テレワークは、オフィスワークによって蓄積された「資産の消費」によって成立している、かもしれない
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テレワークは、オフィスワークによって蓄積された「資産の消費」によって成立している、かもしれない

筆者が朝の時間帯に都心に向かおうとすると、立錐の余地ない電車での約1時間を余儀なくされます。カバンを持っていれば文庫本を読むこともままならず、勢いスマホからの音楽でせめてものリラックスタイム。すると音漏れしているからか、周りの人から睨まれたり。

横に女性が立っていたりしたら大変です。掴みたくもないつり革を持って、両手の所在を明らかにしないことには、あらぬ疑いをかけらないとも。

始業前の満員電車は、オフィス到着するまでに1日のエネルギーを相当量使ってしまいますし、飲んだ後の満員電車はまさに苦痛以外の何者でもありません。

自宅のスペースとか、ネット環境とかの条件・制約はありますが、働き手を通勤のストレスから解放してくれる、という一点をとっても、テレワークという選択肢があることは悪くありません。

しかしこれは、テレワークの方がオフィスワークよりも優れている、ということではないと思います。

ちょっと思考実験してみましょう。読者のあなたがこれから起業するとします。

どんな人を誘って、どんな業務で稼ぐか、ということも想像してみて下さい。

起業のカタチが頭の中で形成されたら、自問自答してみていただきたいのですが、その新しい会社の業務は、テレワークだけで成立するでしょうか?

おそらくなんとかなるでしょう。起業当初は規模も小さく、同僚も元々知った顔ばかりでしょうから。

では会社が成長軌道に乗ってきて、社員数が100名を超えるような状態になったらどうでしょうか?それが1000人なら?

人数が増えれば増えるほど、難しさが増してきそうな直感がしませんか?

これは人数が増えてくると手持ちのネットワークでの人材供給ができなくなり、知らない人を採用して仲間になってもらう、ということと関係しているのではないかと思います。組織の中で知り合いがマジョリティで、気心が知れており、仕事の回し方、作法などが共有されている状態であれば、新しい人が入ってきてもだんだん順応してくれるかもしれませんが、新しい人がマジョリティになってくると、それが立ち行かなくなってきそうです。

このように書くと、オンラインのみでも気心を通じ合わせることは可能だ、と思われるかもしれませんが、筆者は上記でハイライトした「だんだん「新しい人がマジョリティ」というところが曲者だと思います。

テレワークが一般的になって、誰かとオンラインで知り合い、仲良くなった経験は皆さんおありだと思います。この経験はオンラインのみでも何とかなる、という感覚に繋がるのではないかと感じられます。

一方そういう人とリアルで対面して、一気に距離が縮まった実感を持たれたことも皆さんおありなのではないでしょうか。リアルな立体の人間と、全てのジェスチャーやアクションを意志の発露として受け取りながら行うコミュニケーションは、情報量や関与の深さがスクリーン越しのそれとは違う、と私は思います。これが「だんだん」ではなく、加速度的に関係構築ができる礎になるとも。

「新しい人がマジョリティになる」ことについて。組織の中でそれまで知らなかった人と出会う、というケースには

(1)誰かの知り合いと知り合う

(2)文字通り、誰とも繋がっていない人と知り合う

という2パターンがあります。(1)のケースであれば、当人同士は知らない関係であっても真ん中に共通の知人がおり、互いに知っている知人の考え方や価値観をベースにして相互理解や感情的なつながりを作ることが出来ます。(2)だとそういうとっかかりがないため、関係構築は容易ではありません。

そして一般に組織を大きくするためには、(2)の人を採用することも必要です。

思考実験はここまでにしましょう。

こう考えると、テレワークがうまくいく背景や前提として、それまでオフィスワークで培ってきた前提があるのではないか、という感じがします。すなわち対面のコミュニケーションによって形成されたネットワーク・組織、その内包するカルチャーや規範が既に存在し、それをベースに我々はテレワーク環境を享受している、という訳です。

これは「テレワークはオフィスワークを通じて蓄積してきた資産を消費している」とも換言できるのではないかと私は思います。

その考え方に立つと、テレワークを今後も円滑に機能させるためには、なんらかの方法で資産の蓄積を継続しなければなりません。そしてそのためには、組織の代表たる社長が求心力となり、人と人の繋がりを生産し、カルチャー・規範の火が消えないように伝承・増幅しなければならないと思います。

今回のテーマに関する私の考えは、そのために社長は出社すべきである、というものです。テレワークがこれだけ普及しても、リアルなコミュニケーションのハブとして最も有力なのは依然オフィスであり、そうであれば社長はそこにいて、組織資産を創り出すことに勤しむのが、理にかなっていると思うからです。

読者の皆さんは、どうお考えですか?

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9つの事業会社でマーケティングやってきました。うち、西友、ドミノ・ピザなど4社でCMO。現在は株式会社Preferred Networksの執行役員CMO、イトーヨーカ堂・セルム顧問、日経XTrendアドバイザリーボード、厚生労働省年金局広報検討委員、内閣政府広報アドバイザー等。