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テクノロジーを“業務を効率化”するためだけでなく、“創造的な仕事を生み出す”ために活用する。DX推進に必要な人材をどのように育成すべきか。

皆さん、こんにちは。今回は「デジタル人材育成」について書かせていただきます。

今ではテレビや新聞などのメディアで見ない日はないほど「生成AI」関連のニュースで溢れていますが、生成AIは仕事における生産性や付加価値の向上に寄与し、大きなビジネス機会を生み出す可能性があることは言うまでもありません。(※生成AIとは、学習済みのデータを活用してオリジナルデータを生成するAIを指し、与えられた学習データをもとにAI自身が最善の回答を探し出すことのできる技術です。)

生成AIには、テキスト生成や画像生成、動画生成、音声生成などがあり、それぞれの性質に適した活用方法を選択することで、人間が行っていた作業を大幅に効率化することが可能になります。

当社の場合も先日、以下のように記事に取り上げていただきました。

サイバーエージェントが生成AI(人工知能)を社内業務に全面的に導入する。ゲームやアニメなど事業部門に加え採用面接など管理部門も使えるようにし、2026年までに映像や書類の作成といった既存業務を6割減らす空いた時間は新サービスの企画や開発など付加価値の高い業務に充てる

多くの企業が目下、社内体制の整備に加え、デジタル人材の採用・育成や、従業員のリスキリングを強化するために、生成AIの「習得」や「活用」に取り組んでいるところではないかと思います。

各社が模索している生成AIをはじめとしたデジタル人材育成についての基本的な考え方や今後の取り組みについて、具体的に考えていきます。

■サイバーエージェントの取り組み

記事には、

サイバーエージェントは10月に様々な種類のAIの活用を推進する「AIオペレーション室」を新設した。専任の管理者を置き各部門から募ったエンジニアなどで構成し、業務での使い方を探る。26年までに7200人超の従業員全員が同社独自の大規模言語モデル(LLM)に基づく生成AIや米オープンAIの「Chat(チャット)GPT」を使えるようにする。

とあります。当社では、たとえば

  • 議事録の作成

  • 社内スケジュールの調整

  • 請求書処理

  • 採用面接における質問作成

  • 顧客やユーザーへのインタビュー作成

  • 映像や画像、記事などのクリエイティブ制作・編集

  • 提案書作成

など、膨大なオペレーション業務において生成AIを活用することで、削減できた時間を「戦略設計」や「企画立案」、「開発・制作」、「新サービス創出や構想」など、より付加価値の高い仕事に充てることを目的としています
また、全社員向けのリスキリングとして「高度LLM人材を育成し業界を牽引できる状態を目指す」ために、全社員向け、開発職向け、LLM人材向けと3階層に分けて育成計画を立てています。(※チャットGPTやLLMの活用法だけでなく、法務やサイバーセキュリティリスクなどの知識習得も同時に学ぶ形になります。)
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<サイバーエージェントのリスキリング内容>
▽全社員向け・・・eラーニング動画+Webテストを実施
▽開発職向け・・・開発職へのeラーニング+ハンズオン研修
▽LLM人材向け・・・ML職へLLM専門家が個別指導
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当社のようなIT企業に限らず、
①     あるべき姿(理想)の状態の定義
②     明確な目標設定
(削減する業務量や時間、人数、新規事業創出数など)
③     具体的な活用計画、及び人材育成計画の策定
④     上記の①~③を実現するための組織化
(専門部署の設置・専門人材の採用など)
⑤     具体策の推進と効果検証


というような段階を踏んで、生成AIを実際の業務レベルで上手に活用していくための計画を策定していく必要があります。その際、単に「業務の効率化」だけを目的とするのではなく、その分浮いた時間をどのように活用すべきかを定め、「時間や業務を“減らす”」ことに加え、「新しい価値を“増やす”」ことを意識した取り組みが重要になってくるのではないかと思います。

「業務効率アップや生産性向上のためのテクノロジー活用」ばかりがフォーカスされがちですが、自社のアセットと生成AIをはじめとした最新テクノロジーが得意とするソリューションを組み合わせることで、革新的なサービス提供を模索するなど「競争力につながるテクノロジー活用」を行うべきなのです。

