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オンラインワークショップの「デザインモデル」とは?

2020年3月25日に小池百合子都知事から外出自粛要請が通達されました。この事態のなかで、本格的にリモートワークに切り替えた企業の方、フリーランスの方も多いかと思います。

この事態のなか「リモートワークによって組織・チームの求心力が薄れ、コミュニケーションが希薄化し、売り上げも下がるしメンタルもダウンしてしまうのでは?」と危惧している方も多いのではないでしょうか。

しかし、働き方や暮らし方が根本から変わろうとしているこんな時だからこそ、オンラインでのコミュニケーション・学習・創造の場づくりの方法を、あれこれ試してつくりかえるチャンスでもあります。

ぼくが所属するミミクリデザインは、企業・地域・学校などの課題に伴走するワークショップデザイン・ファシリテーションの専門家集団です。この事態のなかで、オンラインワークショップの設計・運営のご依頼をいただくことも増えてきました。

今日は、最近の仕事のなかで見えてきた、オンラインワークショップのデザインモデルについて共有したいと思います。

いかにして「接続」せずに学習を起こすか?

オンラインワークショップのデザインにおける最大のポイントは「いかにしてウェブ会議サービスに接続する時間を最大限活用するか?」ということです。言い換えれば「いかにZOOMなどに接続せずにグループ学習を起こすか?」ということになります。

なぜなら、ZOOMなどweb会議システムはとても疲れるからです。画面にずっと集中するのも大変です。また、他の人の発言で聞き取りにくかった部分を聞き返すなど、日常のコミュニケーションよりも知覚的な疲労が大きいでしょう。まして、初対面の人とオンラインで会わなきゃいけないとなれば、疲労はさらに増大します。

反転学習アプローチで、接続時間を一方通行にしない

いかにして接続する時間の効果を最大化するか?

ここで参考になるのが「反転学習」という考え方です。

「反転学習」とは、レクチャーなど一方通行なコミュニケーションは集団に向けて行わず、集団学習の場を動的で双方向的な場として活用するアプローチです。その最も初歩的なやり方が、ビデオで予習し、ZOOMで対話する、というものになります。

会議ならば、事前に資料を共有し、読んだ感想をGoogle Documentなどに書き込んでおく。レクチャーならば、全員に向けてプレゼンテーションは動画に撮って共有し、質問に答えるライブセッションをZOOMで行う、といったかたちでしょうか。

しかし、これだけではもともとワークショップで扱っていたような複雑なプロセスはファシリテーションできません。個々人の想いが乗った意見を共有し、対立意見を乗り越えて合意形成する、といったファジーなプロセスを乗り越えるためには、オンラインワークショップ独自のデザインモデルが必要になります。

(ここからはぼくの仮説なので、どんどんご意見くださいね)

ワークショップの基本モデル

ワークショップとは、基本的に以下のようなプロセスでデザインされます。(ワークショップデザイン論ー創ることで学ぶ 参照)

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イントロでは、ワークショップの目的を共有したのち、参加者同士の関係性作りをしながら、学びの目的について普段の経験を思い出す時間を作ります。

料理教室にたとえると、「普段スープってどうやって作ってますか?」という問いで参加者同士自己紹介をしてもらうようなイメージです。

知る活動では、新たなものの見方を知ったり、何かを作るための方法を知ります。レクチャーを受けたり資料を読み合わせたりして、新たなものの見方・考え方を知り、対話を通して解釈していきます。

料理教室にたとえると、「出汁の取り方は、市販の顆粒だしか、昆布や鰹節でわざわざとるかの二択ではありません。食材そのものからも出るものなのです」といったような新しい出汁の捉え方に出会い、食材から出汁をとる具体的な方法を知るプロセスにあたります。

