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エンタープライズセールスの作り方"初回商談"編

エンタープライズセールスが多く輩出された前職では新卒が3年で売れ出し、5年で独り立ち、売れる営業の層ができていました。やはり、営業組織でも「知の共有」は重要です。

その過去を思い出しながらしたツイートが以下でした。

もう少し詳細を聞きたいというお声も頂戴したので、何記事かに分けて「新人をエンタープライズ営業として独り立ちさせるまでの育成メソッド」の一例をご紹介させてください。

前回ご紹介したのは「商談の前」まで。

今回はその中編として「商談の進め方」をご紹介します。


初回商談ロープレ

初回商談のロールプレイ、つまり現実の初回商談を想定して、新人は営業役、上司などがお客様役を担います。ここで学ぶのは、まずはストーリーテリングなサービス説明です。

①ストーリーテリングなサービス説明

ストーリーテリングなサービス説明とは、「説明が全て一貫してつながっていて、物語のようになっている」説明です。

ここでいう「ストーリー」は、小説のような描写やセリフを求めるものではありません。例えば、私は以下のようなストーリーのパターンをよく使います。

こうして「会社概要」から、機能の差別化ポイントまで一貫してつながるようにしゃべっています。そのために、必要なのは「このストーリーに重要でない内容は全て削る」こと。

それは「ストーリーになっていないと、お客様はすぐに忘れてしまうから」です。商談後に覚えていてもらえないどころか、こちらがしゃべったそばからその内容はすべて忘れ去られます。

少なくとも、そう思って少しでも覚えてもらえるように準備と工夫がマストです。

まずは一方通行でいいので、話す内容に一貫したストーリーをつけた台本を用意してお客様役を相手にしゃべりきるところから始めて、次にお客様からの「あるあるな質問」にスムーズに対応できるようにします。

②あるあるな質問や顧客対応

これは初回商談で「どう話すか」だけでなく、「あるあるのお客様からの質問」に答える練習(オブジェクトハンドリング)です。

チーム内で先輩と実施したり、会社全体で新人研修として実施したりします。

基本的には「お客様」役の人が、「営業」役に対して、あるあるの質問をいくつかのパターンにわけてぶつけ、それに対して、スムーズに返答できることを目指すものです。

個人的には、以下のような質問は最低限網羅することをお勧めします。
①いくらなの?
②競合のXXと何が違うの?
③今使ってるツールを使いこなせてないから、その改善してから検討します

参考までに私が回答する場合は、以下のようなものになりそうです。「なんでこう答えたの?」などわからないことがあれば、ぜひコメントなどで教えてください。

①いくらなの?
→「正確な提案金額をご提示したいので、次回にXXを教えていただき、提案範囲を議論しませんか?」

②XXと何が違うの?
→「差別化のポイントはXXで、まだその辺りしっかりお伝えしきれてないので、次回深掘りしてご説明したいと思います」

③今使ってるツールを使えこなせてないから、その改善してから検討します
→「どこが根本課題かわからないので、一回貴社の状況踏まえて提案の順番を議論しながら、整理しませんか?」

※ちなみに、営業戦略上の必要に応じて、商談ロープレの応用編として「役員ロープレ」をすることもあります。興味がある方が多ければ記事化をしようと思うので教えてください。

製品デモの実技テスト

営業担当も製品のデモができるようにします。自社のプロダクトの使い方すら語れない営業がいますが、これは言語道断です。

しかし意外と語れない営業がいるのは事実。なので、もし操作方法を一から説明できないかもとドキッとした場合は、必ずできるようにしてくださいね。

お客様を理解する
一般的な使い方が説明できるようになったあとは、営業先のお客様の具体的な業務に合わせてデモを行えるようになってください。

結局「ウチではどう使えるの?」とお客様に理解してもらえなくては検討が進みません。

そして、本気で準備するためには、お客様の業務をきちんと知る必要がありますよね。結果的に、深くヒアリングすることになり、お客様を理解できるようになります。

この過程は、営業が長期的なパートナーになるために欠かせません。

デモの実技テスト合格が昇格条件に
なお前職では、そもそもデモンストレーター(デモのプロ)という役職がありました。

そして、そのデモンストレーターがお客様役として、実技だけでなく、あるあるの質問に答えられるかもチェックする。そんなテストで合格できるかが昇格条件の一つにありました。

