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電流で味覚を制御! テクノロジーで感覚を制御するという新潮流

こんにちは、電脳コラムニストの村上です。

まるでSFのような話が、現実のものとなりました。キリンホールディングスが発表した新商品「エレキソルト スプーン」です。

キリンホールディングス(HD)は20日、人体に影響のない微弱な電流を流して食べ物の塩味を増幅するスプーンを発売したと発表した。感じる塩味を最大5割高められる技術を搭載した。価格は1万9800円。味覚や視覚といった人間の感覚を操る技術が進化し、商品開発に生かすメーカーの動きが相次いでいる。
(筆者略)
キリンHDが20日発売した「エレキソルト スプーン」は、流す電流の強さで感じる塩味を変えられる。特殊な波形の電流を流すことで食品や唾液に含まれるナトリウムイオンを舌にある味覚の受容体に集め、塩味を強く感じるようにした。明治大学との共同研究をもとにキリンHDが開発しており、専用サイトを通じて、まずは200台限定で抽選して販売する。

日経電子版

この商品は、去年のイグ・ノーベル賞を受賞した明治大学の宮下教授の研究成果を元にしたものです。日本人研究者は毎年のようにイグ・ノーベル賞を受賞しており、非常にユニークな研究をする土壌がわが国にはあるようですね。

ユニークな科学研究などに贈られる「イグ・ノーベル賞」の今年の受賞者が14日発表され、明治大の宮下芳明教授(47)と東大大学院の中村裕美特任准教授(37)が「栄養学賞」を受賞した。電気を通した箸やストローで飲食物の味を変える方法を提案した。日本人のイグ・ノーベル賞受賞は17年連続。

宮下氏は共同通信の取材に「とても光栄に思う。受賞論文は2011年のもので、その後の研究で減塩でもちゃんと塩味を感じられる装置を開発するなど、さらに進んでいる」と語った。中村氏は「非常に驚いた。電気味覚に関わる私の研究の始まりといえる論文が評価され、研究を続けてきて良かった」と話した。

日経電子版

テクノロジーを通じて人間の感覚を制御しようという試みは以前からありました。近年では機器やデータ処理能力の進化が進み、実際に商品レベルまで持っていけるようになったのでしょう。聴覚と味覚など、複数の感覚の相互作用によって人の行動や感情が変化することを「クロスモーダル」と言い、産学連携の研究が加速しています。

まだ、研究段階であり、明確な関係性は判明していません。しかしすでにわかっていることもあり、例えば高音を聞くと酸味や甘さを感じやすくなり、低温を聞くと、旨味や苦みを感じやすくなるというようなことです。

それは全く新しいことでもなく、嗅覚は味覚にとりわけ深く関連していますし、視覚の影響も大きいことはみなさんも経験的にご存知でしょう(例:美味しそうな料理)。先ほどの音環境が味覚に影響を与えるという考え方を「ソニック・シーズニング」と呼び、今後研究成果がもっと出てくると思います。特定の料理を出すときに旨味を増幅させるような音楽(ないしは環境音)を合わせるということも、当たり前に世界になるかもしれません。また、食べている瞬間のみならず、その手前の消費意欲にも影響を与えることもできそうです。

実際に博報堂は全国のファミリーマート3000店で「ビールのおいしさを増幅させる音楽」の実証実験を実施しました。店舗でビールの映像とおいしさを増幅する音楽を流したところ、6割の消費者が「ビールを飲みたくなった」と答えたそうです。

料理人が美的センスのみならず、音楽センスも身につけるようになる時代がそこまできているのかもしれません。


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タイトル画像提供:ぺかまろ / PIXTA(ピクスタ)

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