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ファーストキャリア重視に変わる就活動向。優秀な若手人材の確保は重要な経営課題に。

皆さん、こんにちは。今回は「就職活動の変化」について書かせていただきます。

新卒採用において、コロナ禍で大きく変化したのは、オンライン採用などの採用手法だけではありません。
企業側が求める人材像だけでなく、就活生となる学生が企業に対して求めることも変わってきています。
就活情報を扱うサービスも増え、各企業のありとあらゆる選考における情報もオープン化されつつあります。
さらには学生のキャリア観や就活スタイルそのものも多様化しています。

昨今の就活事情を踏まえ、何がどのように変わっているのか、大きな変化を具体的に見ていきます。

■就職活動の大きな変化①「学生の行動と心理」

就職活動のオンライン化によって、一番大きな変化が現れたのは学生の行動です。

・エントリーする会社の数が増加
・会社説明会や採用イベントへの参加数が増加
・インターンシップの参加期間や参加社数が増加
・関東圏以外(地方や海外在住)の学生の応募数が増加
・就職活動開始時期の早期化(早くから就活を始める)
・就職活動期間の長期化(決まらない、または決めきれない)

オンライン採用への切り替わりは、今までよりも多くの企業に接触できるというメリットがある一方、情報過多の状況に陥ったり、就職先の選択肢を広げ過ぎて、最終的に意思決定をする際に“決めきれない”という状況を引き起こしているのです。

実際の行動だけでなく、学生の心理的にも変化が現れていますが、一番大きな変化は、“転職”を前提とした就職活動をしている学生が圧倒的に増えたことではないかと思います。

「生涯、働く場所としての就職活動」ではなく、「ファーストキャリアを積む場所としての就職活動」をしている人に多く出会います。もちろんそれが悪いことではなく、学生の価値観の変化の一つとして、企業の採用担当は正確にその事実を把握しなければならない、ということです。

企業を選ぶ際の判断基準として、最近増えている項目は以下のようなイメージです。

・働き方の選択肢が多い会社かどうか(リモートワーク/副業/時差出勤)
・社会的な役割や責任を果たせる会社かどうか
・自分の意思でキャリアを形成しやすい会社かどうか
・自分の市場価値を高められやすい会社か
・いざ転職しようと思った時に、快く送り出してくれる会社か

「転職する際に有利か」、または「転職しやすい会社かどうか」という判断基準を持つ人が増えてきたことは大きな変化の一つではないかと思います。

■就職活動の大きな変化②「面接の質問内容」

引用した記事には、

今の学生は『ガクチカ難民』だ」
学生時代に力を入れたこと、いわゆる「ガクチカ」は企業が問う定番の質問だ。アピールポイントを見つけ出そうと、学生はサークル活動やアルバイト、留学にと精力的に動く。しかし、コロナ禍でその学生生活にぽっかりと穴が空いた。

とありました。たしかにこれまで定番の質問といえば、「学生時代に一番力を入れたこと」でした。

・ゼミやサークル活動、部活
・アルバイト
・学園祭、文化祭などの学校行事
・長期インターンシップ
・学生起業
・留学

など、自分が頑張った経験は、企業に対してのアピール材料になることは間違いありませんでしたが、これらに制限がかかり、十分な活動ができなかった状況を考慮し、最近は「何をしたか」よりも「どんなことを考えているか」という、学生の思考をより深く知ろうとする質問に変化してきました。

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・「留学に行けなくなってしまったことでどう思いましたか?」
・「そしてどんな行動に移しましたか?」
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・「大会で優勝を目指していた中で試合が開催されなくなって、どんな気持ちでしたか?」
・「大会中止を受けて、チームの中でどんな取り組みをしましたか?」
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・「コロナ禍での学生生活を経て、どんなことを感じましたか?」
・「この経験を将来、どのように活かしたいと思いますか?」
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など、コロナ禍で制限や制約がある中で、学生がどんなことを考えているか、また、その中でどのような行動に移したかによって、学生一人ひとりの考え方や行動特性を知ろうとする質問が増えてきています。

ただただできなかったことやあきらめたことを嘆くのではなく、「その代わりに違うことに挑戦した」とか、「この経験をこういう形に変えようと思った」などとポジティブに捉え、行動する人の評価は当然高まります。

■就職活動の大きな変化③「企業側の採用基準」

採用人数などの採用計画の変更を余儀なくされた企業はありますが、採用基準については、コロナ前後で「変更なし」という企業の方が多いのかもしれません。
ですが、無視できないのはデジタルトランスフォーメンションの動き。
新卒採用市場においてもDXの波は確実に押し寄せていて、IT企業以外にも社会の急速な変化に対応するために新卒社員をDX人材に育てようという流れが出てきています

「DX人材」と言っても、システム構築やプログラミングをする人だけを指すわけではなく、デジタルに関する知識やノウハウを持つ人材全てを指します。(エンジニア、プロデューサー、プロジェクトマネージャー、デザイナー、ディレクター、アーキテクト、データサイエンティストなど)

DXを単なるデジタル化ではなく、「業務プロセスや事業モデルそのものの変革」とするならば、どのようにDX化を進めていくのか構想し、全体的な戦略を描ける人材が必要なことは間違いありません

