不況期こそ起業のチャンスか。北欧から学ぶ「救うのは企業でなく人」
こんにちは、電脳コラムニストの村上です。
2022年も終わりに差し掛かり、仕事納めに向けて慌ただしい師走を送っている方も多いのではないでしょうか。要人の暗殺や戦争があり、また急激な円安も進んで将来の見通しに暗雲が漂い始めたように思います。そもそも日本経済の停滞は長らく続いており、日経新聞の人気記事「安いニッポン」は書籍でもベストセラーになりました。
2023年は多くの専門家が本格的に景況感が悪化すると予想しています。特に米国のインフレと利上げの動向は注目を集めており、日本でも異次元緩和の政策が転換されるのではないかと言われています。仮に短期のマイナス金利政策を転換するとなれば、全体への影響はかなり大きなものになるでしょう。
一方でコロナ禍における企業への支援策として、様々な融資が行われました。実質無利子・無担保融資、いわゆるゼロゼロ融資が乱発されたことにより、ある種のモラルハザードが起こっている側面もあるようです。確かにこのつなぎ融資により一時的に生き残った企業があったとして、その間に抜本的な経営改革ができたのかどうか。それにより将来の返済の道筋がつくというものです。そうでなければ、時間が経てば経つほど傷口は深くなっていきます。
雇用の流動性が高い国々では、不景気になると自営業者が増加します。解雇された人々が生きていく方法を見つけなくてはならないため、多くの人が自営業に目を向けます。今回のコロナ禍の中で米国の約1700万人が自営業者であり、労働人口に対する割合としては2008年以降で最も高くなっています。
日本では「雇用を守る」ことの優先度が何より高いため、公的な支援も企業に対して向きます。そして企業は生き残ることを優先するため内部留保を多くし、人件費を含めたコスト削減により筋肉質な経営を志向します。よって、支援が直接労働者の賃金上昇には向きにくいという構造を生んでいるのが現在です。
雇用の流動性を議論するときに米国の事例が出されることが多いですが、こちらはある意味最も流動性の高い国なので、最も低い日本では参考にならないことが多いです。私はヨーロッパ各国を参考にして日本に合うモデルをつくりあげることが必要だと考えています。
世界一の携帯電話メーカーからわずか4年あまりで事業売却せざるをえない状況に転落した、フィンランドのノキア。日本でもガラケー時代に人気のあった機種ですので、使っていた方も多いのではないでしょうか(私もPHSから乗り換えた初めてのケータイが、IDO D315 でした。カバーが変えられるというのが新しかったですね)。事業売却時のノキアCEOの言葉は、とても身につまされるものがあります。
そのノキアが本社を構えていたオウル市。城下町として多くの税収や雇用を同社に依存していた政府や市がとった対策は、企業ではなく「人や技術を救う」ことでした。
特に、柔軟性と安定性を重視するやり方は、日本との相性がよいのではないかと思います。
50歳までに転職を経験した人は6割弱と言われており(リクルート調べ)、残りの4割の方はおそらく定年まで転職をしないでしょう。今後は変化していくと思いますが、キャリアチェンジや起業に伴うリスクを下げるような支援策は、企業の新陳代謝ひいては競争力を高める効果があると考えています。
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タイトル画像提供:SuperOhMo / PIXTA(ピクスタ)