「オタク・テロリズム」:負のイメージの存在=ドイツ時事ネタ
ドイツでは今月、「オタク・テロリズム」という言葉が登場し、ファン界隈を怒らせ、失望させる出来事がありました。今回は、日本国外では好イメージだと伝えられることの多い「オタク」という言葉について考えてみたいと思います。
ことの発端は10月9日にドイツ東部の町ハレで起こった極右・反ユダヤ主義者によるシナゴーグ(ユダヤ寺院)襲撃事件です。犯人は極右主義かつ反ユダヤ主義のドイツ人の青年で事件そのものもショックでしたが、近年、ドイツの若者の間に広まるとされる極右主義や反ユダヤ主義が表面化したとの考えも報道されドイツ社会に衝撃を与えました。
「オタク・テロリズム」という言葉は、ドイツの民放ニュースチャンネル『ヴェルト』が事件の背景事情についての解説を求めたインタビュー中に登場しました。解説をしたのはドイツ憲法擁護庁の前長官マーセン氏。このインタビューはYouTubeで公開されています。
該当する発言部分を見てみましょう。
言うとすれば、オタク・テロリズムの一種でしょう。これは右派テロリズムで、若い男性で一日中家に居て、反セム主義(反ユダヤ主義)で、女性を憎む、人種差別主義者です。彼らに対して我々は対応を強化する必要があります。
あらゆるネガティブな要素が「オタク」という言葉でひとくくりにされています。まさに負のイメージといっていいでしょう。(そもそも、「オタク」という日本語自体がドイツの一般社会では知られていない言葉です。)
一方で、ドイツのアニメファン界隈では激しい議論が巻き起こりました。
この発言をめぐるニュース記事(一例:『Anime2You』)には多くのコメントが寄せられ、その大半はオタクはテロリズムとは無関係であるという反論です。
また、ドイツのオタク系ユーチューバーとして人気のニノさんは12日、自身のツイッターアカウントで異例となる声明を発表し、反論しました。
筆者は、「オタク」イメージとはこうあるべきだといったひとつの「解」を示そうというものではありません。ではなく、今回の一連の事件とその反応は次のように整理することも可能だと思うのです。
つまり、
1)ドイツにおける「オタク」イメージは、アニメファンなどのコミュニティ界隈では言祝がれる対象となっている一方で、
2)コミュニティの外側にある「世間一般」という場所では批判のネタにされている
ということです。
お気づきの読者の方も多いと思いますが、こうした「オタク」イメージの両極性は日本国内でもさほど変わらないと思います。
世間では「海外で日本のアニメが人気!」などとよく言われますが、日本やドイツのようなコミュニティの内と外における温度差は、おそらく世界の他の国でも同じなのではないでしょうか。
クールジャパンと称して日本のポップカルチャーを海外に輸出する時にも、その手法やマーケティングにいたるまで月並みな言葉ですがTPOに合わせた施策が必要だと考えます。
拙稿がどこかの誰かの参考になればとドイツから願います。
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