DX人材不足問題は深刻で、即戦力となる中途採用の人材だけでは必要な人員を確保しきれない状況もあり、高額な報酬を提示して優秀なDX人材を新卒から採用していく動きはさらに加速していくはずです。今後は、各企業の課題感として、「DX人材の採用」だけでなく、「DX人材の育成」にシフトしていくことが想定されています。

■就職活動の大きな変化④「就職先の最終意思決定」

引用した記事に、

就職情報会社のディスコ(東京・文京)によると、今年10月時点での22年卒の内定率は88.4%。21年卒から0.2ポイント下回った程度で、全体として新卒採用は堅調にみえる。しかし、同社の7月の調査では「志望業界の変更を余儀なくされた」と回答した学生が2割弱にのぼった。第1志望の業界を断念した学生も少なくない。

とあるように、志望業界の変更を余儀なくされたことで、内定が出たとしても最終的に絞り込む段階になって、何を持って判断すれば良いか分からなくなってしまう就活生によく出会います。「本当にそれは自分のやりたいことなのだろうか」、「数回のオンライン面接でしか社員に会っていないのに、本当に就職先を決めてしまっていいのだろうか」と悩む就活生は多く、さらには、「万が一内定が取り消されたら困るから複数の内定を持っておこう」と、内定承諾後も当たり前のように就職活動を継続する学生も増えています。

また、最近は「親の意見」を意思決定に反映させる学生も少なくありません。私も一人の親としては、「大学生になってもちゃんと親の意見を聞くなんて、素晴らしい子!」と思う反面、この“親ブロック”とも言われる状態を回避することができずに、本人の意志に反して別の会社を選ぶという状況を目の当たりにすると、なんとも複雑な気分になります。今の就活生の親は就職氷河期を経験した団塊ジュニア世代が多く、就職活動の大変さを知っている分、我が子の就職先にもついつい口を出してしまう人が多いのでしょうか。

先ほども述べた通り、就活生は転職を前提にして就職先を決める傾向があるため、やりがいや働きがい、自己成長の実現に重きを置きますが、終身雇用を前提にしている親世代は今も変わらず“安定した大企業”を求めがちです。
この傾向はコロナ禍を経てより一層強くなってきており、親世代と子ども世代との価値観のギャップは広がっていく一方です。

■就職活動の大きな変化⑤「情報収集の仕方」

就活時における情報収集といえば、「各企業のホームページ」や「採用媒体」を通じて得ることが多く、実際には「会社説明会」などに足を運んで情報を得ることが一般的でした。

最近は、「各企業のSNS」や「オウンドメディア」、「動画媒体」などを通して、会社の雰囲気や社員の人柄が分かるような、より“リアル”な情報を入手したがる学生が増えています
対面で社員と接する機会が著しく減少したことで、一方的にオフィシャルに発信されるものよりは、実際に就活生が本当に知りたい情報がカジュアルに発信されているような場が求められているのです。

とは言いながらも、ネット上には残念ながら正しくない情報も溢れています。
情報収集を上手に行うポイントをいくつか記載します。

・情報収集先は必要以上に増やさず、目的に合わせて手段を選択する。
・IR情報や決算発表資料などのファクトに目を通す。
・自分の目で見たものを「正」とし、嘘の情報に惑わされない。自分の価値観で判断する。
・情報は多面的、かつ客観的に見る。
・情報を隠そうとする会社は、何かが怪しいと疑ってかかる。
・自分が一番知りたい情報は、直接企業の社員に聞く。
・企業の“雰囲気”や“風土”は自分の肌で感じ取る。

就職活動における情報収集は「意思決定をするための材料集め」であって、「どれだけ多くの情報を得るか」がゴールではありません。「自分にとって必要な情報をどれだけ精度高くインプットし、それをアウトプットにつなげられるか」の方がよほど重要です。

就活生と接していると、どこかで見聞きした情報を鵜呑みにしてネガティブに会社を見たり、情報を得ることだけに必死でせっかく得た情報を自分なりの言葉でアウトプットすることができなかったりと、とてももったいない場面を目にすることが多々あります。情報は点ではなく多面的に捉えながら、自分にとって何が重要か、何が分かれば就職先を決められるかを明確にすることが大事ではないかと思います。

また、採用情報や企業情報を発信する企業側は、学生が本当に知りたいことは何かを常に考え続ける必要があります。上辺だけのキレイごとは簡単に見抜かれてしまうのが、今の時代の就活生です。中長期的な戦略やビジョンも大事ですが、コロナのような未曾有の出来事に遭遇した時の、企業としての“変化対応力”や“適応力”を、よりシビアに見られるということを意識しておかなければならないと思います。


最後に、これまで述べてきた通り、就活市場は大きく変化し、今まさに転換期を迎えています。

もしこれまで新卒採用や中途採用ともに全てうまくいっているような企業であったとしても、このような変化を的確に捉え、絶えず採用プロセスや手法を見直していかなければ、急に人材確保が難しくなってしまうということもあるかもしれません。

アフターコロナはさらに世の中も変わっていきます。新卒採用においては「企業が学生を選ぶ」のではなく、「学生が企業を選ぶ」時代になりつつあります。さらに「学生を採用して終わり」ではなく「入社後にいかに活躍させられるか」にまで責任範囲を広げ、経営目線で“採用”を考えていかなければいけないことは明らかです。

それはもはや人事だけの課題ではなく、経営者やマネジメント層が向き合うべき重要な経営課題の一つといえるのではないでしょうか。


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