フリーランス新法で副業推進はどう変わるか(副業政策とフリーランス政策の関係性)

昨年成立・公布されたフリーランス新法ですが、今年の秋頃の施行が見込まれています。

フリーランスガイドラインからフリーランス新法へと進められてきたフリーランス政策ですが、フリーランス政策は副業推進政策とも関係しています。

今回は、フリーランス政策と副業推進政策との関係について書いていきます。

「副業・兼業」には大きく3パターン

「副業・兼業の推進」といったところで、大きくみると、「副業・兼業」には、大きく次の3パターンあります。
① 雇用契約×雇用契約のパターン
② 雇用契約×業務委託契約のパターン
③ 業務委託契約×業務委託契約のパターン

JILPTの調査によれば、①雇用×雇用のパターンも多いですが、業務委託契約が含まれている「非雇用」のパターンも上位にきています。

(出典)独立行政法人労働政策研究・研修機構「副業者の就労に関する調査」(令和5年5月19日)より

フリーランス政策と副業推進政策の関係性

上記のとおり、一言で「副業・兼業」といっても、大きく3パターンが想定されており、政府はそのいずれの形の「副業・兼業」であっても推進しています。

そして、パターン①、②について、雇用契約という関係では、労務管理の問題になり、その際参照すべきは「副業・兼業ガイドライン」となります。もちろん、大きな点は、①のパターンにおける労働時間の通算ということになります。

他方で、パターン②、③については、業務委託契約という関係で、フリーランス政策が関係してきます。
ここでは、現状はフリーランスガイドラインが重要な指針ですが、今後はフリーランス新法がこの点を規律する大きなルールとなります(もちろん、フリーランス新法は「副業・兼業」に限定したルールではなく、広く「フリーランス」との取引に関するルールですが。)。

このようにみると、フリーランス政策と副業政策は一部分においては重なりがあり、一体として考える必要があります。
現に、厚労省HPの副業・兼業のページでは、「また、フリーランスとして副業・兼業を実施する際には、「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」もご覧ください。」という記載がされています(このページができた当初はこうした記載はなかったのですが、いつの間にかこのような記載がされています。)。

副業の法政策とフリーランスの法政策も密接に関連

上記のとおり、フリーランス政策と副業推進政策が密接に関連するとすれば、その「法政策」は副業のやり方にも影響を与えることが想定されます。

例えば、パターン①の雇用×雇用の場合の副業については、働き方改革後、労働時間通算等の労働時間の考え方を中心に議論がされましたが、結局労働時間の通算は維持されています。

となると、「副業は推進したいが、通算は面倒だ」という企業は、「業務委託の場合であれば副業OK」という考えに至ります。
このような許可の運用は問題なのですが、実際、そのような例は多く聞かれます。

そうすると、「実態は労働者なのに、通算回避のため業務委託にされている」というケースが想定され、そこで登場するのが、フリーランスガイドラインの労働者性の判断基準ということになります。

また、そうでなく、実態もフリーランスだが取引が適正でない等の事情がある場合には、今後はフリーランス新法がその点を規律するということになります。

フリーランス新法による副業者の動向は注目

上記のように、副業・兼業の3パターンのいずれの場合においても、副業者(フリーランスも含む)が不当な扱いを受けないように法整備がされているわけですが、そうなると気になるのは、「副業・兼業の推進が失速するのでは」というところです。

もちろん、「通算回避のため形だけで業務委託」というのは、望ましい形ではないものの、「副業・兼業の推進」という観点では、パターン②の雇用×業務委託の形は、一定の意義を有していたでしょう。

ところが、その「業務委託」の側面にも法整備がされたので、「やっぱり副業・兼業の解禁は面倒だな」となりそうです。

フリーランス新法は、そこまで重たい義務を課しているわけではなく、企業がおよそ(フリーランスを問わず)取引をするなら遵守すべきことを記載しているだけであり、「過大な負担が課せられる」と捉えられないような正確な周知が必要になると思われます。

いずれにしても、フリーランス新法による副業・兼業の推進政策への影響は注視しつつ、政府においては、状況に応じて、雇用×雇用の場合の労働時間の通算の見直しなど含めた柔軟な対応が求められると思われます。

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