■デジタル人材を育成するためのポイント

労働人口の減少とDX推進の需要増により、デジタル人材不足は深刻な問題となっています。デジタル人材は単にITスキルを保有しているだけではなく、様々なデジタル技術を駆使してビジネスに新たな価値を提供する役割を果たす人材であると定義すると、そのようなデジタル人材を確保することは容易ではありません。

デジタル人材を育成していく必要性は明白ですが、改めて、どのようなメリットがあるか整理してみます。

  • 競争力の向上(厳しい競争環境下で、企業の競争力を向上させる)

  • 生産性の向上(業務の自動化や効率化によって、生産性が向上する)

  • イノベーション促進(新しいアイディアを生み出し、アウトプットやプロジェクトに革新性を持たせる)

  • テクノロジーの進化に対する適応(進化するテクノロジー環境に適応し、新たなツールやプロセスを迅速に習得できる)

  • DXの推進(市場の変化に適応するために必要な、組織のデジタルトランスフォーメーションを推進する)

  • リーダーシップの育成(経営戦略や事業戦略にテクノロジーを活用し、目標達成を実現できる)

  • 人材のダイバーシティ推進(デジタルスキルを発揮することで様々なプロジェクトに柔軟に対応し、人材の多様性を高める)

このように、デジタル人材の育成は、競争の厳しい今の時代において必要不可欠であり、企業に多くの利益をもたらすことになります。
 
経済産業省はデジタルトランスフォーメーション(DX)を念頭に、経営者や従業員が身につけるべき知識や技術を「デジタルスキル標準」としてまとめています。その中の企業の人材育成の指針に「生成AI」を加えたことで、企業の社内研修や社会人学習のカリキュラムなどにも反映がされるようになりました。今や、生成AIの活用は、経営者から従業員まで全員必須の能力となっています。

デジタル人材を育成する上では、

  • 自社において必要なデジタルスキルを明確化する

  • 現在の従業員のスキルとのギャップを特定する

  • デジタルスキルの育成に適したプログラムを設計する

  • 個別の習得状況を可視化し、定期的なフィードバックと評価を行う

  • 獲得したスキルを実務で生かすための最適な部署や役割を提供する

  • 個別のニーズに合わせてプログラムをカスタマイズする

このようなステップを経て育成プログラムを設計することはもちろん、

  • 新しい技術に対して常に興味を持ち、組織内で情報共有を活発に行う

  • 最先端の技術について、情報共有だけに留まらず、どのように実際の業務に活用すると良いかディスカッションする機会を設ける

  • 従業員の学び続ける意欲を高め、継続的な学習習慣を維持する

  • 現場の社員だけでなく、経営層や管理職も同様にデジタルスキルを習得する

というような、「企業の文化としてどのようなものにしていくか」、「今後どのような人材を評価していくのか」を徹底的に考え、リーダー自らがデジタル技術の重要性を理解した上で、社員の育成環境の整備にコミットしていく姿勢が大事だと思います。

デジタル人材育成のポイント

デジタル人材の育成は、チームや組織における競争力を維持し、成長し続けていくために避けては通れない重要なプロセスです。ここに遅れをとってしまうと、数年後、数十年後の競争力を失ってしまいかねません。計画的、かつ継続的なアプローチが必要です。

■各企業のデジタル人材育成

以下のように、最近の記事だけでも各社のデジタル人材育成の取り組みが加速していることが分かります。

資生堂はデジタル人材の育成に力を注ぐ。コンサルティング会社のマネジャークラスのスキルを有する人材育成を目指したプロジェクトは、大きな成果を上げている。資生堂インタラクティブビューティーでは、社員に占める同クラスの人材比率が3年で3倍以上に増えた。「4Dサイクル」という独自の人材育成フレームワークの下、一人ひとりにパーソナライズした育成制度を設けているのが特徴だ。

