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転勤への対応がジョブ型雇用のゆくえを決める

こんにちは、電脳コラムニストの村上です。

※ 本記事は日経朝刊投稿募集企画「#転勤は本当に必要ですか?」への寄稿です。

みなさんは「転勤」と聞いて何を思い浮かべるでしょうか?急な引っ越し、子供の転校、はたまた単身赴任と大変なイメージがつきまといます。この1年で広がった在宅勤務の延長線として、リモート勤務も広がってきているようです。

転居をせず、リモート勤務でほかの地域の仕事をこなす「リモート転勤」が広がりつつある。女性はこれまで結婚や子育てなどの理由から転勤をためらう例が多かった。転居せずに幅広い経験を積むことができれば、キャリア形成の可能性がぐんと広がりそうだ。

会社が転勤を求める理由として、幅広く社内の業務経験を積むことが将来役に立つからという人材開発の側面があります。長期雇用を前提とした場合、本社・支社両方の経験をすることで会社の業務理解を深め、また社内人脈を広げる意図もあります。

転勤を受ける側としても最終的には「本社に栄転」という期待があるからこそ、目先の不便さには目をつぶって我慢しようと考えるのかもしれません。

昨年来からジョブ型雇用ブームとも言える現象が見られています。しかし、「ジョブ型=解雇自由や成果主義」と誤解されているようにも感じます。また、ジョブ・ディスクリプション(職務記述書)を元にした仕事内容の言語化をジョブ型と見る向きも多いようですが、労務行政研究所の「人事労務諸制度の実施状況の調査」によると「目標管理制度」の導入率は約8割に達しているとのことです。つまり、仕事内容を言語化して上司から達成状況のフィードバックを得ることも普及していると言えます。

ジョブ型の概念を提示した労働政策研究・研修機構所長、濱口桂一郎氏の意図は、ジョブ型=就職、メンバーシップ型=就社という対比である。すなわち、日本では、特に大企業で職を得るというのは、特定の職務につくというよりも、特定の企業のメンバーになることに大きな意味を持つということだ。

2つの仕組みの本質的な差異は、採用・異動にある。日本の従来型の無限定正社員システムの特徴を単純化すると、職務内容が限定されていない採用、人事部主導の中央集権的な異動、義務的な受け入れを求められる異動・転勤、職務遂行能力にリンクした、結果的に年齢・勤続年数に依存する賃金制度、とまとめることができる。

筆者は現在米国外資系のジョブ型雇用の元で働いています。社内での異動はもちろんありますし、国をまたいだ異動も多く見られます。しかし、会社の命令で辞令が下されるわけではなく、自らが応募して合格すればその職につけるというものです。また、異動に引っ越し等が必要であればその費用は会社が負担します。

つまり、ジョブ型は採用・異動も要は公募であると言えるでしょう。定期的に社員には公募している職務(ポジション)・地域の一覧が共有されています。例えば日本にはないポジションがシンガポールで募集されたならば、そこに挑戦してみようと考える社員もいます。またそのポジションは外部からも応募がありますので、さながら社内転職といった趣です。もちろんそれらのポジションには賃金がリンクされていますので、個々人が自身のキャリア形成を考え抜き、応募するかどうかを決めています。

このように、

・メンバーシップ型=人に職務を当てはめる。適材適所。
・ジョブ型=職務に人を当てはめる。適所適材。

というコペルニクス的な転換があるのです。

転勤がどうなるかを考える際に、この発想の転換が今後どうなるかを考えることが必要不可欠です。私個人としては「手を上げて挑戦する」ほうがやる気も出ますし、結果としてパフォーマンスがあげられると思っています。個人のキャリアは個人のものであり、会社がそれを手助けする。それこそが、今後の日本に必要な考え方なのではないでしょうか。

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タイトル画像提供:Kostiantyn Postumitenko / PIXTA(ピクスタ)

#日経COMEMO #転勤は本当に必要か

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