創る活動は、知る活動で知った考え方や方法に基づいて、実際に実験してみる方法です。どんな食材でどんな出汁が出るかを実験してみるのも面白そうです。

まとめのフェーズでは、参加者同士が今日の実験から気づいたことをまとめながらふりかえり、日常生活の中でどう応用するかを話し合います。

これがワークショップの基本モデルです。このようなタイムラインを、どのようにオンライン化するか。しかも、接続時間を最小限にするにはどうするか。これがオンラインワークショップのデザインモデルにおいて必要な要素になります。

オンラインワークショップのデザイン階層

オンラインワークショップにおいて、コミュニケーションチャンネルを4つの階層に分けてみました。

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1層目は個人ワークのレベル。時間も同期しません。

2層目は時間を同期しないウェブ空間の共有。Google SlideやMURAL、miroなどが当たるかと思います。

3層目はグループワークのレベル。3〜6人程度のグループで、ZOOMやハングアウトを使って接続するれです。

4層目は全員で時間を同期させるレベルです。ZOOMとブレイクアウトルームを駆使して、数十人規模を一気に集めるレイヤーです。

イントロは「招待状」

まず、イントロダクションのオンライン化について考えます。

イントロダクションの役割は、ワークショップの目的を参加者と共有し、参加者が自律的に活動できるようにすることです。そのためにはいくつかのポイントがあります。

①参加者の緊張や警戒心を解く → どういう気持ちで参加すればいいかがわかるようにする
②希望を抱いてもらう → 学ぶことが楽しみになるような文章を書く
③見通しを共有する → 具体的なスケジュールとログイン方法などを記載

これらのポイントをクリアする、「招待状」をしたためるのが有効な方法ではないかと考えています。

茶会やパーティーなどで重要な役割を果たすのが「招待状」です。招待状次第で、行きたくなるかどうか気分が変わることってありますよね。これにワークショップのイントロダクションの役割を持たせるのが良いのではないかと考えます。

企画者およびファシリテーターのバイブス(説得力、情意、波動)が、参加者に届くよう、文章を作ります。ミミクリデザインでは、soarさん、LIVESENSEさんと協業し、プレスリリースという名の招待状を作りました。よかったら参考にしてください。

チェックインは「自己紹介スライド」+「オンラインお茶会」

ワークショップの冒頭で重視されるのが「アイスブレイク」つまり、参加者同士の関係づくりです。(アイスブレイクの誤解については、こちらの記事をご参照ください)

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オンラインでやる場合は、ここでもひと工夫必要になります。たとえば、Google Slideで1人一枚自己紹介シートをつくってもらい、事前に目を通してもらう方法がありそうです。参加者全員が、全員の顔と名前や興味あることなどにさっと触れることができます。

とはいえ、一度も会話したことがない状態でワークに入ることはできません。そこからいきなり大人数でつなぐのではなく、3〜6人の小規模でグループをつくり、ZOOMやwherebyなどにログインしてもらい、チェックインのお茶会をしてもらうことなども、よいかもしれません。

知る活動は「反転学習アプローチ」を用いる

ワークショップにおいて、参加者が持っている思い込みや日常的な思考をゆさぶったり、範囲を広げたりするいわばかき混ぜ役が「知る活動」です。

この「知る活動」の設計には「反転学習アプローチ」がそのまま役に立ちそうです。その基本がビデオレクチャーを事前に見てもらい、リアルで対話をしてもらう方法です。それ以外にも、いくつか方法があります。

①資料を読んで感想をワークシートにまとめる
②自宅でできる簡単な課題をやる
③掲示板などを使って一つの問いで雑談し、その感想をまとめる

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これらの方法に共通するのは、単に受動的に情報を受け取るだけでなく、サマリーを書いたり、まとめたり、ワークをしたりして、何かしら情報を解釈する時間をつくることです。

ビデオレクチャーや資料を見て思い浮かんだことを質問し対話できる掲示板などがあっても良さそうです

創る活動のバリエーションは多岐にわたる

さて、ここまで、イントロで目的を共有して関係性をつくり、知る活動で参加者の認識をゆさぶったりひろげたりしてきました。そのうえで、どんなふうに創る活動をしてもらうのか。どんなスープ作りを実験してもらうのか。

