公園3.0:地方の駅前をぜんぶ、みんなでつくる公園にすることは可能か?
まちづくりにおいて、公園は大きな可能性だと思います。渋谷にいたときは、笹塚・幡ヶ谷・初台を横断する緑道公園の整備に、地元区民のアイデアと実験を取り込むためのファシリテーションをしました。当時は、南池袋公園が話題になっていて、訪れると、カフェを中心に気持ち良い芝生の空間が広がり、公民連携の公園づくりの力を感じたものでした。今回の記事では、公園の民営化のその先の可能性を考えたいと思います。
民間のお金で公園を整備するパークPFI
次の記事では、福岡で「稼ぐ公園」づくりに成功していることを報じています。その目的は、「予算の制限から市が十分に活用できなかった公園の土地を、民間企業が代わって一体的に整備・運営する。飲食などの収益施設をつくり管理費をまかないつつ、公園を起点に人の流れを生み出す構想を描く」ということです。そのために、「飲食店など収益の上がる施設を設置・運営するとともに、園内の道や広場も整備してもらう民間事業者を公募する国のパークPFI(公募設置管理制度)の枠組み」を活用したということです。
従来の指定管理制度では、施設は公共がつくり、管理だけをアウトソーシングしていました。そのため、管理者はイノベーティブな発想を持ちにくく、あらかじめ決められた通りに安価に運営しなければならない構造にありました。それに対してパークPFIですが、PFIはPrivate-Finance-Initiativeの略ですので、つまり民間企業が施設づくりから商売まで一体的に行えるところが特徴になります。そこでしっかり稼いで、収益を公園整備に還元するというものです。
自動運転時代に備えて、駅前の公園化をすべし
次の記事は、「JR池袋駅の西口エリアの車道を廃止し歩行者専用空間とすることなどを盛り込んだ整備方針の素案を公表した」と報じています。池袋駅は盛り上がっても街への人流が乏しいため、「駅袋」と呼ばれていたそうで(知りませんでした)、そこからの脱却を目指すといいます。
駅前の巨大なロータリーは、自動運転時代には不要になる可能性があります。多くの車が駐車できなくても、適切なタイミングで自動運転車が迎えに来る、ということが可能になるからです。そうなれば、池袋駅のように駅前を公園化してしまい、「歩く街」をつくる方が、商業的にも、人々のウェルビーイング的にもメリットが高いでしょう。
自律分散で管理される公園3.0はありか
そしてもう一つ。次の記事は、Web3の技術を活かして、まちづくりを自律分散に変える試みを報じています。この記事には、「新潟県十日町市の集落で次世代インターネットを活用した地域創生の取り組みを始めた。地元NPO法人と連携し、棚田の保全活動に賛同する会員を全国から募る。会員権は非代替性トークン(NFT)で付与し、集落の発展に向け意見交換ができる場をデジタル上に設ける」とあります。とても面白い取り組みで、全国から第二市民を公募し、田んぼをみんなで保全するという経済システムです。
この枠組みを使うと、あらゆる共有資源をオープンにして、誰もがそのオーナー兼ユーザーになり、貢献しながら楽しむことができます。つまり、パークPFIの自律分散バージョンとなるわけです。
たとえば地方自治体が、駅前ロータリーを自然豊かな大きな公園にしてしまおうと考えた時、パークPFIでメイン事業者を決めたうえで、それぞれの区画のコンセプトが決まったら、そのPFI権のようなものをNFTで全国販売して資金調達するとともに、どのような設計で、どんな商売をするかについて、NFTオーナーたちが議論する場を設けることで、その公園を多くの人が楽しんで自分ごと化することができるかもしれません。
公園3.0でアクティブな関係人口の増加を
こんな楽しい活動にお金も意見も出したら、ぜったい行きたくなるはずです。きっと毎月一回はその駅を訪れるようになるはずです。いわば、きわめてアクティブな関係人口になるのです。
駅前から始めるのはリスクがあるとしたら、少し寂れた観光地から始めてはどうでしょうか。公園の運営を民営化するところから、経営を任せるところに発展したのがパークPFIです。そして、ユーザコミュニティをつくって、ムーブメントまで起こせるのが公園3.0です。
このような取り組みが広がることが楽しみでしかたありません。