立つということは、相手の権力や権限を(相対的に)奪うことです。つまりある種のゼロサム・ゲームであり、だからこそ優位に立とうとする人の前では防衛的に抵抗を試みます。一方で信望というのはゼロサムではありませんので、無限に集めることができます。相手にとっても尊敬や賞賛はいくらでも与えることができます。だからこそ、信望の価値は無限大なのです。

その信望を集めるためには、発信力より「聴く力」が大切であると指摘しているのが、今日紹介する本『LISTENーー知性豊かで想像力がある人になれる』(ケイト・マーフィ著/日経BP)の監訳をした篠田真貴子さんです。

話す量が均一ということは、例えば5人のチームならば、5人それぞれ、話している時間は2割で残りの8割は聞いていることになります。さらにその聞いている時間は、音声だけでなく、ボディーランゲージをお互いに読み取り合いながらコミュニケーションしているということです。これが、心理的安全性を生みパフォーマンスを高めることにつながるのだとしたら、今、多くの職場が目指す状態を実現するには、「聴く力」というスキルを高めればよいのです。

本書ではこの「聴く」ということの重要性を豊富な実例と共に紹介し、どのようにすればその力を高められるかのヒントが散りばめられています。「自分は結構聞き上手かもな」と思っている人ほど、きっと心がえぐられます。はい、私もその一人です(笑)。どういうことかというと、出版社の紹介文言からちょっと引用してみます。

・つまらないギャグを言う人は、大抵人の話を聞いていない
・友情を深めるいちばんの方法は、「いつもの会話」
・みんな「自分には先入観がない」と思いがち
・つじつまが合わない会話をそのままにしておくとだまされる
・なぜあの人は「空気が読めない」のか
・「自分とは違う」グループに、人は「恐怖」を抱いている
・「アドバイス」をしだす人は、きちんと相手の話を聞いていない
・「だれかの悪いうわさ」を聞くと、自己肯定感があがる
・その人の話を聴くと苦しくなる人は有害な人

どうでしょうか、ひとつくらいは「ギクッ」としたことがあるのではないでしょうか。実はかなり前に入手していたのですが、読了するのに2週間ほどかかってしまいました(通常のビジネス書であれば平均1日未満)。タイトルの写真もそのボリュームがわかるように撮影してみましたが、なんと全503ページあります。おそらく、大半のビジネス書の倍のページ数です。

内容はエッセイのような軽い文体になっており、また章ごとの独立性が高いのでパラパラとどこを読んでも大丈夫だと思います。私の場合は読み始めてから納得感が高すぎて行動してみたくなってしまいました。1章読むー>仕事で意識してみるー>また次の章を読むー>仕事で意識している…というフィードバックループを回した結果、読み終わるのにかなりの時間がかかってしまったというわけです。

個人的に一番刺さった部分は、以下の2つです。

・質問は「好奇心」からでなくてはいけない
・「事実」の奥には、必ず感情がある

また、名ファシリテーターは何を考えているのかという章も非常に参考になりました。

最近ではテレワークやTV会議により、ファシリテーションのやり方も変化してきました。また、対面に比べて表情や動きが見えにくいので、全員が話す機会を意識的に作る必要があります。そうでないと、おしゃべりな人だけがいつも話している状況になってしまいますから。その意味でも、本書は「今こそ」読んでおくべき本だと思います。


情報開示:本書は出版元である日経BP社から献本いただいたものです。この場を借りまして、篠田真貴子さんおよび出版社に御礼申し上げます。

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タイトル画像は筆者撮影。

#日経COMEMO #NIKKEI


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