病院の「実力」を正確につかむというコト

日本は言わずと知れた債務国である。財政再建を果たすべく努力する意思はあるのだが、高齢者人口の増加分程は働き手が増えない現実と、思うに程は成長しない経済力を背景に債務残高は膨張。2018年4月のIMF統計ではGDP比の債務残高は236.0%。G7諸国の中での第二位イタリアは同値129.7%対比で見るまでもなく、財政再建は喫緊の課題である。

社会保障費の見直しは欠かすことができない。医療でも無駄は見直されるべきであり、今般厚生省は重症対応病院について選別を始めることを決めた。2018年度中に手術や救急医療などを定量的な新基準として見做し、基準に満たなければ急性期病床としては認められないことにする、という。なぜか。

病院は機能別役割を担う。重症患者向け急性期病床がもっとも診療報酬が高くなるため、急性期病床として名乗れば、報酬が増加するから、である。国からの助成金や補助金が出るところにはこうした無駄が生じる。そのため、定量的に実力を図ることが重要で、実力通りに医療費が払われる仕組みを作る必要がある、ということに過ぎない。大それたことではない。ただ患者を治したいと日夜奮闘している圧倒的多数の善良な医療従事者にこそ、正しく診療報酬が支払われるべきだという当たり前の仕組みだ。

医療サービスは専門的なものだけに、外からはよくわからない部分が必ず残る。命を預けるに足る医療従事者なのかどうかを精査する仕組みは患者側にあるとは必ずしも言えない。医療サービスは本来それがもっとも大事であるにも関わらず、それ程“質”を問われることはないというおかしな世界にある。にも関わらず、国民皆保険の制度に守られていることに乗じて、財政を逼迫する程医療費が膨張してきた面も否定はできない。そこに、メスを入れるには、医療サービスにも、正しい定量および定性分析を加えて、“患者にとって良い”医療機関かどうか、客観的に評価していくしかあるまい。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO37046470Y8A021C1NN1000/

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