「社員シェア」に想うこと。
こんにちは、ローンディールの原田です。
この1か月くらい、大手企業さんが大量の人材を出向に出すとか、逆に受け入れるとか、いろいろな記事が出ていました。
お給料は元の会社が負担するとか、出向先の企業が働いた分のお給料を払い差分を元の会社が払うとか、形態はさまざまなようです。
更には日経新聞さんでこんな特集も組まれています。
改めて、この1年の社会の変化を実感します。
ということで、今日は私たちが「レンタル移籍*」という事業をやってきた経験から、「社員シェア」という動きについて思うことをいくつか書いてみたいと思っています。
*レンタル移籍:大企業の人材に、一定期間ベンチャー企業で働く機会を提供する仕組み。企業の研修目的で活用され、イノベーション人材の育成に活用される。パナソニック、NEC、NTTグループ各社など、現在40社以上の大手企業が利用中。
実際に出向する社員にとって試練であるということを忘れてはいけない。
社員シェア、新しい挑戦としてとても面白い試みだと思います。ただ、導入する企業の方に、ぜひ覚えておいてほしいことがあります。それは、実際に出向する人にとって、働きなれた環境を出て別の場所で仕事をするということは本当に大変な試練だということです。
ところが、そんな出向者を元の会社が放置してしまうということが、容易に想像できてしまいます。昔からある出向制度のお話などを伺っていても、出向させた社員について、元の会社の上司や人事は関与していないケースがほとんどなのです。
現業が多忙な中では致し方のないことかもしれませんが、月に1回、チャットとかプライベートなメッセージでもよいですし、例えば月に1回の定例会議とかには参加してもらうとか、そういうやり方も考えられます。とにかく、出向者とコミュニケーションをとりつづけておくということが大事ではないかと思います。
そうやって元の会社からも気にかけてもらっているということが、安心感に繋がります。安心感を醸成することで、出向期間を(詳細は以下に記載しますが)前向きなものにできるのではないかと思います。出向に送り出すことがあるような企業の皆さまには、ぜひご留意いただきたいなと思います。
きっかけは何であれ、成長の機会になるのは間違いない。
出向される方の中には、会社の経営状況などの理由から、ご自身が望んだわけではなく出向というケースもあろうかと思います。そういう方にも、ぜひ知っておいていただきたいことがあります。それは・・・
社外経験は絶対に成長機会になる、ということです。
全く違う環境に身を置くことは当然ストレスがかかります。会社が取り組んでいる事業の内容も、やるべき業務の内容も、今まで未経験のことばかりかもしれません。でもそういうことを、転職という形じゃなくて経験できるというのは、見ようによってはとってもお得じゃないですか?
自分の会社は、外から眺めるとどういう風に見えるのか?自分の能力や経験は、異なる環境に行っても通用するのか?通用するとしたら、「どういうところが通用するのか」と考えることは、環境や自分の力やを相対化して理解する力(メタ認知力)を高めます。逆に、通用しないとしたら、何が足りないのかを考えてみる。それは、伸びしろに気づくきっかけになるはずです。
もちろん新しい環境に対応するのは大変だとは思いますが、ご自身のキャリアにとって必ずプラスになるということを覚えておいてください。私たちは「レンタル移籍」という事業を通じて、大企業で働いている100人以上の方々に社外経験を積んでいただきましたが、間違いなく全員が成長し、多くの方が「人生が変わる経験だった」と仰ってくださっています。ぜひ安心して挑戦していただければいいなと思います。
企業と個人の関係が変わろうとしている。
冷静に見ると「社員シェア」という表現が、ちょっとあれですよね。社員は企業の持ち物じゃないのですから・・・という気もしますが、起こっていることはとても面白い変化ですよね。
企業と個人、従来だと1:nの関係だったものが、n:nに変わろうとしている。副業やプロボノという個人の動きもあるし、今回の「社員シェア」や私たちの取り組んでいる「レンタル移籍」などのように企業が動いて変わってきた側面もあります。
こうして複数の企業と関係を持つことによって、個人は自分の市場価値に気づくことになります。そして、優秀な人材であればあるほど、確実に選択肢が増えることになります。そうなると、企業はどうやって人材に対する求心力を高めていくのかということが、今後ますます大きなテーマになってくるんじゃないかと思います。
具体的にいくつかの方法が考えられますね。
まず、ビジョンやミッション、パーパスみたいなもので惹きつける、という方法があります。共感してもらえるビジョンによって人を惹きつけるというスタイルですね。
次に考えられるのは、条件で惹きつけるという方法。昔は安定とか待遇がすべてだったかもしれませんが、今後は副業解禁やアルムナイなど、かかわり方の選択肢を増やすという手も加わりそうです。最近話題の週休3日とかも、ありえるでしょうか。(個人的に、週休3日はあまりピンと来ていないのですが・・・詳しくはこちら)
求心力を高める方法として、もう一つ上記に加えたいと思います。それは、自分たちの組織が個を活かせる組織であるように、企業側が自己変革していくということです。この会社は、自分の志を理解してくれて、挑戦を応援してくれる。そういう組織の求心力って、すごく強いと思うんですよね。組織を変えていくことはとても力のいることですが、必要に迫られつつある、良い機会だと思います。人生100年時代、不確実性の時代、変わるべきは個人ばかりではないはずです。
おわりに
以上、やや散文的になってしまいましたが、「社員シェア」という記事に触れて思ったことを書いてみました。
今回は「社員シェア」というちょっと特殊な事例を題材にしてみましたが、まだまだ厳しい状況が続くなかで、多くの企業がたくさんの試行錯誤をしているのだと思います。
何か新しいアクションをすること自体が本当に難しいタイミングではありますが、一時しのぎではなく、この機を自分たちの変わるきっかけにできたら、本当に素晴らしいことですよね。
今を企業変革のチャンスと捉える。そういう意識が広まっていけば、いつか穏やかな日常が戻ったときに、企業はもっともっと個人が輝ける素敵な舞台になっているんじゃないかな。そんな希望を抱いて、この局面でも挑戦を止めずに、みんなで乗り越えていけるとよいですよね。
私自身も、もどかしいことがたくさんありますが、そんな意識で取り組んでいこうと思う今日この頃です。
追伸
まったく本筋とは関係ありませんが三浦知良さんの文章にすごく励まされたので、シェアさせていただきます。
くじけそうになり、テンションの下がる日もあるだろう。それでもいいじゃない。サッカーも24時間365日、緊張感マックスではいられない。張り詰めた努力のガードを解く瞬間を、どこかでつくる。そして立ち直り、出口を目指す。
もう、赤べこのようにうなずきながら読みました。倒れちゃダメなんじゃなくて、倒れても立ち上がればいい。何度でも立ち上がれるということだけ信じていれば、どこかで風向きは変わったりするもんじゃないかな、と思います。それでは。