心理的安全性の意味
最近、Googleの心理的安全性に関する研究が大変有名になっています。
これは、Googleが500のチームを調査し、生産性の高いチームの特徴を明らかにしようとしたものです。その結果、「メンバーの発言権が均等である」「メンバーの人の気持ちを感じる力が高い」という二つの特徴が生産性の高いチームに共通してあったのです。
これは既に提案されていた「心理的安全性」の特徴だと考えたのです。「心理的安全性」は、ハーバード大学のエイミ・エドモンゾン教授によって提唱された概念で、「チームで率直な発言をしても罰されることがない安心できる状況」のことです。これはミスや不正と直結することが確かめられていました。Googleは、上記のハイパフォーマンスのチームの二つの特徴は、この「心理的安全性」の特徴と考えたのです。
実は、このGoogleによる生産性の研究に先立って、MITのトーマス・マローン教授のグループは、2006年頃から「集合的IQ」の研究を始めていました(実は、我々はそのスポンサーの一人でした)。個人の知的能力をIQとして数値化できるのと同じように、集団の知的能力を数値化するという試みでした。その仮説は、集団の問題解決能力や生産性は、単に個人のIQを合わせたものとは異なる、というものでした。
そして、実際には多数のチームに、協力しあわないと解けない問題を与え、その能力を測ったのです。その結果、生産性の高いチームには共通の特徴があったのです。第一の特徴が、メンバー間での発言権の均等性でした。第二の特徴が、人との関係性を認識する能力(Social Perceptiveness)でした。そして、驚くべき第三の特徴が、女性比率の高さでした。女性が交じっている方がよい、というのではなく、女性100%が最も生産性の高かったのです。ただし、第3の特徴は、女性の方が関係性を認識する能力が高いからであって、本質は第1、第2にあると考察されています。
実は、この集合的IQの特徴は、Googleで生産性の高いチームに見られた特徴とほぼ重なっているのです。
即ち、「集合的IQ」というチームの知的能力は、Googleが「心理的安全性」と呼んだことそのものだったのです。「安全性」という言葉には、一種の「衛生要因」のニュアンスがあります。その要因が下がると問題があるが、ある程度以上高めても、価値を生まないという意味です。しかし、本質は、この特徴を向上させることで、生産性を高められる特徴だったのです。
20世紀は、規格大量生産の時代でした。そこでは、ともかく決まったことや言われたことを愚直に実行する人が大量に必要でした。組織では、リーダーが指示したことを不満をいわず、実行する人が優遇されました。そして、この時代に培われたマネジメントの仕組みが、今も色濃く残っています。特に日本ではそうです。何故かというと、その時代に大成功したのが日本だったからです。成功の体験は、人の心をしばります。
しかし、残念ながら、このマネジメントは、心理的安全性や集合的IQを下げることになるのです。だから、日本の生産性や成長率は低いのです。
今、この組織と心の科学を活用し、日本を変えるときが来たと思います。
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