2拠点居住を整理して理想スタイルを考えてみた【日経朝刊 投稿募集】
増加する2拠点生活
副業の機運が高まる中、大都市圏で働いている高度な専門性を有した人材の地方都市での副業が増えている。皮切りとなったのは、広島県福山市における「戦略推進マネジャー」の事例だ。
筆者の住む大分県でも、先日、DX人材の副業募集が始まった。
このように、大企業の副業解禁の流れに合わせて、地方自治体や中小企業でこれまで労働条件の問題で雇用が難しかった高度な専門人材に期待が集まっている。
また、副業以外にも、個人事業主やフリーランスのような働く上での自由度が高い人々が2拠点生活をするケースも増えている。それに応じて、手軽に2拠点生活を楽しむことができるサービスも出てきている。下記、引用記事で紹介されている月5万円で2拠点生活をできる「sanu」や月4万円で2拠点生活ができる「ADDress」が注目を集めている。
このようなトレンドを反映して、日経COMEMOでは「#2拠点居住の理想スタイルとは」というお題で投稿募集している。本稿では、この投稿募集に応じて、理想の2拠点居住について考えてみたい。
2拠点生活の4象限
まず、「理想」といえる生活スタイルとはどのようなものか。それは、人によって異なるだろう。多種多様な人と交流できることを心地よいと思える人もいれば、独りきりの時間を何よりも大切だと感じる人もいる。つまり、「理想」とは十人十色であり、ベスト・プラクティスがあるわけではない。
そうなると、「2拠点居住の理想スタイル」とは、多数ある2拠点生活のパターンの中で個人の志向と合致したものと言えるだろう。昔読んだ新聞の四コマ漫画で、旦那が単身赴任でやせ細っているのではないかと心配している主婦に対して、実際に帰ってくると旦那は逆に太って健康的な笑顔を見せるというエピソードがあった。単身赴任も個人によっては苦痛で、個人によっては幸せだ。
それでは、現在の多拠点生活のパターンを整理すると、どのようなカテゴリが考えられるだろうか。ここでは、2拠点生活をするに至った動機を基に、下図の通り4象限で整理してみた。
X軸は、2拠点生活の切っ掛けが自由意志によるものなのか、それとも他者からの要請によるものなのかで区分した。副業人材の2拠点生活などは、自分で求人に応募していることから自由意志によるものだ。それに対して、人事異動での単身赴任や両親の介護による2拠点生活は外的要請によるところが大きい。金銭的な理由から生じる出稼ぎも含まれる。
Y軸は、2拠点生活で達成したい目的で区分した。公的な充実/問題解決では、仕事や業務上の課題解決、課されたミッションの遂行、社会課題解決への貢献を目的とする。
例えば、単身赴任やステイケーション、出稼ぎでは活動の結果として、組織内の課題解決やミッションの遂行を求められる。出稼ぎは個人の問題としては私的な動機が大きいが、求められるべき成果は職務上の業績であり、金銭はその対価であるために公的な要素が強いと判断している。また、地方自治体の副業募集やプロボノ活動、短期的なプロジェクトへの自主的な参加による2拠点生活も含まれるだろう。
私的な充実/問題解決では、家庭などのプライベートで生じた問題を解決したり、私生活の充実を目的とした2拠点生活だ。両親の介護や子供の健康問題、教育上の理由で、2拠点生活を求められるケースは古くからある。退職するかどうかを悩んだ結果、会社と相談して、時短勤務や在宅勤務が主な業務に転属してやりくりしたというのもよく聞かれる話だ。
また、働き方の自由度が高かったり、金銭的に余裕がある人々は、働く場所に捉われないために複数の拠点を持っていることが以前からみられた。バブル期に乱立した地方の別荘地はその名残だ。今はテクノロジーによってプラットフォームが提供されるようになり、富裕層ではなくても中間層が無理のない価格設定で2拠点生活を楽しめるようにもなっている。面白い動きとしては、若者を中心にシェアコミュニティが拡大しているところだ。古民家を再生して、会員制で共同生活を楽しむコミュニティが様々なところで見られるようになってきた。有名なところは、「現代の駆け込み寺」をキャッチフレーズにしている『リバ邸』がある。
自分の志向とのフィットを意識する
2拠点生活で、心地よい、幸せだと感じるのは人によって大きく異なるだろう。地方にいると、高校時代から実家を離れて暮らし、週末は実家で過ごし、平日は学校の近くで寮暮らしをしている学生をよく見かける。彼ら、彼女らも、ある意味、二拠点生活者だ。そして、向き不向きは個人差が大きい。その生活が負担となってしまい、心身に不調をきたしてしまう子や実家からの解放感で羽目を外しすぎてしまう子もいる。一方で、二拠点生活が心地よく、優れたパフォーマンスを発揮できる子もいる。重要なことは、個人の志向とライフスタイルが合致するかどうかだ。
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