朝鮮半島をめぐる力の構造

26日午後に行われた南北朝鮮の首脳会談について、韓国の文大統領が27日の記者会見で経緯を明らかにしました。25日午後に北朝鮮の金委員長から連絡があり、翌26日に板門店にある北側の施設「統一閣」で会談に臨んだというのです。金氏は米朝首脳会談を所望し、朝鮮半島の非核化の意思を再確認したといいます。

北朝鮮の非核化でなく、半島の非核化という場合、韓国に対する核の傘の撤去も含みます。「まず北の核の撤去」を求める米国側との溝は残ります。それはともかく、興味深いのは北側が自らのメッセージを、韓国の大統領の口から語らせた点です。CNNで放映された文氏の会見は、あたかも北のスポークスマンのようでした。

それを承知だからこそ、先の米韓首脳会談でトランプ氏は文氏に対し、けんもホロロの扱いをしたのでしょう。会談前に記者団との質疑に36分の時間を割き、相手国の首脳をカメラの前で待たせた「カノッサの屈辱」はその典型。一方、金氏もトランプ氏に直接、会談復帰を希求するのは沽券に関わると思ったのでしょう。「韓信の股くぐり」の役は文氏に負わせました。

ともあれ、朝鮮半島をめぐる力の構造は改めてハッキリしました。米国vs北朝鮮であり、後見人も含めれば米国vs中国+北朝鮮となりましょう。これは朝鮮戦争の交戦国であり、板門店の休戦協議の当事者に他なりません。韓国はあくまでもセカンドティア。それに日ロを加えれば「6者協議」となりますが、安倍さんはロシアでプーチン氏と何やらを話し合っています。

改めて思うのですが、天下の形勢は陸奥宗光が日清戦争当時のアジア情勢を記した「蹇々録(けんけんろく)」の世界を彷彿とさせます。剣呑な権力政治の世界。少しでも油断すると、深い谷底が待っているように見えます。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO31021840X20C18A5MM8000/?nf=1

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