見出し画像

何をこの世に残していくか

友人のフレーザー・マッキムからWhatsappで新年の挨拶がきました。この上の画像を添えて。彼はアイルランド人で、ダブリンとイタリアのモデナの2つの事務所を行ったり来たりしているデザイナーです。彼が撮ったアイルランドの風景を見て、「そうだ、今年のブログには彼の写真をいろいろと使ってみよう」と思い、早速、彼に使用許可を得ました。

というわけで、彼の話を本年一発目にちょいとだらだらと書いておきましょう。

フレーザーとの付き合いは20数年になります。アイルランドの大学でインダストリアルデザインの学科を卒業後、ロンドンのRCAでインターフェースデザインを修め、大手デザインファームであるペンタグラムやミラノのカステッリで仕事をして独立しました。

ぼくは独立後の彼に知り合い、いくつもののデザインプロジェクトを一緒にやってきたのですが、1990年代後半にぼくが感心した彼の2つの言葉があります。

1つ目は「これからMBAをとろうかと考えている」。これを聞いた時、デザインとビジネスの関係を本気に考える人間が必要、と彼自身が自覚したと思いました。個人のタレントでデザインの仕事をする時代は終わりに近いと痛感したのでしょうね。結局、彼はMBAをとりませんでしたが、状況認識に秀でていました。このあたりのテーマが世の中で中心的になったのは、今世紀に入ってからで、しかも今はビジネス系の人がデザインを勉強しなくちゃあ、と考える時代です。

2つ目は「自分の名前が有名になることに興味はない。それよりも、自分のこうあって欲しいとの考え方が、多くの人の間に知らぬまに広まることがぼくの関心事だ」 ぼくも新しいコンセプトを生み出す、あるいはその現場に立つことを自分の一番優先する仕事と任じているので、彼の言葉には大きく頷きました。

例えば、彼はある日本の大手メーカーのスーパーコンピュータからパーソナルコンピュータに共通して適用するデザイン言語を開発したのですが、そういう仕事が好きだったのです。

世の中が良い方向に向かうに、どう関与していくかいうことに彼なりに考えていたわけですが、ぼくが彼に限らない欧州人と長く付き合ってきて実感するのは、この「ある考え方」をどう広めるーしかも長い資産とするーかについて考えている時間が多い、ということです。コミュニケーションというカテゴリーだけに留めるテーマではない、と思っている感が強いと言えばいいのでしょうか。

それが具体的にどういうことかと言えば、フレーザーの事例からは離れますが、「ロービー活動」と「アカデミアの世界」の2つを有効利用することにエネルギーを費やしている、ということになります。

現在、世界のルールを先導しているのはEUですから、ブリュッセルでロビー活動するのは非常に効果的だし、多種多様なバリアを超えやすいアカデミアを発表の場として使うのは、考え方が届く範囲と深さにおいて効率的なのですね。しかも、いわゆる商業広告宣伝費と比べるとコストも安いことが多いわけです。

そして何よりも、その考え方が世の中に長い期間に渡り生き残る確率があがるでしょう。

こういうことを、フレーザーに久しぶりに会って話しこみたいなと思っています。

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

16

安西洋之(ビジネスプランナー)

モバイルクルーズ株式会社/De-Tales ltd. ミラノと東京を拠点に活動。分野はデザインや異文化理解。ローカリゼーションマップ主宰。最新著書は『デザインの次に来るもの』、監修にロベルト・ベルガンティ『突破するデザイン』。

COMEMO by NIKKEI

日経が推す各業界キーオピニオンリーダーたちの知見をシェアします。「書けば、つながる」をスローガンに、より多くのビジネスパーソンが発信し、つながり、ビジネスシーンを活性化する世界を創っていきたいと思います。 はじめての方へ→ https://bit.ly/2DZV0XM 【...
1つ のマガジンに含まれています
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。