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インドネシア人はインドネシア産が大好き:「メイド イン JAPAN」のブランドは未だ世界で通用するのか?

ここ10年程、インドネシアの動向を見続けていると、外資系企業依存の産業構造から脱却し、インドネシア人自身による地元企業が力をつけてきたなというのを感じる。インドネシアをはじめとした東南アジアは、いまや世界で最もスタートアップが盛んなエリアの1つとなっている。Tech in Asia によると、2017年の東南アジアにおけるスタートアップ投資額は9,000億円弱にまで及んでいる。インドネシアはシンガポールに次いで、第2位の投資先となっている。スタートアップ投資の成果も出ている。日本には3社がリスト入りしているユニコーン企業もインドネシアには5社が存在する。そして、そのうちの1社はデカコーン企業と呼ばれる、評価額1兆円を超える企業だ。

勢いがあるのはテック系企業だけではない。様々な分野で「メイド イン INDONESIA」の価値が上昇してきている。その中には、日本のお家芸とも呼べるアニメ産業も含まれる。先月からスタートしている、インドネシアにおけるポカリスエット(大塚製薬)のCMアニメーションの品質の高さはネット界隈で衝撃を与えた。


「高品質」の海外製品か、「中品質」国内製品か
スタートアップをはじめとしたインドネシアの地元企業が実力をつけてきたとは言え、直ぐに製品やサービスの品質が先進国の企業と同レベルにまでなるかというと、そう簡単な話ではない。例えば、インドネシア人の国民食とも言えるインスタント麺のインドミー(インドフード)は世界シェア第3位を誇り、世界シェアの第2位の日清食品に追い付かんばかりの勢いだ。もちろん、インドネシアにおいてインドミーはトップシェアの地位を占めている。しかし、インドミーの包装紙の品質や製造工程、商品開発の技術水準は日本メーカーには及ばない。

それでも、価格や味の嗜好性、文化適合度などの諸問題はあるものの、グローバル・ブランドのNISSINよりも、インドネシアでは地元ブランドのインドミーが選ばれる。地元ブランドは、地元ゆえに顧客ニーズに柔軟に対応できるという利点も考慮すべきではあるが、顧客の中にある地元贔屓の感情も軽視できない問題だ。

日本の市場は、海外の企業からは国内ブランド志向が強すぎるために参入障壁が高いと言われている。しかし、海外製品・サービスと国内製品・サービスの間に代替困難なほどの格差がない限り、消費者は一般的に国内ブランドを志向する傾向にある。これは、低価格・低燃費で大きな品質さがあった時、日本製自動車が米国製自動車を代替できたが、そこまでの優位性がなくなると日本製自動車の優位性が薄れてしまうのと似ている。同様の事例としては、二輪市場におけるインドメーカーの台頭も言えるだろう。10年前は、圧倒的な市場シェアを誇っていた日本メーカーだが、現在はインドメーカーにシェアを奪われている。インドネシアにも同様のことが言え、品質差が埋まってくるにつれ、優位性を有していた外資系ブランドが国内ブランドにシェアを奪われ始めている。

特に、インドネシアにいると、インドネシアの多くの人びとが自分たちの文化や歴史、社会に誇りを持ち、自国で産み出された製品やサービスを応援し、愛するところを良く目にする。当然のことではあるが、ある一種のナショナリズム的だが、人としての本質的な傾向は、ビジネスで考慮すべき大きな外部環境要因だ。

このような状況の中、インドネシアの急速に成長している国内市場を狙い、日本だけではなく多くの外資系企業がインドネシアに新規参入している。しかし、外資系企業のおかれた状況は楽観できるものではなく、経済成長の恩恵を享受できているのは一握りだ。そのような中、比較的順調に行っている企業は、インドネシアの地元企業ではまだ代替が難しい製品・サービス(日用品や嗜好品)を提供している企業か、外資系企業でありながらインドネシアに密着した製品やサービスを展開している企業だ。

例えば、Uberは東南アジアから事業撤退したが、同様のサービスを提供しているインドネシアのGojekとシンガポールのGrabは成功をおさめている。地元企業のGojek が成功をおさめている市場で、シンガポール資本のGrab が受け入れられている要因の1つとして、インドネシアの有力財閥であるリッポーグループと提携していることが大きい。リッポーグループと提携することで、インドネシアにおける大きな課題である決済サービス「OVO」を使うことによってローカライズに成功している。

「OVO」はリッポーグループの提携している商業施設などで使うことができ、Grabでの利用と併せて、キャッシュレス決済サービスにおける独自の経済圏を確立することに成功している。

インドネシアをはじめとした急成長を遂げる新興国市場を狙う時には、地元企業が代替することが困難な強力な優位性を持ったビジネスか、もしくは地元企業と提携関係を構築し、半地元企業として受け入れてもらうほどの徹底したローカライゼーションが鍵となるだろう。


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