ブレグジットは今どうなってるのか?

新型コロナウィルスが蔓延していなかったら、今頃ブレグジットにかかる交渉が白熱していたはずである。1月31日にブレグジットが決まってから、移行期間終了の2020年末までにどれだけの合意に至れるのか。コロナがあるからといって、進みだした時計は止まってはくれない。相互に止めることができるかどうか、にかかる。

ブレグジットに関わるスケジュールは常にタイトで、かつ、交渉が難航することは目に見えているため、2020年末までの合意予定は果たして間に合うのか既に不安視されている。英国はできるだけうまい離脱をしようとする上、米国や日本や中国などとどう組んで有利に展開していくかを模索することも選択肢に入ってこようし、EUはEUで、英国が離脱後に規制を緩めたり、不当に税を引き下げたりするのではないかとの不安を取り除くことが必要になっている。折り合える見込みはあるのか。

離脱協定の移行期間に関する規定132条1項で決まっている通り、この移行期間については合同委員会によって7月1日より前(つまり6月中)に決定すれば、一回限り1年または2年の延長が可能である。もっともこの切り札を使う場合にはEU予算の拠出を伴うため、英国としては大変悩ましいということになる。6月末までの延長が決まらなければ、合意なきブレグジットを選び、その後を導入期間とあてるといった案もあるとか。英国にはこちらを選べば都合がよさそうだが、EUはそれを許さないのではないか。

しかし、実際に決まらない、決まりそうにない、がゆえに、たとえば金融サービスは影響をまったく受けずに済むのか、ということも考えておく必要がある。EU加盟国のどこかで営業免許を受けた金融機関が域内のどこであれ営業できるとする単一パスポート制度が合意なしになくなった場合に、いかにこれまで通りの金融サービスを展開できるのか、という課題がすっきりとは解決されていない。これとバーターで話が進むと言われているのが漁業問題。大陸欧州にとって英国海域は望ましい漁場で、これまではEUの枠組みで割当制をもって漁業をしてこれた。しかし、英国離脱で英国海域での漁ができなくなれば、大陸欧州の漁民にとっては死活問題である。

ところが、こうした問題を山積させたまま、英国もEUも、新型コロナウィルスへの対応に追われているのも事実。そちらに人員が割かれていることは容易に想像がつく。これからはテレビ会議で交渉をしていく、という日程が決まったが、妥協点を見いだせるかは予断を許さない。とはいえ、英国とEUの今後を決める大イベントである。交渉の行方を十分に注意し、どの国のどのセクターに有利・不利が生まれるか、観察をしていく必要がある。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?