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  今日は、21世紀の働き方と組織について考えたいと思います。
 
 ドラッカーは『ポスト資本主義社会』や『明日を支配するもの』などの著書を通じてこのテーマを一貫して論じています。
 この大事なメッセージは、20世紀には、組織こそが、社会を発展させる原動力なったことです。日本のような「先進国経済」は、この組織と働き方のイノベーションにより生まれたのです。
 そして、もっと大事なメッセージが、この20世紀の組織や働き方は、21世紀には有効ではなくなり、全く別のものに変わることです。
 ドラッカーほど、未来を的確に予測した人はこれまでいません。特に、この組織についての予言は、真剣に向き合うべきことと思います。
 
 21世紀の組織について考えるには、前提となる20世紀の組織をまず整理することが必要です。それを乗り越えるのが、21世紀の組織になるからです。
 実は、20世紀の組織(日本でいえば昭和の時代の組織)には下記の特徴と課題があります。

 第1の特徴は、階層的に仕事の分担を明確にしてきたことです。20世紀の組織では、仕事を階層に沿って分割し、それぞれの分担を明確にしてきました。
 一見、分担が明確なのは自分の仕事が明確になり、それを深めるのに良さそうです。
 しかし、これは一方で、従業員の視野を狭くしてしまいます。今は、状況が変化しやすく、担当分野をはみ出すような複雑な問題が日々生じます。このような状況では、狭い範囲しかみていない社員には何もできません。このために、現場で本当の問題に向き合っている社員には無力感が募りがちです。これが第1の課題です。
 
 第2の特徴は、業務を標準化し、これを横展開して効率化することです。これはフレデリック・テーラーが約100年前に始めた「科学的管理法」や「インダストリアルエンジニアリング」にルーツをもち、今も強く影響を与えています。
 一旦うまくいったことを標準化して、横展開するのは、よいことのように見えます。
 しかし、現実の状況は、多様で変化しています。人が頭で考えることを越えます。このような多様で変化する中では、一律な標準化されたやり方は、むしろ無駄が多くなり、効率を下げる場合の方が多くなるのです。変化や状況の違いに適応できないというマイナスが目立ってくるのです。これが第2の課題です。
 
 第3に、組織を一律なルールと手続きにより統制することです。ルールや手続きをつくって統制するのは、会社が社会的な責任を果たすために、ある程度は必要です。
 しかし、上記の業務の標準化と同じように、人が過去をみて頭で考えたルールは、かならず状況に合わなくなります。そして、実態にあわないルールや手続きが効率とモチベーションを下げ、組織の機動力を下げる重荷になっていくのです。これが第3の課題です。

 第4に、上司が予算権限と人事権で部下を動かすことです。組織は、変化と不確実性という荒波を進みます。このような荒波を進む船(組織、企業)には、誰かが物事を決定する必要があります。これが組織のリーダーの大事な仕事です。
 しかし、リーダーだけがいくら使命感をもって行動しても、それだけではうまくいきません。社員一人一人に使命感や行動が必要です。
 状況の変化する状況の中で、現実に向き合って仕事をするのは、現場の社員だからです。20世紀型のやり方だけでは、社員の内発的動機は高まらず、変化を創造的に活かせません。
 
 21世紀の組織に求められるのは、20世紀組織の上に、上記4つの課題を乗り越える工夫を乗せることです。
 どうやったらそれが可能になるか。それを論じるには、それだけで1冊の本になります(拙著『予測不能の時代』にもいろいろ書きました)。
 実は、このコラムでも記載してきた、組織を横に、そして三角形でつなぐことも、その大事なポイントです。
 
 まずすべきことは、上記の20世紀組織のやり方を、正しいことであり、無条件にいいことと思っている人を減らすことです。
 そのような考え方は、現実の多様性や変化を無視する「甘い考え」です。皆さんが、もしそのように考えていたら、そろそろ卒業すべきです。
 大事なのは、従来の組織の運営には、上記の課題が起きやすいのだ、ということをできるだけ多くの人が認識することす。
 
 課題をしっかり認識することは、対策の第一歩です。実は、これらの課題に気づいていれば、それぞれの立場でできることがあります。大きな外科手術のようなことをせずにも、それぞれができることがあるのです。
 そこから、21世紀の組織が始まると考えます。21世紀の組織と働き方を皆さんの周りから一歩ずつ作れればと考えます。
 
 矢野和男



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