コロナウィルスと温暖化問題 ー今年、CO2排出量は大幅に減るでしょう。しかし根本的な解決ではない可能性が高いー
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コロナウィルスと温暖化問題 ー今年、CO2排出量は大幅に減るでしょう。しかし根本的な解決ではない可能性が高いー

なかなか終息の見えない新型コロナウィルスの感染。感染が最も深刻な中国・湖北省では、企業活動の再開が度々延期されており、現在は3月11日までの活動休止が決定しているとのことです。
2か月近く企業活動が休止することになれば、その経済的影響はどれほどのものになるでしょうか。メディアではインバウンドの観光客が激減したことなどが主に取り上げられていますが、日本の製造業において、サプライチェーンに全く中国企業が関わっていないというケースはほとんどないでしょうし、市場としても大きな中国の経済が停滞することの打撃は計り知れません。また今朝は、NY市場で株価が1000ドル超という記録的な下落をしたと報じられています。
いずれにしても、今は一刻も早く事態が収まるのを祈るばかりです。

しかし経済活動が停滞すると、実は、CO2排出量は減ります。
そんな記事がぽろぽろと出てきました。
例えばこちら
この記事では、(コロナウィルスによって旧正月明けの2週間、中国の生産活動が停滞したため)「世界のCO2排出量約1億トンが削減できたことを意味する。」としています。

日本の1年間の総排出量が約13億トン。このわずかな期間の経済停滞で1億トン削減とは、そもそも中国はどんだけ大排出国なのだ、という感じですね。桁を読み間違えたかと思いました。(←間違っていたら指摘してください。電車で移動中に書いているとたまにポカをやります。)
余談ですが、石炭消費が減ったことで、CO2だけでなく大気汚染の方でも改善が見られたという記事も出ています。

CO2排出量は、経済・景気と密接にリンクしています。これが、「温暖化問題は環境問題ではなく、経済問題」と常々申し上げている背景であり、気候変動問題に対する持続的な解決策が技術開発にあると申し上げている理由でもあります。

下記の図1は、GDPとCO2排出量の相関関係を示したものです。ある国のある年のGDPと、その年に排出したエネルギー起源のCO2を全部プロットすると、このように強い相関関係があることがわかりました。

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もちろん、これは過去の経験であり、今後もそうだという訳ではありません。
というよりもむしろ、この関係を崩すために、いま我々が使っている化石燃料よりも安価で安定的にエネルギーを供給する技術を開発することが期待されているわけです。
それがよく政治家の方が口にする「環境と経済の両立」。
経済成長は維持しながらもCO2排出量を削減する、「デカップリング(経済成長とCO2排出量の間の連動を断絶する)」です。ただ、これはそれほど簡単なことではありません。

米国のオバマ前大統領も、大統領職を退いた後にScience誌に「The irreversible momentum of clean energy」と題する記事を投稿して、自身の政権の成果としてデカップリングに成功した実績を強調しています。デカップリングをもたらした理由としてオバマ前大統領が挙げたのは、シェール革命(掘削技術の進歩により、シェール層から安価に天然ガスや石油が取り出せるようになったこと)による石炭から天然ガスへの燃種転換と、再生可能エネルギーの普及で、より強調されているのは後者の方でした。再生可能エネルギーは政府の支援策もあって既に価格競争力を持つようになりつつあること、民間企業の自主的な動きや各州政府の取り組みもあって、この流れは止めようがないとして、自身の環境政策を全部ひっくり返そうとしているトランプ新政権に釘を刺したのです。
 しかしデカップリングをもたらした要因を分析すると、「再生可能エネルギーの導入がグリーン成長の原動力」と断じるのはまだちょっと無理があるようです。公益財団法人地球環境産業技術研究機構(RITE)が行った検証によれば、オバマ政権下の米国のデカップリング、CO2削減に最も貢献したのは「シェール革命」であることが指摘されています。

世界全体でも、2013年以降GDP成長は維持しつつも、CO2排出量が伸びていないとして、
「我々は経済成長とCO2排出のデカップリングに成功した!」、「環境と経済は両立しうる!」と盛り上がったりしたのですが、よくよく分析すると、リーマンショックを経験した後、2009年くらいから2013年くらいまでの間にむしろその反動として排出量が大きく膨らんでおり、2013年以降にその調整が行われたとみるべきといったような指摘もあるのです。

このあたり、以前書いた「経済成長とCO2排出量のデカップリングを考える」に詳しく書きましたので、お目通しいただければありがたいのですが、要は、環境と経済の両立というのはそれほど簡単ではないということ。
そして、単純に、金融危機や今回のコロナウィルスのような事象で排出量が減ったとしても、それは揺り戻しが起きる可能性があるということ。CO2排出量が減ることはどんな理由であれ良いことと考える向きもあるかもしれませんが、持続可能な削減を可能にするのは、やはり技術開発だということです。

今月上旬には、2019年の世界のCO2排出量(エネルギー起源)が2018年と比較して増えていない(横ばいであった)ということで、温暖化対策が効果を表し始めたと歓迎する向きも報じられました。そして、このままで行けば2020年も相当CO2排出量は抑制されるでしょうから、来年の今頃には「2年連続で抑制に成功!」と報じられるのだろうと思います。

CO2減少自体は良いニュースではあるのですが、そのときに、「本当の対策は技術開発にあり。一喜一憂せず取り組もうよ」と突っ込んでいただけると、大変ありがたいです。

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温暖化・エネルギー政策の研究をしています。現実的な移行とサステナブルな未来を考えています。 国際環境経済研究所理事・主席研究員/筑波大学・関西大学客員教授/U3InnovationsLLC共同創業者・代表取締役。