シェアサイクルやシェアバイクの普及で、都市は低速化する
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シェアサイクルやシェアバイクの普及で、都市は低速化する

佐々木俊尚

あのセグウェイに姿形が似たモビリティ「c+walk(シーウォーク)」をトヨタが発売し、話題になっています。

 この製品が興味深いのは、最高時速が2~10キロと遅く、高齢化が進む中でシニア労働者の体力の負荷をいかに減らすかというところまで視野に入れられていることです。つまり自動車やバイクの代替ではなく、「歩く」の代替ということ。地方でよく見るシニアカーの進化形と言えるかもしれません。

低・中速モビリティが一気に普及してきている

 ここに来て、東京ではシェアサイクルやシェアバイクなど、公共サービスとしての低速モビリティが急速に普及してきています。都心で急速に普及しているLuup(ループ)は電動アシスト自転車だけでなく電動キックボードも投入し、わたしの住んでいる渋谷区でもこれに乗ってすいすい移動してる人をよく見かけるようになりました。原付ですが最高時速15kmで、自転車なみのスピード。原付にもかかわらず特例でヘルメット着用が任意になっており、気楽に乗れるのも人気の理由のようです。

 この9月からは、Shaero(シェアロ)という電動バイクのシェアサービスも都内で始まりました。最高時速30kmで、こちらはヘルメットが必要です。

 Shaeroをわたしもさっそく試乗してきましたが、システムがかなりよくできているという印象でした。シェアサイクルのポートがマンション敷地や歩道脇などに無造作に駐輪してあるのと異なり、Shaeroは屋根のついたがっしりとしたステーションに、折り畳み式の電動バイクを収容するようになっています。ステーションには電源ケーブルがあり、バイクに接続してから返却するしくみ。つねに満充電に近い状態になっているので、安心して借りることができるというわけです。

 またヘルメットもステーションに用意されており、使用後のものはスタッフが巡回して回収し、消毒しているとか。

「中距離」に向いた電動バイク

 試乗してみて感じたのは、当たり前のことですが、やはりバイクは自転車よりも楽だなあということ。電動なのでエンジン音もなく、非常にスムーズに走ります。特異な形状をしているので最初はちょっと慣れが必要ですが、慣れてしまえばかなり長距離でも行けそうです。

 運営しているシェアード・モビリティ・ネットワークスの代表畑翼さんは、バイクシェアは自転車とクルマの間を埋める可能性を持っていると言います。カーシェアは地方でも普及してきていますが、借りたのとは別の場所での乗り捨てが難しく、街中をちょこちょこと移動するのには向いていません。

 サイクルシェアはそういう短い用途にはぴったりですが、東京で覇を争っているドコモ・バイクシェアとLuupは前者がママチャリ風、後者は車輪の口径が小さい自転車で、長く乗っているとけっこう疲れます。

 そこで長距離=カーシェア、短距離=シェアサイクルのあいだをとって、中距離=シェアバイクという棲み分けの可能性が浮上してきているというのがShaeroの戦略のようです。

 またUber EATSなどの配達の人へのニーズもあるようです。自転車よりも速度が速く、遠くまで行けるので、一日で稼ぐことのできる金額がバイクだと一気に跳ね上がる。ステーションの数が十分に増えてくることが前提ですが、月額2万円の乗り放題プランも用意されており、こちらの市場可能性もありそうです。

このままだと東京の道路はさらに混乱が…

 「シェア」を中心とした公共交通としてのモビリティが普及すると、都市の光景はどう変わるのでしょうか。サイクルシェアもバイクシェアも低中速であり、また先ほど紹介したトヨタのモビリティも超低速です。いずれはトヨタのc+walkも規制緩和によって公道を走ることができるようになり、そうすると車道と歩道をどう組み合わせるのかという道路デザインの再構築が必要になってくるのではないでしょうか。

 東京の歩道はよく整備されており、車道とはきちんと分けられていますが、近年増えてきている自転車レーンは有効活用されているとは言えません。相変わらず歩道を猛烈な速度で突っ走ってる電動アシスト自転車もよく見かけます。ここに電動キックボードや電動バイク、c+walkなどがさらに加わると、現状のままではさらに混乱し、事故の危険性も高まりそうです。

パリでは最高時速が30kmに

 フランスの首都パリでは、市内全域で自動車の制限速度が時速30kmになりました。従来から市内の6割の面積で設定されていたこの制限速度が、市内全域にまで拡大されたそうです。ロイターの記事では、「大気汚染や騒音問題を軽減し、重大事故を減らすことを目指しつつ、ウォーキングやサイクリング、公共交通機関の利用を促したい」というパリ市役所の狙いが説明されています。

 低・中速モビリティを普及させるのであれば、パリのようにエリア全体を低速化させていく必要はあるでしょう。高速で移動したいクルマは首都高速に上がってもらい、一般の公道では時速30km程度に制限時速を落としていく方向は、完全自動運転実用化とともにじゅうぶんに実現可能な未来なのではないかとわたしは考えています。

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佐々木俊尚
作家・ジャーナリスト。近代の終焉と情報通信テクノロジーの進化が社会をどう変容させるのかをライフワークとしています。