見出し画像

科学的に証明された「イヌは飼い主に似る」 ペットの家族化に潜むチャンスとリスク

こんにちは、電脳コラムニストの村上です。

この前外が見えるカフェで休んでいたら、通りを散歩していた犬と飼い主があまりにそっくりで3度見しました。これは初めてのことではなく、わりと高頻度で見かける現象です。みなさんもきっと出くわしたことがあるのではないでしょうか。

それだけではく、イヌに見た目が似ていると認識された場合(想像の世界ではありますが)、向こうから近づいてくるということがあります。私は髪が長めのウェーブで耳が隠れていることが多いためか、アメリカン・コッカー・スパニエルが高確率でご挨拶にきてくれます。仲間意識なんでしょうか。私の方もどうも他人とは思えない親近感を覚えます。

「イヌは飼い主に似る」という言説はよく耳にするものですし、前述の通り経験則でも本当っぽい話に思えます。探してみたらこれを真面目に研究した論文もあり、この理論を裏付ける科学的根拠は一応あるようです。

世界中でおこなわれた15の研究をレビューした最近の論文で、イヌとその飼い主は見た目と行動が似ているだけでなく、共に過ごす時間が長くなるにつれて性格の類似性が深まっていくことが示された。論文は2024年9月29日付けで学術誌「Personality and Individual Differences」に掲載された。イヌは飼い主に似るという説を裏付ける科学的根拠がまたひとつ加わった。

多くの研究で、ボランティアの被験者にイヌと飼い主の写真を正しく一致させられるかを調査していた。その結果、正解の割合が偶然の確率(チャンスレベル)を上回ることがわかった。

日経ビジネス

元の論文はこちら。

Like owner, like dog – A systematic review about similarities in dog-human dyads

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0191886924003441?via%3Dihub

要するに、イヌを飼うときには見た目が似ている子を選びがちという話のようです。家族として仲間に入れる要素として、見た目の類似性というのはひとつのキーファクターなのでしょうか。それ以外にも生活を共にするにつれて性格も似てくるということが指摘されています。

私はかつてイヌとネコを同時に飼っていた時期があります(タイトル画像)。ネコには性格の類似性は感じたことがないどころかむしろ下僕という関係性でしたが、確かにイヌとは精神的な絆を感じることが多々ありました。おもしろいものです。

ペットの家族化、人間化を意味する言葉として「ペットヒューマニゼーション」というものがあるそうです。コロナ禍の初期のころ、普段からその発言に注目している国際政治学者のイアン・ブレマー氏の提言を聞いてお茶を吹いた記憶があります。いつものような切れ味鋭い自信に溢れた口調で「イヌを飼うべきだ」と断言していました。

パンデミックで人と会う機会が減ることについて「人はつながりがなくなると脆い」という流れからのこの発言。まさに「ペットヒューマニゼーション」時代を表したものでしょう。

ペットの家族化、人間化を意味する「ペットヒューマニゼーション」という言葉が欧米やアジアで広がっている。新型コロナウイルス禍がその動きを速め、ビジネスや社会への影響は軽視できなくなっている。

日本も例外ではない。一般社団法人ペットフード協会(東京・千代田)の2023年推計では犬と猫の飼育頭数は22年比微増の計1591万頭。人間の15歳未満人口(1417万人)を上回る状態が定着した。

犬の平均寿命は14.62歳と10年より0.75歳伸び、CTや磁気共鳴画像装置(MRI)を備えて脳神経科、循環器科、ペインクリニックなど専門医療に対応する総合病院が増えている。オーガニックや無添加をうたう人間並みのペットフードやサプリメントの需要も高まり、犬にかかる平均支出は月1万6156円。年々増加し、4年前より28%伸びた。

矢野経済研究所の推計ではペット関連市場の規模は23年度見込みで1兆8629億円。26年度に2兆円に近づくと予想する。

日経電子版

驚くべきことに、犬と猫の飼育頭数はこどもの数をすでに上回っています。市場規模も2兆円弱と巨大で、これは国内ゲーム市場や化粧品市場と同じくらいの大きさです。こうなるとビジネスチャンスとしても無視できない市場であると同時に、必ずしもペット好きとは限らない、またはアレルギーがあるなどの理由で避けなくてはならない人々もいるということを考慮しなければなりません。社会の中でどう共生していくのかをしっかりと考えなくてはいけない時代になっているなと思います。


みなさまからいただく「スキ」がものすごく嬉しいので、記事を読んで「へー」と思ったらぜひポチっとしていただけると飛び上がって喜びます!

※ タイトル画像は筆者撮影

#日経COMEMO #NIKKEI


いいなと思ったら応援しよう!