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EUが財政を弛緩させてはいけない!

11月の経済・財務相理事会ECOFIN会合で提示されたEUの財政ルールについての着地点と各国財務相の姿勢が楽観的に見えることを踏まえると、改革に関する合意は成立することにはなるであろう。しかし、法案が成立するとしても、懸念が残る。


妥協点を見出さなければならない点は、例えば次のようなものである。第一に除外される支出項目をどうするか。国防支出や返済が必要なEUの支援金によって賄われる事業の基準を一段と緩和することが必要になる項目である。第二に、財政の監視体制をどうするか。加盟国間の平等な扱いを確保し、財政ルールの順守状況を監視するほか、財政監視プロセスにおいて欧州委員会に行き過ぎた裁量を与えることを巡る懸念を和らげるため、独立機関が財政の監視を完遂することも考えられる。第三に、債務調整のセーフガードをどうするか、である。債務調整機関は4年または7年で、この間に自動債務削減ルールを盛り込むことになるが、特定の年間最低調整額を義務付けるのではなく、調整額の年毎の違いを認める。

11月9日にクノット・オランダ中銀総裁ら一部のECB理事会メンバーは、財政政策がインフレとの闘いにおいて金融政策の足を引っ張りかねないとの懸念から、信頼できる財政財政枠組みの重要性を強調している。クノット氏は、さらに「健全な財政は、通貨同盟の安定にとってのもう一つの必須条件である」と述べている。

最近、イタリアの格付けが現行維持でコンファームされ、格下げ懸念がなくなったばかりだが、EUの財政ルールとそれに基づく財政規律こそが、欧州の信用力の礎であることを忘れてはならない。そこを簡単に弛緩させてしまうようなことがあれば、いずれはEU諸国の格下げがまた始まることになるであろう。


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