さらばテイラー:標準化と横展開の罪
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さらばテイラー:標準化と横展開の罪

 1月3日の日経1面に「「心の資本」は十分ですか さらばテイラーシステム」という記事が出ました。
 テイラーシステムというのは、業務を標準化して、横展開することによって、効率化する手法です。これは20世紀の製造業を中心に、大変うまくいきました。そして、その恩恵を大いに受けたのが日本でした。このため、日本の多くの組織で、このテイラー方式、すなわち「標準化と横展開」は、生産性を上げるための普遍的な方法と考えられるようになりました。
 実は、これがその後の日本の停滞を招く大きな原因になったのです。このテイラーシステムの問題を認識している人はまだまだ少ないのが実情です。
 私は、これを多くの人に認識してもらいたいと思い本論を書いています。

 業務を標準化し、決まった手続きを繰り返すことで仕事を効率よく行うのは、一見良いことのように思えます。ところが、これには、大きな問題があります。
 最大の問題は、変化に弱くなることです。
 もし仮に、どんな状況にも普遍的に最適な手続きが標準化できるならば問題はありません。
 しかし、人間にそんな神のようなことはできるでしょうか。実際にはできません。
 私の経験では、それどころが、手続きをつくった時点ですら、状況によってはうまくいくものの、場合によってマイナス面もあるのが普通なのです。それでも、そのような標準化を行った方が、メリットの方が大きいと判断しそのような手続きを設定するのです。この意味で、最初の時点から、マイナスの影響を受ける場合もあるのです。

 ところが、社会や事業の状況はどんどん変わります。これにより、上記のマイナスのケースがどんどん増えます。
 それだけではありません。変化に合わせ、手段は柔軟に変えることが求められます。しかし、一旦定められた手続きというルールが、顧客や市場の状況に柔軟に合わせるというビジネスの基本を阻むのです。これは企業によって致命的な硬直状態をもたらすのです。
 状況変化にあわせ機動的に道を見つけることは、ビジネスで価値を生むための基本中の基本です。そして、それは決して楽ではないです。この楽でないことに熱意をもって挑戦するのは人であり、その前向きさです。この前向きな人が、熱意をもって変化する状況に行動を起こそうとする時、標準化されたルールや手続きはそれを阻むのです。

 そもそも、うまくいくパターンを見出せたのは、熱意ある人による前向きな挑戦の結果です。それを手続きとして標準化したわけです。
 その背後には、熱意のある人が見出したよい方法(ベストプラクティス)を使って「熱意のない人でも仕事がうまくまわるようにしよう」という思惑があります。
 実は、ここで我々は致命的な間違いを犯しているのです。そもそも熱意のない人は、現代の常に変化する状況ではいい仕事ができません。むしろ周りにマイナスの影響すら与えます。だから、「熱意のない人でも仕事がうまくまわるようにしよう」という考え方自体がおかしいのです。
 我々が肝に銘じる必要のあるのはここです。

 どんな手続きもマニュアルも、熱意を置き換えることはできないのです。
 むしろ素直に、あらゆる人の熱意を高めることに注力すればよいのです。熱意のある人は、変化する状況にあわせ、状況にあった新たな手段を見出していくからです。

 標準化された手続きのマイナス面をしっかり認識し、手続きやルールは最小限にして、変化する状況にあった新たな手段を見出す熱意ある人づくりに注力しましょう。
 この熱意のある前向きな状態こそが、実は幸福な状態です。だから幸せな人と組織を日本に増やすことこそが、日本の最重要課題なのです。
 それが、日本の復活の基本条件です。
 



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矢野和男(ハピネスプラネットCEO、日立製作所フェロー)
AIと人間社会行動や幸せについて研究しています。これがAIと合わさって大きなな変化をもたらすと考えています。著書『データの見えざる手:ウエアラブルセンサが明かす人間・組織・社会の法則』http://amzn.to/1mgfZHF http://bit.ly/Unmhs6