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アフリカで見つける未来のビジネス

ご縁があってのことだろう、この半年ほどでアフリカに3回足を運んだ。今後も定期的に訪れることになりそうだが、自分自身が関わるIT教育に限らず、アフリカでのビジネスを知ったり、ヒアリングや見学をさせてもらうことが増えるにつれて、アフリカには未来のビジネスの種がたくさんありそうだ、という気持ちが、確信に変わりつつある。

たとえば、マイクログリッドにまつわるビジネス。まだまだ電力の供給が不安定であったり、電力自体が行き渡らない場所も少なくないアフリカで、小規模な発電設備によるコミュニティないし世帯単位の電化をもたらしている。

そのひとつであるM-KOPAのオフィスを見学させていただいた。

M-KOPAは、世帯単位の太陽光電化システムで、ソーラーパネルで発電した電力を電池に貯めておき、夜間の照明やラジオを動かすために使う。最近のものは、テレビや冷蔵庫を動かすこともできる。課金は1日単位で、日本円にして数十円程度の費用ということだ。これであれば、世帯収入が少ない家庭でもまかなえる金額になるし、たとえば週末は電気のない生活をする、という使い方をする家庭もあるらしい。照明用のオイルを燃やすランタンでも燃料代が同程度かかっているとのことで、それであれば照明だけでなくラジオなども使えるM-KOPAは画期的だ。

そして、特筆すべきと思ったのは、家電が直流電源で稼働するものということ。自家発電で地産地消的に電気を消費するため交流電源にする必要がなく。その分家電の作りもシンプルに出来るとのこと。

日本であれば、すでに電気が来ることは水や空気があることと同じように当たり前で、普段その存在を意識することは少ない。しかし、大規模な災害などで発電や送電網がストップして大きな問題となることは、我が国に起きた近年の自然災害がもたらした被害を思えば、想像に難くない。

日本のように大規模な発電・送電網は、平時は安定的であるが、ひとたびそこに障害が起きれば、その回復までに要する時間も長くなりがちである。テクニカルな問題ではなく社会的な合意の問題だが、2011年の東日本大震災に伴う原発への懐疑的な見方から、そろそろ10年を経ようとする今日でも再稼働が出来ていない原発が多数ある。

もし、日本のような災害多発国で、こうしたマイクログリッドを併用することができるなら、大災害が起きても、最低限の照明とラジオなどでの情報取得が可能になる。通信機能を使うには基地局が稼働していることが前提になるが、携帯電話のバッテリーを心配する必要もなくなるかもしれない。

また、まだまだ水洗トイレが普及していないところが多い中、悪臭とハエをはじめとする害虫を防ぐトイレSATOが、こうした衛生環境の改善に役立っている。こちらも、SATOのアフリカを統括するオフィスがナイロビにあり、責任者からお話を聞かせていただいた。

このSATOはLIXILのビジネスの一部であり、生産から利用までを途上国で行うことでビジネスとして成立しているサスティナブルなソーシャルビジネスになっている、ということだ。

SATOは極めてシンプルなプラスチック製の便器で途上国でも現地生産が出来る。価格は数百円程度からと安価だ。しかし、これによって、家屋からトイレを離れたところに設置しなくても悪臭や害虫に悩まされることがなくなり、安全で衛生的なトイレを多くの人に供給できる。

この問題は一見、水洗トイレが普及した先進国には関係がないようにも思われるが、実は水洗トイレが大量の水を消費していることがひとつの社会課題である。水不足の時代を迎えようとしている現代において、SATOが別な角度からの課題解決を示唆しているのではないかと感じた。

SATOのように簡易なものとはいかないだろうが、水の消費量が少なくて済みながら、現在の水洗トイレと同じ快適性や衛生を保てるトイレシステムが生み出されるなら、これもビジネスになりうるだろうし、水の消費量とその値段を考えるなら、これまでの水洗トイレよりランニングコストが減る分だけ、高い価格設定が可能になるのかもしれない。

このほかにも、アフリカの課題解決がそのまま別な角度からの日本の課題解決につながったり、あるいは将来の日本が抱えるであろう課題の解決が今のアフリカの課題解決であったりすると感じることは、訪問するたびに発見が増えていく。

アフリカというマーケットは、まだ多くの日本企業とビジネスパーソンにとっては縁遠いように感じるかもしれない。だが、今のビジネスモデルに限界を感じている日本企業が、アフリカを単なる途上国という目線で見るのではなく、ニュートラルなマーケットとしてみることが出来るなら、そこにアフリカでのビジネスチャンスを見つけることが出来るだろうし、日本での将来のビジネスモデルを発見することにもつながるのではないか。

アフリカに足を運ぶたびに、そういう確信が深まっている。

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