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どんな人が缶で日本酒を飲むのだろう?

2015年に開催された食をテーマにしたミラノ万博の前後の数年間、日本酒の欧州市場開拓に関わることが多かったので、今もたまに日本酒の海外市場に関する記事が目に入ると「最近はどうなんだ?」と好奇心を持って読みます。

上記の記事中にある、以下の部分、当時に感じた問題に解決策として提案されているのが分かります。

小容量の日本酒を輸出する事業者が増えている。100〜180ミリリットルの瓶や缶など容器の形状は様々で、外国人にとっては四合瓶(720ミリリットル)より気軽に購入できると引き合いは強い。

日本酒の輸出は四合瓶が一般的で、海外では和食レストランのほか酒専門店、スーパーなどで扱っている。ただ「四合瓶は相当な日本酒好きでなければ手に取りにくい」とFERMENT8の樺沢敦取締役は指摘する。一度では飲みきれず、冷蔵保存のスペースも必要だ。家で飲んでみようという層には購入のハードルが高い。

日本酒、ちょい飲みサイズで輸出攻勢 「四合瓶だと多い」

自宅で飲むワインにおよそ10-15€を払っているとすると、日本酒は2倍以上の金額。それを買い、かつ飲みきれないとなれば、どうしても日本酒を飲む機会は外食時に限られます。

フランス料理やイタリア料理を日本酒で楽しむような試みもたくさんされてきましたが、実際、ふつうのイタリアレストランの席に着き、ワインリストに日本酒が入っているなどまずありえないです。

やはり和食店や中華料理店で日本酒に出会います。ただ、ミラノ市内で一つの動向の変化を感じます。

今世紀初頭からはじまった中華料理店の寿司店への転換、特に食べ放題の寿司店が乱立し、数年前からそれらが高校生あたりの昼食時のたまり場になったため、「もう、その手はいいか」との声を聞くようになりました。

一方、和食屋やラーメン屋などの話題がよくソーシャルメディアにもあがりますが、それ以上に中華料理の専門化とグレードアップが加速しています。既に中国からの移民初代ではなく3代目あたりの挑戦が主舞台です。少なくとも、ぼくが見る範囲では、こうした店で日本酒がかつてのようには当たり前に置いてない、と見えます。そのかわりワインが充実しています。

以上のような点から、ミラノでも日本酒の容量小サイズ化は必然の道と判断できます。日本酒のファンは確実に増えているのですから。

日本酒、ちょい飲みサイズで輸出攻勢 「四合瓶だと多い」

しかし、少量をガラスのボトルとするか、缶とするか。ここに、かなり大きな分岐点があると考えます。背景には次のような現象があります。

スーパーのビール売り場の変化です。この数年、缶ビールがどんどんと減っています。ビールの売り場は広がり、IPAなど種類は昔には想像できなかったくらいに増えたのです。しかし、それらは全て瓶です。缶ビールは大量工業製品の代表選手の顔が強すぎます。

日本のテレビドラマを見ていると、自宅に帰ってホッとするとき、男女問わず、冷蔵庫から冷えた缶ビールを持ち出して、そのまま缶に口をつけるシーンが多いです。あれを見ながら、日本的風景だなぁとぼくが思うのは、ミラノでは缶ビールがマイナーだからです。

また、公園のような公的空間でアルコールを飲むのは禁止され(夜の公園で、ややお行儀のよくない人たちがビールを飲んでいたとしても、それは多くの場合、瓶)、電車の車内で出張帰りにビールを飲むのも一般的ではない。とすると、少量の日本酒の行きつく先に飲食店以外の公共での場はありえず、それを飲む際の空間は何処であれ、容器は瓶に限るとなります。

殊に、日本酒はビールを飲む人たちと比べると「意識高い」派です。日本文化に関心がなくても日本酒に関心をもつのは、ワインでもどちらかといえばオーガニックを好むようなタイプです。缶の匂いがついているかもしれない酒を飲む羽目になるのでは?と神経を遣う人たちです。

・・・と書いてきて、最後にこのグラフは掲載しておかなくては、と思いました。2023年は14年ぶりに、量も金額でも減少したのですね。これは、ますます、日本酒市場の人々の容器感覚を知る必要がありそうです。

日本酒、ちょい飲みサイズで輸出攻勢 「四合瓶だと多い」

冒頭の写真はトリノの自動車博物館で開催されたF1のアイルトン・セナの回顧展。セナが活躍していた当時、タバコと酒があの世界のファンの意識と結びついていた。

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