東京五輪を通して改めて考える「多様性と調和」とは
昨日。17日間に渡るオリンピックが閉幕しました。今回の東京五輪は、参加する選手の女性の割合が48.8%と五輪史上最も高かったそうです。男女混合や団体戦が増えたことも要因だそうですが、女性だけではなくトランスジェンダーの選手や、水泳男子飛び込みペアの金メダリスト、トム・デイリー選手のコメントも多く取り上げられ、話題になりました。今大会でLGBTQ(性的少数者)であることを明らかにした選手は、180人以上参加したとされているそうです。
上記のBBCの記事では、彼がどんな日々を歩んで金メダルを獲得するまでに至ったのかが書かれています。(ちなみに編み物王子としても有名になりましたね)
オリンピック開催期間中の17日間、テレビやインターネットで様々な選手の活躍を、そしてメダル獲得の瞬間を観る機会がありました。今大会で初めて五輪種目となったスケートボードは、「ストリート」で男女ともに金メダル、「パーク」でも女子が金・銀メダルを獲得し、スケートボードを始める人も増えたとか。今回約35億円かけて作られたこの有明アーバンスポーツパークは大型商業施設に再開発、とされていましたが今後入札がどうなるか注目されています。
オリンピックはとてもわかりやすく、そして多方面に影響をもたらしますが、今日もう一つ興味深い”影響”に関する記事が出ていました。ガールスカウト日本連盟が発表した調査に関する記事です。
女子高校生の48%が「男子は女子よりも理数系の能力が高い」と考えていることが分かった。だが、国際学力調査の結果によると、日本の女子の理数系の得点は他国の男子よりも高い。同連盟は「『女の子はこういうものだ』とのメッセージを日々無意識に受け取り、思考が制限されている」と指摘する。
これはまさにアンコンシャスバイアス(無意識の偏見・思い込み)と呼ばれるもので、周りの人間やメディアも大きく影響します。”影響”という観点では反対に、記事にある通りプラスに転じさせることも。
「テレビでもっと多くの女子スポーツが放映されるとスポーツをする女の子が増える」は78%だった。多様な場面で活躍する女性の姿を示すことが意識の変革につながるだろう。
ところで、東京五輪を観ながら思い出したことがあります。五輪の開始前に森美術館で観た「アナザーエナジー展」です。”70歳以上の世界各地の女性アーティスト16人”による展示会で、最高齢は106歳。現代アートは苦手、と思いつつ企画に惹かれて観に行ったのですが、50年以上様々な困難や差別に向き合い活動を続けていくアーティストたちの作品を通して、自分のアンコンシャスバイアスに気付かされました。
「多様性と調和」で大事なことは、違いを認めあい、受け入れること。16人のアーティストの作品を観終わって、その力強さや繊細さ、積み重ねてきた日々を感じ、そして彼女たちの”アナザーエナジー”とはレジリエンスだと気付かされました。
それは他者と連帯・共感できる力であり、困難な状況に柔軟に対応して回復する力(レジリエンス)といったものだ。
今回の東京五輪で新しく競技に加わったエクストリームスポーツ。元々”国”という意識が薄い中で、オリンピックでは国を背負い、順位を競うことでカルチャーが変わってしまうのではと危惧されていたようです。
国も背負わない、順位にも捕らわれない。それが、スケボーやサーフィン、BMXフリースタイルなどエクストリームスポーツのカルチャー。国を背負って順位を争う五輪の仲間入りすることで、本質が失われることを危惧する声は今もある。国際サーフィン連盟のアギーレ会長は笑いながら言った。「我々のカルチャーは変わらない。五輪が変わるんだ」。
ちなみに「チベット仏教の高僧が瞑想しているときの脳波と、エクストリームスポーツに取り組んでいるプレイヤーの脳波が同じもの」という説があるそうですが、エクストリームスポーツと"レジリエンス”には大きな共通点がありそうです。
「多様性と調和」を理念に掲げた東京五輪は、スポーツという人種や国籍に囚われない統一されたルールに則って競うアスリートたちを通して、”多様性”について様々な人にとって考えるきっかけになったのではないでしょうか。これからパラリンピックが始まるので、まだ考えるいい機会は続きますね。