見出し画像

デンマークの独自性のつくり方から学ぶ-わかりやすい方法論やトレンドに飛びつくな-

今回は、デンマークから学んだ「独自の戦略づくり」をテーマに書いていきたいと思います。

小さいけど強いデンマーク

デンマークは、人口585.7万人(2021年)、国土は日本の約1/9、と小さいけど、世界で存在感を出している国です。

存在感は、下記のような世界評価に現れています。

国際経営開発研究所 (IMD)による世界競争力ランキングで2年連続で首位(2022年、2023年)

「持続可能性ソリューションネットワーク(SDSN)」が、SDGs達成率に基づいて作成した「持続可能性世界ランキング」で世界1位

なぜ、このような競争力を出せるのかが気になり、現地を訪れながら調査をしています。

デンマークで現地の人と話をしていて、グサッときた言葉がありました。

デンマークは、アメリカの方法論やトレンドをそのままマネすることはしてきていない。

自分たちが豊かに暮らせる社会の可能性を、自分たちで考えながら探ってきた。

日本は外の考え方やトレンドを有難く取り入れ過ぎているのでは?

現地の人とデンマークの競争力について話している中で、聞いた言葉

デンマークは真似をしない…

現地を訪れると、確かに独自の戦略が貫かれています。

例えば、独自の交通インフラ↔︎独自の観光体験

実例をご紹介したいと思います。

交通インフラづくりの独自性が面白いのでご紹介します。

自転車を主要な交通手段に

まず、デンマークは自転車が主要なインフラとなっていることが有名です。

首都コペンハーゲンの街づくりビジョンは 「自転車にとって世界で最も素晴らしい都市になる」と掲げられ、ルール・仕組み・ハード面がデザインされています。

自転車が社会インフラとして根付いています

コペンハーゲン市は、都市の排気汚染対策として、自転車利用の促進を全面に押し出した道路空間の再編に取り組んでいる。政策の一環として、事業の縮小、自転車の相互通行から一方通行への変更や通り抜け不可への変更などを積極的に行い、空いたスペースには自転車専用道路を整備、車道と歩道の間にある自転車道の拡張、自転車専用橋の設置を行うなど、2009年~18年の10年間、合計10億デンマーク・クローネ(約190億円)の予算を自転車インフラに投資している。

引用元:北欧のスマートシティ: テクノロジーを活用したウェルビーイングな都市づくり

街を自転車中心に移動するのが、ここまで快適なのか…そして運動にもなるので健康にも良いことが実感できます。

自転車中心のインフラは街に人間らしさを取り戻していると感じました。

そして、コペンハーゲンの街中には、シェアサイクルのネットワークも充実していて、観光客も住民に溶け込むことができます。

現地で乗ったTIERのシェア自転車
シェアサイクルのネットワークイメージ

さらに、タクシーも独自路線

また、タクシーは海外の自動車ブランドや、Uberのような仕組みをそのまま持ち込まれてはいません。

デンマーク最大のタクシー会社、ダンタクシーがサスティナビリティを重要視した戦略をとっています。

ダンタクシーでは、下記のような戦略が掲げられています。

・電気自動車やハイブリッド車のタクシーを導入する。
・2030年までにCO2排出量を実質ゼロにすることを目標とする
・タクシーの運転手には、環境にやさしい運転方法を指導する
・タクシーの待機場には、太陽光発電システムを設置する
・タクシーのために北欧最大の充電ハブを設置することを目指す

ダンタクシーのホームページより引用
Dantaxi(ダンタクシー)の写真
Dantaxi(ダンタクシー)の表示

独自に磨かれた交通インフラが、独自体験に

コペンハーゲンは、観光の終焉(The end of tourism)という衝撃的な宣言を出しています。

要は、今までと同じような、THE観光地の魅力を伝えるような広告をバンバン出し、案内するようなことはしない。
観光客もコペンハーゲン市民として街に馴染んで、自分たちの独自の文化を体験してもらいたいという宣言です。

独自のローカル文化をつくる戦略を貫いてきたからこそ創りだせる戦略ですね。

現地を訪れてみて自転車、タクシー、移動インフラにサステナビリティが反映され、他の国とは異なる体験ができることは、観光体験にもポジティブな影響を与えていると感じました。

ちなみに中心を流れている川もカヌーやボートなどアナログだけど人間らしさを感じられる手段が取られています。

カヌー乗れなかったけど見ているだけでも楽しそうなのがわかります。
地球にも人にも良いデザインだと感じます。

コペンハーゲンの観光戦略は、サスティナビリティを中心に形成されているのは、下記のブランドムービーを見ても理解することができます。

デザイン思考もアメリカ式に疑問を投げかけオリジナルの方法を

デンマークデザインセンターの代表であるベイソン氏は、著書「Expansive Thinking」の中で、下記のように書いています。

We have become trapped by Silicon Valley’s technological determinism.
This limits the scope of solutions to our most urgent problems
私たちは、シリコンバレーの技術決定論に捕らわれてしまいました。

Expansive Thinkingより引用

上記の主張を踏まえて、改めてアメリカのシリコンバレーから生まれたデザイン思考に関して再定義を試みています。

既存のデザイン思考の欠点として下記のような問題提起がされています。

  1. Lack of critique:批判の不足

  2. No language for beauty or form:美しさや形式についての言語がない

  3. No consideration of time horizon:時間軸の考慮がない

  4. Lack of speed:スピードの不足

  5. Reductive image of “the user” and of space:ユーザーや空間の単純化されたイメージ

  6. Lack of passion:情熱の不足

  7. Overestimating methodology:方法論の過大評価

アメリカの真似はしない。

デンマーク独自の方法論を生み出そうとしているから、ありがたく方法論を受け取るだけでは終わらない。

自分たちも、海外輸入の方法論依存症になっていないかを改めて再確認しよう…と考えさせられました。

すぐに、わかりやすい方法論やトレンドに飛びつくな

自転車を主要な交通インフラにしてサスティナビリティ推進、人も健康に…と素晴らしいイノベーションだと感じています。

なぜデンマークはアメリカとは違う形のイノベーションを起こせたのか?

デンマークからの学んだ教訓は「すぐに、わかりやすい方法論やトレンドに飛びつくな」です。

アメリカとは違く独自の方法を考え抜いてきたから、このような豊かな都市が生まれたのだと思います。

マーケティングの仕事をする上で、有り難くアメリカの理論や方法論を受け取って終わっていないか?

マーケティングの本質は、真似ではなく独自性づくり。

対話からミッションをつくるのnoteでも触れましたが、デンマークは目的を定めてゼロベースで考える力が強いと感じています。

改めてブランドの強さはどこから生まれるのかを考えさせられたデンマーク訪問でした。

今回はデンマークから学ぶマーケティングについて書いてみました。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました!


コペンハーゲンの街づくりの戦略、観光戦略は、ここら辺の動画見ておくと良いよーと現地の社会科の先生が教えてくれたので、貼っておきます!

デンマークも、直近20年ほとで戦略の転換を図ってきたことがわかり面白いです。