言葉を話すのは人間だけではない 「鳥語」を解明した科学者の物語
こんにちは、電脳コラムニストの村上です。
ひさびさに心からワクワクする本に出会いました。あまりにおもしろすぎて、読後しばらく動けなくなるくらい。
なんの本かというと、鳥の言葉について。動物言語学という新しい学問のジャンルを創出した、東京大学准教授 鈴木俊貴先生による初の著書です。
研究内容が与えるインパクトが素晴らしいのはもちろんのこと、鳥の言葉を研究するに至ったストーリー、その後も一貫して「好きだから」という純粋な思いで行動し続けている点。そして、大発見を世界に伝えることを自身の使命として、さらなるインパクトを出すために考え抜いている起業家精神。本書では一貫してわかりやすい文章で綴られており、未知の「鳥語」について知ることができます。
鈴木先生を知ったのは3年ほど前に「鳥語発見!」のニュースが報じられたときだったと思います。その後、X(Twitter)でも精力的に発信を続けられており、わりと見かけるわりにシジュウカラのことは全然知らなかったなぁと思っていました。
言葉を使えるというのは人間だけの特権だと長らく信じられてきました。言葉により高度な知能を獲得した我々は、人間と動物という二項対立の中で暮らしてきており、ともすれば動物は人間より劣った生物であるという認識を持つ人も少なくありません。
本書の中で鈴木先生が最も尊敬する鳥類学者として、長谷川博先生が挙げられています。アホウドリを絶滅の危機から救った人物です。
ヒロシ先生(本書での表記を継承)と鈴木先生のやりとりで印象に残ったのは以下のくだりです。
学者といえば気難しく論理一辺倒な印象がありますが、根底にあるのは純粋な気持ちであることを端的に表したフレーズに目頭が熱くなります。長谷川先生はアホウドリという名前が(鳥に)失礼すぎるということで、『オキノタユウ』への改称を主張している第一人者でもあります。やはり、愛ですね。
鈴木先生からもシジュウカラ、そして鳥類への愛をひしひしと感じます。そして、根底にあるのは理解したいという純粋な思い。それが徹底的なフィールドワーク、観察という行動を生み出すのだと思います。共通言語がないからこそ、生息地で一緒に生活して観察をするしかないわけですね。
本書を読み終わってしばらくしてから思ったことがあります。
共通言語を持つ我々は、全然人の話を聞いていないし観察もしていなくないか?
SNSによりものすごいスピードで情報が行き交う時代になりました。また、ショート動画のブームにより「切り抜き動画」でタイパよく興味のあることを知れるようになりました。しかし、ちゃんと理解できているのか?というと疑問が残ります。
SNSによる偏向、いわゆりフィルターバブルは米国大統領選挙や兵庫県知事選挙でも指摘されており、国の動向を左右する力を持っています。米国ではX(Twitter)に続きTiktokも一人の民間人 イーロン・マスクの手によって運営されようとしています。鈴木先生の徹底的な観察という手法や鳥たちのコミュニケーションから、我々が学ぶことは多いなと思います。
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※ タイトル画像は ichiishi / PIXTA(ピクスタ)による鳥の素材と筆者撮影の書影を組み合わせたもの