IR東海がデジタル人材の育成を本格化する。2024年度以降、全社員を対象に基礎的なデジタル教育を実施するほか、データサイエンティストを育成するため23年度に人工知能(AI)を使ったデータ分析などの講座を開催する。業務の様々な分野でデジタルトランスフォーメーション(DX)を進めて収益力を高める。

JR西日本デジタル戦略が具体化しつつある。鉄道会社初のスマートフォンを使ったコード決済サービスへの参入を公表したほか、デジタル人材確保のための新会社も設立した。自社で開発した技術の外販も成果が出始めた。データを生かしてビジネスの創出と鉄道などの既存事業の再構築を急ぐ

東北電力は22日、デジタルトランスフォーメーション(DX)推進方針をまとめ、2026年3月期までに2400人超のデジタル人材を育てるとする計画を発表した。各カンパニーや部門、事業所でDXを推進する担当者を育成し、希望する社員にはデジタル講座の受講を促す。社内データや人工知能(AI)を活用し、業務効率化や新事業創出につなげる。

野村総合研究所と鶴岡工業高等専門学校(山形県鶴岡市)はデジタル時代の人材育成に連携して取り組む協定を結んだ野村総研の持つデジタルトランスフォーメーション(DX)などのノウハウを鶴岡高専の教育プログラムに活用し、鶴岡・庄内地域の発展を支える人材の育成を目指す。野村総研と鶴岡市が2019年に結んだ協定を踏まえ、産官学で地域創生を推進する。

リース会社がデジタル人材の育成を強化する。三井住友ファイナンス&リースは2030年度までに3000人をデジタルトランスフォーメーション(DX)人材に育てる。国内でリース需要が伸び悩むなか、ビジネスモデルの変革を迫られている。業務の効率化を高めながら新規事業などの底上げにつなげる。

各企業の取り組みからも分かる通り、DXの先進企業は、育成プログラムを設計し、従業員に受講を促進するだけでデジタル人材を育成しているわけではありません。実際に新規事業の推進や既存事業の再構築を行ったり、組織課題解決のために社内データやAIを活用するなど、成長途上の人材やスキルを身につけた社員が実際に能力を発揮できる場も同時に整備しています。

新しいデジタル技術を学習し身に着けること、そしてそれを実践で活用すること。どちらもあって初めてデジタル人材の育成が実現できるのではないかと思います。
 
企業が目指すべきは、デジタル技術を活用することでビジネスにおける新たな価値を創出し、これまで以上に柔軟性や迅速性を持って、変革を推進し続けることです。そのような企業こそがDX時代に適応しながら、競争優位を獲得していけるのではないかと思います。

各企業がDXを推進していくためには、明確なビジョンを描き、組織を牽引していく人材が必要であり、経営層やマネジメント層が率先して自らリーダーシップを発揮していくことが重要です。外部のコンサル企業やベンダー企業に全てを任せてしまうのではなく、企業内でデジタル人材を確保し、育成し、配置していく必要性を改めて認識し、あらゆる手法や施策を今こそ試していく時ではないでしょうか。
 
また、「デジタルスキルや技術を学ぶこと」をゴールにせず、「新たな価値を創造することでビジネス成果につなげること」をゴールにすべきです。知識やスキルを習得した後にどのような未来を描いていくのか。その共通認識を社員が持った上で、デジタル人材育成の枠組みを設計していく必要があるように思います。


最後に、「人的資本経営」が注目される中、企業の経営戦略と人的資本の戦略が結びついているかが重視されています。「優秀な人材の採用(確保)」と「既存社員の育成」が、企業の長期的な成長に直結し、将来のキャッシュフローや事業の継続性を大きく左右することになるからです。

昨今のデジタル時代においては、「人」に置き換わるAIなどのテクノロジーをいかに活用するかが議論の中心になっていますが、ビジネスの変革は「人」が中核であることはこれからも変わりません

人材が持つ力と、あらゆるテクノロジーが持つ可能性。この双方を企業の競争力の源泉と捉えると、経営戦略の実効性を確保するために、デジタル人材を圧倒的なレベルで輩出していくことが、企業価値向上に直結することは間違いないと考えています。


#日経COMEMO #NIKKEI

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