「過度な悲観論は行きすぎと考える5つの理由」
ここ数か月のマクロ経済の下振れと公的機関による成長率予測の引き下げを背景に、ユーロ圏に関する投資家のセンチメントは急速に悪化しており、年初の天然ガス価格の下落を受けた楽観的な見方の大半が反転したように見える。
多くの投資家はユーロ圏が循環的要因と構造的要因の両方から圧力を受けることを懸念していると思われる。借入コストの上昇や景気後退予想を踏まえた需要や投資見通しの弱さ、不透明なエネルギー見通し、中国のトレンド成長率の低下、米国の補助金や中国の電気自動車を背景とする域外との競争激化による産業衰退の可能性などがあげられる。
しかし、そこまでの悲観は行きすぎかもしれない。目先のマイナス成長のリスクは否定しないものの、急激な景気後退は回避し、2024年には緩やかな回復もあるのではと考えられる理由を以下5つ指摘する。
第一に、実質可処分所得は回復しており、2024年の消費回復を後押しする可能性がある。第二に、貯蓄率はまだ正常化しておらず、消費の上振れ余地がある。パンデミックによる過剰貯蓄が引き続き当面の消費を支える可能性もある。第三に、米国では金利上昇の煽りを受けて出て来た信用収縮が欧州ではまだ起きていない。第四に、非金融企業の利益率は依然とした高く、健全なバランスシートを維持している。第五に、財政政策は来年も引き続き投資を支えると見られることである。米国のCHIPS法やインフレ抑制法IRAの強い影響力により、欧州におけるデジタル移行やグリーン移行を支援するための巨額の公的資金の影が薄くなることは考え難い。公共投資の財政乗数は経常支出よりも高いことから、財政政策による成長への寄与度は来年も若干のプラスとなる可能性がある。
雇用創出が急激に鈍化し、目先の成長が停滞することは見ておくべきで、その意味から利上げの休止は織り込むべきではあるが、かといって、過度にネガティブに見過ぎる必要はないかもしれない理由は上記に述べた通りである。決めつけず、慎重に判断すべきタイミングである。
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