日本発IPは魅力と危険にあふれている。中国でのちいかわ大ヒットと炎上の罠から海外展開のヒントを
日本でも、ちいかわってこんなに人気だったんですか!?
上海の静安大悦城という大きなショッピングモールで、MINISOとちいかわのコラボグッズを販売開始する日。深夜から徹夜組も登場する熱狂ぶりと買い物客の長蛇の列は日本でもたくさん報道されていましたね。
もはや説明不要かもですが、ちいかわはイラストレーターのナガノさんが創作した漫画の「ちいかわ なんか小さくてかわいいやつ」のキャラクター。中国では去年末くらいからリアルでもネットでも目にする機会が多いなぁとなってきて、ここに来て猛烈な人気で国中を席巻しています。
↑Xでも中国の人気ぶりが発信されてバズることが増えています。これなんか、もはやアイドルを超える人気なんではないかとびっくりしてしまいます。
ただ、最近でのヒートアップは正直異常。そしてバズりすぎで注目が集まったことも影響してかネガティブな話題もバズっています。
そのなかでも、1番炎上したのは宣伝するためのライブ配信。MINISOの担当者がちいかわのことを「智障愛哭鼠(知的障害の泣き虫なネズミ)」や「瘋狂怪叫兔(奇声を上げる変なウサギ)」と表現したことに非難が殺到。
結果、MINISOがWeiboのオフィシャルアカウントで謝罪し、その張本人もこの件でクビになったそうです。
ここまでは日本のニュースでも紹介されていましたが、ここからは、ちいかわビジネスについての感想やネット民の声を。初期のハングリーマーケティングや、このようなもはや意味が分からないPR以外にも、今回のちいかわコラボには不満がある人が多いです。
ちいかわが中国で尋常じゃない人気になったことで、日本から転売されたものの値段が非常に高くなっていました。
そんななか、数々の世界的IPとコラボしていて、しかもお手頃価格で入手できるMINISOがちいかわとのコラボを決めた時には、みんなが大喜びでした。店舗がそこらじゅうにあるし値段も手頃で、これで買いやすくなるぞと待ってた人も多いそうです。
ただ、蓋を開けてみれば失望の嵐。今回のコラボはディズニー以上のライセンス費用だったんじゃないか説。感覚的にも、オリジナル商品が9.9元の場合、ディズニーやサンリオとのコラボになると14.9元。一方、今回のちいかわの場合19.9元。50%の値上げであれば、「まあ権利の料金があるから仕方がない」と思いますが、倍になると、どうしてもぼったくり感が生まれます。
そしてクオリティにも不満が。MINISOはパクりで有名な企業からスタートして、今では真っ当な商品開発やデザインがあるとはいえ、まだまだ甘いところがあります。
↑例えばこのデカい鉛筆。ディズニーや映画バービーとのコラボでもありましたが、いつどんな用途で使うのよ?と。個人的には全く魅力と必要性を感じないです。これらが安ければ仕方がないと受け止めますが、けっこう高いのに微妙で「単なる不良品じゃん」とツッコミが多数。
それでもちいかわの人気が不満を人気に変える
通常は不満と低評価でファンが離れるところが、今回は面白い現象になってます。あまりにも大人気で、その“不良品”なことがむしろプラスに働く動きが。買って改造するムーブメントが起こり、それがRedなどのSNSでバズっています。
その数々をここから少し紹介していきます。
↑例えばこのモバイル扇風機の奥にあるぬいぐるみボールペン。見た目は可愛くてもボールペンとしての使い心地は決していいとは言えないです。そこにネット民の達人たちが参入。
↑ボールペンの部分を外して、Apple Pencilのカバーに変身。
↑ボールペンのところを外してそのカバーをウサギのマフラーにしてストラップに改造されました
↑僕もこれ何に使えばいいかイマイチよくわからない箱を思わず撮ったんですが、↓レッドの達人!さすがです!世界一可愛いチャリのカゴになりました。
↑顔の可愛くない作りに対して整形手術を↓
↑名整形医師の誕生w
↑パジャマーを脱いだらまさかのみんな坊主。
↑改造はできなそうだが、二次創作は完璧です。他にも、中国のオリジナル文化を入れて作られた表情包も半端なく使われてます。この2次創作と拡散までも視野に入れて余白を残した低クオリティだったとしたら、Minisoのマーケターは天才だと思う(たぶん違う)。
このタイプの炎上は要注意。他の日本IPを扱う皆さんにもぜひ気をつけて欲しい
そんな人気ぶりで目立ちすぎたか、微妙なものも見つかって炎上にも繋がってます。そのなかにはちょっとデリゲートな炎上もありました。
コンテンツの内容によって炎上しているのがこちら↓
ナガノさんが作品の中で台湾を「国家」と表現したシーンが発見されバッシングが。「中国人からお金を稼ぎながら、中国人を傷つけるようなことをするのは許せない」という意見がたくさん投稿されました。Chiikawaとその作者に対する非難の声と不買運動が起こり、作品の中国国内での人気に影響が出る可能性が勃発。
もちろん、やみくもに批判している人だけではないです。この投稿者のように、作者の発言は傷つける意思があったわけではなく、些細なことで作品全体を不買するべきではないとの主張。中国人は文化的自信を持つべきで、他人の一言で動揺してはならないという沈静化を求める投稿などもありました。
ただ、日本国内を飛び出して海外、中国でもビジネスする際には、これらのポイントは知らなかったでは済まされないの現実です。以前にも日本の漫画アニメがとんでもない炎上になったことを紹介しましたね↓
今回の件でも、日本発のIPの底力とビジネスチャンスについて改めて注目した人も多いと思います。ちいかわ以外にも、日本のアニメ・漫画IPは、今後も高い成長が期待できる中国のブランドライセンス市場に再度注目が集まっていますので、ぜひ炎上などを気をつけることでパフォーマンスを最大限発揮してほしいなと思います。
ちいかわに関しては日本でもビジネスに活かそうという取り組みが各社で行われているようですね。
中国でも、今後さらにビジネスに活かすケースが出てくると思います。また新たな事例が現れたら共有したいと思います。
(参考資料)