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ミニマリストが変える会社経営のスタイルと「成功」の価値観

物への執着から離れて、質素ながらも快適な生き方を目指す「ミニマリスト」の価値観は、企業経営にも波及しはじめている。不用な物を溜め込んでいるのは一般家庭だけでなく、会社のオフィスにも共通している。

オフィスにかかるコストは「家賃単価×広さ」で算定できるが、無駄を減らしてスペースを最適化できれば、社員数が増えて広いオフィスへ引っ越す度に、月々の固定費が重くなっていく、負のスパイラルから逃れることができる。

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そのため、オフィススペースの最適化を支援、コンサルティングする専門業者への相談も増えている。職場の無駄なスペースを省くには、多様な切り口や方法が考えられるため、新サービスのヒントもたくさん見つけられる。

最も手掛けやすいのは、オフィスに保管されている大量の書類を減らすことで、紙の文書を電子ファイル化することが推奨されている。米国では、オフィス内に溜まっている紙の書類を、高速スキャナーと OCR(文字認識)ソフトでデジタル変換、全文検索が可能な電子ファイルとしてクラウドサーバーで保管した上で、紙文書を廃棄するビジネスが地域単位で成り立っている。

主なクライアントになっているのは、法律事務所、保険会社、医療機関、自動車ディーラーなど、業務の書類や顧客情報などを、長年にわたり紙文書で蓄積してきた地域の法人である。ビジネス文書の電子化は、企業の機密情報に触れる業務となるため、スキャニングの技術だけではなく、業者の信用力や信頼関係が重視されて、一度取引がスタートすると、固定クライアントとして定着する特性がある。

オフィス内の無駄を省いていくことは「Lean Office(リーンオフィス)」と呼ばれている。Leanには、“無駄を排除する”の意味があり、デッドスペースを極力排除していくことは、業務フローや人員配置の見直しにも繋がり、家賃の以外の経費も削減して、本業の利益率を高める効果も期待できる。

たとえば、会議室を無くしてしまうこともリーンオフィスの具体策になる。会議が多い会社は、組織が硬直化していて、社内のコミュニケーションが、フラットかつ柔軟に行われていないケースが多い。物理的な会議室が無くなれば、社長→役員→管理職→一般社員の垣根が無くなり、社内で起きている問題や、重要事項の意志決定も社員全員で共有することができる。会議室に代わる、コミュニケーション用のツールは、最近では豊富に見つけられる。

【ミニマリスト起業家が変える「成功」の価値観】

 ミニマリズムの本質は、「無駄な物を持たないこと」だけではなく、会社の地位や人間関係、お金が無くなる恐怖心からも開放されることであり、それを実現させるには、様々な縛りを抱えながら働くサラリーマンよりも、起業して自分の好きなビジネスを追求することのほうが適している。

Forbesに掲載された「The Minimalist's Guide To Owning A Business」という記事によれば、ミニマリストに適した起業のスタイは、店舗を持たず、場所に縛られないオンラインビジネスだとしている。従来の経営者は「成功=お金」という捉え方をするが、ミニマリストの起業家は、「成功=自由を獲得すること」という価値観を抱いている。ミニマリストが目指すワークスタイルは、現代のビジネスパーソンが“理想”と考えている働き方に近い。

《ミニマリストが理想とする起業スタイル》

 ○どの場所からでも仕事ができる。
 ○実店舗が無くてもビジネスができる。
 ○特別な設備投資を必要としない。
 ○商品在庫を抱えたり出荷作業をする必要がない。
 ○無形の知識やコンテンツを商品として扱う。
 ○従業員やスタッフはリモートで雇う。

ビジネスのスタイルを決定付ける要因として大きいのは、「オフィスをどこに持つのか?」という問題である。広いオフィスビルを借りれば、自ずと従業員を増やしていく事業スタイルになり、人件費も嵩んでいく。毎月の固定費が重くなれば、「自分のやりたい仕事」よりも、「売上になる仕事」を優先しなくてはならず、経営者のストレスも次第に重くなっていく。これは「成功=自由」という価値観とは相反するものだ。

そこでミニマリスト起業家は、自宅をオフィスとしていることが多い。これは、家賃を節約する理由だけなく、ホームオフィスの形態であれば、従来の常識にとらわれずに、柔軟なビジネスのスタイルを築けることが大きい。

ホームオフィスを起点としたビジネスでは、立ち上げた事業が成長して人を雇うにしても、リモートで勤務してもらうことが基本となるため、経営者と従業員の関係性を変えることができる。

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