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泳げデータの世紀:「プライバシーのTPO」を考えて、息継ぎをしよう!


 「データの世紀」で、個人情報の取り扱いは大きな問題である。私も思うが、個人情報の取得技術の進化、進展が早すぎる。どこで、どのように個人情報を取られているのか、全てを明確に説明できる人がいないだろう。

 街には、該当の防犯用のカメラが増えているし、電車に乗るときはICカードを利用し、下車後にコンビニでも電子決済を行う。どこで、どんなデータが取られているのか、不安になることもある。

個人情報の利用の整理

 実は、この個人情報の利用であるが、私の経験から、その利用方法、分析の種類は大きく2種類がある、個人データを取るが分析は「個人単位ではなく、その属性別に行うもの」と「個人別に行うもの」である。

多くの場合、まだデータは活用できていない

 私は、マーケティングの実務で、データ活用を行っているが、個人情報の分析を個人別に行うことほど、難しいことはないと実感している。例えば、お客様の消費活動や、生活データから、そのお客様に相応しいシャンプーを作ることができるのかというと、今の私の答えは、「できない」である。今まで多くの企業は、大量生産、大量販売のビジネスを行ってきたのである。その企業が、個人情報を「個人単位で行う」ことは、まだまだ先の話になるのだろう。

 今、多くの企業で行っていることは、個人データを「属性別に行う」ことである。例えば、住んでいる場所ごとに、お客様のグループを作り、そのグループごとの消費活動を理解しようとしたりしている。いや、むしろまだ、どのような「属性に分けたら、理解しやすいか」データを眺めていると言っても過言ではない。つまり、実は、個人情報を「個人が特定できる状態」では、活用できていないのである。

 このような分析、活用だから、あなたの個人情報は安全だというつもりはない。個人情報を活用する側は、どのように活用するか、どのデータを活用するか明示し、個人情報のオーナーに許諾を取る必要があることは、以前からと変わりはない。その一方、個人情報の提供者の私たち一人一人も、「個人情報」だから「すべて利用はダメ」などと、思考停止に陥るのではなく、どのような活用なら許せるか考える時期に来たのである。

議論が必要な個人情報の扱い

 このような議論を行う時に、私が持ち出す比喩を披露しよう。あなたはいつも通っているお寿司屋さんと、コンビニエンスストアがあるとする。あなたは、寿司屋の職人とも、コンビニの店員とも十分仲が良い。ある日、お寿司屋さんで、職人から、「気に入るネタが入りましたけど握ります」と、言われたので、私はお願いすることにした。一方、コンビニエンスストアで、「気に入るお弁当が入りましたよ」と言われた時には、私はやや驚いた。
 このようなことは、確かに起きそうである。そして、実は、どちらも観察による個人情報を分析して、お客様に喜ばれる提案を行ったのであるが、一つは喜ばれ、一つは驚かれる。何が違うかといえば、場所が違うのである。

 つまり、個人情報の分析結果を活用するには、TPO、つまり、時、場所、状況を考慮しないといけないのである。

 現在、個人情報に関しては、法律やその運用というルール整備が主要テーマである。しかし、このルールの整備が完了したら、今度はこのような、個人情報の分析結果の活用のルールではなく、相手ごとに考えないといけない、TPOの議論になるだろう。そして、この議論には、このような個人情報を提供して、サービスを得る、私たちの議論が重要なのである。

 個人情報の活用は、「データの世紀」になり、全員で考えないといけないテーマなのである。個人情報の嫌悪感だけはなく、一度水面に顔を上げて、息継ぎをして、次の泳ぎ方を考える時期なのである。

 この記事に関する関連イベントがあります。良かったら、一緒に議論しませんか。

データの世紀 新時代のビジネスルール

2019/11/01(金) 19:30 ~ 21:30

SOIL(Shibuya Open Innovation Lab) (東京都 渋谷区 渋谷一丁目13番9号 渋谷たくぎんビル 7階)

[主催] 日本経済新聞社(COMEMO運営事務局)

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