luckin coffeeが描いた物語と会計不正を中国ネット民たちはどう見ているのか
luckin coffeeはご存知ですか。「中国のスタバ」を目指していたO2Oカフェで会社設立からアメリカでのIPO上場まで世界最速だと言われてました。
いつ上場したのかと調べたら2019年の4月に上場申請したようです。
そして日本でもたくさん報道されたようですが、つい先日「22億元の売上捏造」がバレて85%以上の時価総額がなくなりました。
実は、この転落劇を「やっぱり...」と思う中国人が多いです。というのも、最初から多くの中国人はluckinが描いていた物語を信じてなかったからです。
■luckin coffeeに投資した人たち
luckin coffeeは世界中でもてはやされました。日本でも「中国ウェイ!」な人たちやメディアがこぞって取り上げましたね。
luckinがアメリカの投資者にどんな物語を描いたというと
・中国は世界最大の消費市場
・でもコーヒーの市場はまだ小さい
・欧米や日本や韓国のコーヒー消費量を考えると、机上の計算上はluckin10個分の消費があってもおかしくない
・さらにコーヒーには中毒性がある。癖になるから、飲んでまた飲んでを繰り返すことになるでしょう
・luckin「自分たちの店が広がることによって中国のコーヒー市場は育成され、中国をコーヒー消費大国にする」と主張
・投資者は爆益を期待してお金投入!
ロジック的には正しそうです。
でもこのロジックを当てはめた例をネット民も書き込んでいて「中国が思うにアメリカ市場で最も成長可能性のある分野はお茶。アメリカをお茶の消費大国に育成しましょう、きっと成長しますって話になりませんか」と。
これは当然そうはならなそう、すぐに間違いに気づけそうです。
luckin coffeeは中国人が誰も信じない物語を描きました。事実、luckinの中国国内での資金調達もほとんど設立者と設立者の関係者や関連投資会社です。そしてこのストーリーのままナスダックでの上場を実現したのでした。
■アメリカの金で飲めるコーヒー
こんな経緯から、上場したばかりの時は僕も周りの中国人も、みんな不思議でしょうがないって感じでした。もちろん消費者目線から、安いからいいじゃない?という人も多かったです。(味は個人差があるのでノーコメントですが評判は微妙でした。。)
luckinは実店舗での注文よりも、スマホでの注文が主流です。デリバリもできるし、自分で取りに行くことも可能。
そしてとにかく安い。スタバに負けないコーヒー豆でコンビニコーヒーの値段、また新規ユーザーや友達にリンクをシェアできて、買ってもらうたびに無料券や割引券がもらえます。
どんだけ安いかと言いますと、頑張ればこのくらいいけます↓(友達のキャプチャですがシェアしますね)
これだけ頼んでもクーポンを使ってたったの6元!
このことから、中国の一部の人達からは「アメリカのお金でタダ飲みできるコーヒー」と言われてました。(ナスダック上場、そして投資されたお金でクーポン配ってますので)
↑これはマーケティング費用と損失を図にしたもの。白いのがマーケティング費用、赤いのが損失。
マーケティングへのコストが非常に高く、つい最近は1杯売るごとに1杯分損失出てました。それまでは1杯売ることで2杯の損が出てるという。。
認知とシェアを獲得するまでは徹底的にやりきるのは中国で競争に勝ち残るには必要なことかもしれません。でも流石に破綻してると思います。
そして、粉飾の件が報道された翌日、利用者が「もしかして倒産するのではないか」と心配で未使用の無料券やクーポン券を使いたいが故の注文が殺到。
「コーヒー屋でなくテクノロジー企業」と揶揄されていたluckinのアプリがダウンしたことも話題となりました。
■中国ネット民のLuckin会計不正への感想
報道でもあるように、Muddy Waters Researchが89ページの調査報告でluckinの捏造を指摘しました。
この調査には90人以上のフルタイム調査員と1000人以上のパートタイム調査員が動いたそうです。この件について中国では「こんなに人と時間を使って出した結論は、中国ではほとんど誰でも知ってることだよ」との意見が多く見られます。
描かれたストーリーは中国人には信じられなかったこと、そしてお金のバラマキによって獲得した売上ばかりで、ビジネスとして到底成立していないと知っていたからです。
振り返ると、luckin coffeeは2017年10月に一号店を出して、2019年5月17日にナスダックでの上場を実現、そして2019年末までに全国で4507個の直営店舗を持ち実質的に中国最大のコーヒーチェーン企業となり(ちなみにスタバは中国では約3300店舗)、2020年1月9日の時価総額が106.49億ドルになりました。
でも無理矢理な戦略には落とし穴がつきもの。今後この逆境を乗り越えて成長していけるのでしょうかね。
僕はこういう新しいビジネスにチャレンジしている企業のことは好意的にチェックしていきたいなとは思います(クーポンでタダ飲みした恩義も感じてますので)
また何か話題が出たら紹介したいと思います。
(参考資料)