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なぜ感染者数は急激に減少しているのか?(その2)

その1に続いて、コロナの感染者数の急激な減少への説明を試みる。

(2) 感染拡大の局所性
 感染者数の急減に関する第2の仮説は、感染症を拡げているのは、人口全体ではないことである。
 単純化して、いわゆる80:20の法則に従うならば、感染拡大の8割は、全体の2割の人たちによって起こされていると想定される。
 この感染拡大への寄与が大きい人たちは、年齢やコミュニティや属性などいろいろなことで絞られると思う。
 そして、この拡大に寄与している2割の人たちが、ある時に、ワクチン接種の対象者になり始める。それは突然起きる。
 そして、それ以降は、第1の仮説のように加速度的にこの2割の層の中のワクチンを打っていない人の数が減少する。それに伴い、感染者が下がり始める。元々人数が少ないので、加速効果はより大きい。
 この7月末に、このコロナ拡大に寄与していた層にワクチンの接種が始まったとすると今見られる急速な減少が説明できる可能性がある。
 
(3) オプティミズムの効果
 第3の仮説は、7月末という時期である。それはオリンピックが始まった時期と一致する。
 我々のコロナ感染を防御するのは免疫の力である。
 ところが、免疫力は、一人一人がオプティミズムを持っているかに大いに依存する。
 PNASという米国の一流の科学雑誌に画期的な論文が2年前に出た。30年に渡って、人々を継続的に観察した結果、オプティミズムの高い人たちと低い人たちとでは、平均寿命になんと10才もの差があったという論文であった。
 我々の心理的な状態は、これほどまでに身体、特に免疫力、に影響を持つものなのである。しかも、オプティミズムは、割と簡単に変えうるものであることが、沢山の学術研究に証明されているのである。
 オリンピックの開会前には、マスコミはオリンピックに対し、ネガティブな報道が多かった。国民全体をペシミスティックにしていたのではないだろうか。
 しかし、開会後には、選手達の素晴らしい活躍の姿を見て、国民全体に前向きなムードが広がり、マスコミの論調も大きく変わった。これによって、国民のオプティミズムは大いに向上したと想定される。
 これが我々の免疫力を大きく向上させた可能性はある。
 
 この中では、第1と第2の仮説は、この急激な感染者数の減少の最も有力な説明だと思う。第3の仮説は、これに加えて、さらに影響を与えていた可能性がある。
 コロナの感染者数という国民的な一大事に、これだけデータがありながら、説明がついていないのは、とても残念である。
 一歩でも前進させるために論考させていただいた。どれも、反証可能な仮説であり、従って科学的な議論に耐える理論だと思う。


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