ここでの活動の設計は多岐にわたるので詳細は書きませんが、大きく二つの方法があるかと考えます。

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ひとつは、MURALやmiroなどのブレストツール+ZOOMで同時接続し、アイデアを拡散→収束させる方法。参加者全員でひとつのツール空間上でブレストする様は、なかなかダイナミックで興奮します。(マインクラフトやVRなどのゲーム空間上で行う例もあるようです。楽しそう)

もうひとつは、グループ課題を出して期限を決めて提出してもらい、発表とフィードバックをZOOMなどで接続する方法です。課題に取り組む時間をゆったりとれる一方で、グループ間の相互作用が生まれにくいし、参加者の自律性に依存するところが難点です。

話が一瞬逸れますが、ミミクリデザインでは先日、オンライン上で「ロールプレイ」の実験をしてみました。オンラインであるがゆえに恥ずかしさが低減し、演じることのハードルが下がったことや、発話のターンが明確になるがゆえに、個々人の発言が汲み取りやすいなどのメリットがありました。

アイデアを創発するのか、対話をするのか、はたまた何か遊びをしてみるのか、ぜひみなさんも実験をしてみてください。

まとめはあえて「あたため」る

アイデアを創発したり、対話をしたり、活動をした直後に、活動をふりかえる対話を行うのがワークショップのセオリーです。

しかし、創発もやってふりかえりもやって〜と考えると、やはり長い時間接続することになります。疲れます。

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ここでも、反転学習アプローチを応用することができるかもしれません。ふりかえり用の個人課題を出しておいて、後日対話のセッションを設けるのもよいかもしれません。あえて、ワークショップでの没入体験を「あたため」ておいてもらうのです。

あるいはグループでお茶をしながらふりかえり、そのふりかえりの成果をZOOMを使って全体で共有するといった段階的な設計もできるでしょう。

課題:ベースとなるコミュニティ設計をどうするか?

さて、ここまでオンラインワークショップのデザインモデルを仮説的に検討してきました。

今日検討したのは、イントロ、知る活動、創る活動、まとめのフェーズを細かく分割し、ZOOMで接続する時間としない時間を両方活用する方法です。

これは言い換えれば、オンラインを利用したコミュニティ設計・運営であると言えます。ワークショップはもともと「工房」という意味であり、人が集まって創作活動をする場を意味していました。その意味では、本来ワークショップデザインとはコミュニティ設計なのです。

オンラインでこれを行うためには、ZOOMで断続的に接続しながら、slackやFacebookグループといった常時接続できるコミュニティベースをつくっておく必要があります。

このコミュニティベースでも、ファシリテーターは積極的に場に介入し、学習を触発したり葛藤に寄り添ったりすることになるはずです。

しかし、ワークショップごとにslackを立ち上げるのも大変ですし、Facebookグループなどで個人を特定されたくない方もいるでしょう。オンラインで交流するためのベースをどこで作るのかが課題となっています。

このあたり、オンラインサロンの運営ノウハウと組み合わせると何か見えてきそうです。いい方法をご存知の方がいらっしゃいましたら、ぜひぜひ教えてください。

新しい「集いの場」の設計に向けて

というわけで、現時点でのオンラインワークショップのデザインモデルの検討でした!ノウハウ持ってる方、ぜひ共有してください。

ウィルスの感染だけでなく、経済活動の変動による失業者の増加、メンタルへのダメージなど、これからさまざまな困難が予測されます。そうした大きな社会課題に即座に対応できるすべを、ぼくは持っていない(持っている人はすぐやってほしい!)です。

でも、オンラインでのコミュニケーションを現実の劣化版にせず、オンラインだからこそできる人間の共創力の可能性を信じて場をつくることで、アフターコロナの社会をよくできるはずです。この際、働き方も暮らし方も良い方向に変わってほしいから、新しい場作りの方法を共創していきたい!

オンラインワークショップとは何か?どのように設計し、運営すればいいのか?については、こちらのnoteにまとめています。

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臼井 隆志|Art Educator
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