見出し画像

帯状疱疹を予防するワクチンがあることをご存じでしょうか?

 帯状疱疹は、水痘(みずぼうそう)と同じウイルス(水痘帯状疱疹ウイルス:Herpes zoster virus)で起こる皮膚の病気です。多くは体の片側の神経に沿って痛みを伴う皮疹(水疱)が多数集まって帯状にみえることからこのように言われます。皮膚症状に先行して痛みを自覚しますが、皮疹が出現すると刺すような痛みを伴い、経験のある方は耐え難いものであると思います。多くは皮疹が消退すると痛みも軽減しますが、神経の損傷によりその後も痛みが残存することがあり、「帯状疱疹後神経痛(Postherpetic neuralgia; PHN)」と呼ばれ最も頻度の高い合併症です。他にも頭部から顔面に症状がみられることもあり、眼の症状として角膜炎、結膜炎、ぶどう膜炎など、耳の症状として耳鳴り、難聴、めまいなどを起こすことがあります。帯状疱疹は免疫力の低下が原因で発症します。帯状疱疹にならないために必要なことは、日頃から体調管理を心がけ、免疫力が低下しないようにすることが大切ですが、50歳以上の方はワクチン接種をすることで予防することが可能です。

  日本における帯状疱疹に特化したワクチンは上記事のとおり、英グラクソ・スミスクライン社が発売している「シングリックス®」が使用できます。発売前までは小児の定期接種となっている水痘ワクチン(乾燥弱毒生水痘ワクチン「ビケン」)を使用していましたが、現在は2つの選択肢があるわけです。帯状疱疹は50歳代から発症率が上昇し、80歳までに約3人に1人が経験すると言われていますが、医療機関では最近患者さんが増加しているという話を聞くことが多いです。詳細な要因は不明確ですが、新型コロナによる生活環境の変化や精神的な負担が免疫機能の低下を促し、発症にかかわっているのではないかという説もあるようです。また海外では、新型コロナウイルスと帯状疱疹との関連性に言及したものや新型コロナワクチン接種後の帯状疱疹事例などの学術論文も散見されます。

Herpes zoster might be an indicator for latent COVID 19 infection(Dermatol Ther. 2020 Jul;33(4):e13666. doi: 10.1111/dth.13666. Epub 2020 Jun 11.)

Herpes zoster in COVID-19-positive patients. Int J Dermatol. 2020 Aug;59(8):1028-1029. doi: 10.1111/ijd.15001. Epub 2020 Jun 12.

Herpes zoster after COVID vaccination. Int J Infect Dis. 2021 Oct;111:169-171. doi: 10.1016/j.ijid.2021.08.048. Epub 2021 Aug 21.

 こういった情報や話題性なのか、私のところにも帯状疱疹ワクチンに関する相談が増加しています。「シングリックス®」はまだ高価なワクチンではありますが、50歳以上におけるPHNの発症減少率は100%(国際共同第Ⅲ相臨床試験:ZOSTER-006試験)ときわめて高い効果を示しています。

GSKは帯状疱疹の治療薬2種類とワクチン「シングリックス」を開発している。全世界で疾患啓発の取り組みを進めており、日本でも20年1月にワクチンを発売するとともに、プロジェクトチームを立ち上げた。プロジェクト責任者に就いたワクチン メディカル・開発部門の小川正之ディレクターは「ワクチンは健康な方も使えるものだが、存在を知らなければ疾患予防で医療機関に相談したり、接種したりする行動は起きない。まず疾患を正しく理解していただくことが大事と考えた」と話す。

 私もGSK担当者から「どのようにしたら幅広く周知できるか」などのご相談を受けてきましたが、やはり存在を知らなければ相談したり接種したりする行動は起きません。現在はCMや帯状疱疹専用サイトの影響により認知度も高まりつつあり、新型コロナワクチンとの関連性も取り上げられたことで当院での接種者も増加傾向です。

 50歳以上の方で帯状疱疹予防にご関心のある方は是非ご相談下さい。

#日経COMEMO #NIKKEI

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?