マンガ講座ビジネスに商機はあるのか=ドイツ社会
11月初旬、ドイツ、フランクフルトの隣町オッフェンバッハのマンガ教室で日本人マンガ家による短期集中講座が開講されました。講師は南Q太さん。雑誌『モーニング』で将棋マンガ「ひらけ駒!」などを連載するなど経験豊富なマンガ家です。今回私は通訳として参加してきました。
講座の内容は、週末の2日間をかけてマンガ制作の理論と実践をコンパクトにプロのマンガ作家から学ぶことができるというものです。
今回は、ドイツにおけるマンガ講座をビジネスとしてとらえた場合にどの程度商機があるのかについて考えてみたいと思います。それが今回の「気づき」となります。
ドイツのマンガ事情とは?
まず、ざっくりとドイツにおけるマンガ事情を整理してみます。スタートは90年代です。セーラームーンやドラゴンボールが翻訳され、読者が生まれました。00年代には読者の中からマンガを描く人が現れ、ドイツで商業デビューする人が出てきました。そして、10年代、マンガを描くドイツ人たちはマンガを教えるようになりました。
マンガ講座の実施状況
マンガを教えるということは、そこにマンガを学びたいという需要がドイツにあるということです。
ドイツのアニメファン向けのイベントでは、マンガ制作に関するワークショップが必ずといっていいほど実施されています。また、市民大学(VHS)という成人教育プログラム実施する学校がドイツ全土の各自治体に存在します。カルチャースクールのようなものです。ドイツ各地のこのVHSでも常にどこかでマンガ講座が開講されています。
これらのマンガ講座と今回のマンガ講座との違いは、会場が常設かどうかです。常設のマンガ教室には、継続してマンガ制作を学ぶ「場所」があり、「生徒」がいます。
足りないのは魅力的な講座?
ドイツにおけるマンガ講座の内容を見ていて気になるのは、「キャラクターを描いてみよう」といった内容が多いことです。イベントなどで現地のクリエーターが販売しているものを見てもマンガ風のイラストが多く、マンガは主流ではありません。一方で、日本のマンガはストーリーがあるのが大きな特徴です。ストーリーを語るにはコマ割りなどマンガ独特の様々な表現技術が必要となります。
マンガを描きたいけれどイラストしか描けない。
こういった、悩みがあるのではないかということです。つまり、ネームの切り方やコマの割り方、各種パースの効果的な使い方、それらをどのように使用したら期待する演出効果が得られるのかといった課題です。今回のマンガ講座ではまさにその内容を扱っており、参加者の反応を見て改めてそう思いました。
言葉の壁を超えるコツとは?
日本にはマンガを描く人がたくさんいます。学んだ技術を教えたいという人も多いと思います。海外、例えばドイツで教えてみるというのはどうでしょう?そこで問題となるのがドイツ語という言葉の壁です。実際にどの程度のドイツ語力が必要なのでしょう。
マンガ講座の内容を理論と実践に分けた場合、理論については通訳が必要となります。ただ、実践パートに関しては、「描いて見せる」という教え方もあります。この場合は外国語能力もミニマムで対応できまるのではないでしょうか。
現地の「プラットフォーム」を活用してみては?
ドイツにはこのマンガ教室以外にも常設の教室がいくつかあります。そして生徒もいます。こういったマンガ教室を、「集客力」を備えた現地のプラットフォームとしてとらえた場合、我々日本人にも活用できる余地があるのではないでしょうか。
日本の高度なマンガ制作技術を有したマンガ家という人材を活用できる「場」がドイツにもあるのではないか。今回のマンガ講座に参加してみてそう思いました。
© sakaikataho
(マンガ講座の模様。写真:Christina Plaka)
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参考情報:
今回のマンガ講座の会場となったマンガ教室「i am mangaka!」は、ドイツ初のプロ女性マンガ家、クリスティーナ・プラカさんが設立した学校です。彼女については以前インタビュー記事を「ねとらぼ」で公開しています。よかったら読んでみてください。
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1801/19/news012.html