製品の研修などはしていても、デモまでできるかというとそうでもない新人も多いと思うので、積極的に取り入れるのがおすすめ。

顧客の反応パターンの科学

お客様の性格の捉え方は色々とありますが、4つの反応パターンに分ける考え方があります。

そのパターンによって営業の手法や、そもそもカウンターパートにするべきかの優先度が変わるので、その把握も営業メソッドの一部にありました。

それが以下の4つです。

I. 成長思考型

「こうしたい!」という思いがあるものの、そこに自社の現状が及んでいない。そのため、なんとか理想にたどり着きたいと考えているタイプ。

営業を進めやすい相手なので、理想を聞いて、理想に近づいたり、理想を越える提案を進めるべし。しかし実際のところこのタイプの人は割合としては多くない。出会えたらラッキーと捉える。

II. トラブル型

「いまはここがマズイ!」と考えているタイプ。理想に比べて自社の現状が及んでいないので、その課題に目が行っている。具体的な課題=痛みとして感じている場合も多く、営業を進めやすいのでその課題の原因から一緒に話を進めるべし

Ⅲ. 平静型

「特に何も感じていない」というタイプ。このタイプは意思がなく、自社の改善にそこまで興味がない場合が多い。しかも、私の経験上、多くの会社員に当てはまる。

このタイプには「同業他社の数は最近はXXに取り組まれて、1年前の状態とは様変わりしてますね」という例を語って焦りを感じてもらうべし。

ただし、興味がないので焦ってくれない場合も多い。慕ってくれるけど、案件が全く進まない時は平静型と疑うべし。平静型にとらわれずに成長思考型・トラブル型をお客様の会社の中で探すのも一手。

Ⅳ. 自信過剰型

自社の現状=理想だと思っているタイプ。経営層・役職者に多い。このタイプにいきなり「御社はここが課題ですね」と伝えると、出禁になりやすいので要注意。

私がこのタイプを切り崩すために「なんでそんなうまくいってるんですか?その秘訣をぜひ教えてください」と褒めちぎること。そうすると、相手は謙遜から「いやいやそんなことなくて実はね...」と語り始めることが多い。

もちろん、すぐに受注は狙わずに相手が何か課題を感じるまでは、積極的な提案を保留するのも手。

組織力学の把握と可視化

商談準備で相手の組織の力学を頭に入れておくと、以下のことがわかります。

とはいっても、想像だけで理解するのは難しいと思い、実例を示しながら解説したnoteはこちらです。

ちなみに、「組織力学の把握なんて、新人でもここまでやるの?」と聞かれることもありますが、やります。むしろ徹底的にやります。

(前回のnoteですが)これでも実際よりもマイルドですと前職の卒業生が言っているくらいの内容です。

コンペ誘発しない差別化意識

商談時の説明で気を付けたいのは「そもそもコンペされないような説明」です。

商談中、他社の話をしていないのに、営業側から「●●社ってみてます?」のように、お客様の中で検討にあがっていなかったのに話題に挙げたことで、むしろ競合として出てきてしまうこともあります。

詳しくは「値引きを避ける10箇条の掟」というnoteに書きましたので、値引きやコンペを防ぐ方法が気になる方はご一読ください。

価格の提示タイミングや方法

お客様から価格を聞かれると、すぐに答えたくなりませんか?個人的には、価格を出すのは「価値をお客様が理解し、要件がある程度決まった後」です。

「いいから先に教えてよ」と言われる場合も、「中身をお伝えしきれていない段階で価格だけで判断されるとお互い不幸になるので、XXの内容を議論した上で金額含めてちゃんと提案をさせてください」と、慎重に答えています。

例えば、〇〇サービスは月額50万円、XXサービスは月額1万円だとして、もしこの価格だけ見たら、「じゃあいったんXXサービスでよくない?」と判断される可能性が高いですよね。

ただ、格安のXXサービスは、導入してみたら、実は欲しい成果に対して機能不足でそもそもの課題が解決できない...なんてことも意外とあります。

すると、格安サービスを検討→導入していた時間が無駄ですし、その分のお金や機会損失も考えると、お客様にとっての無用な損失は計り知れません。

なので、しっかりとお客様の中での要件を固めたり、機能説明をしたりしたい...のですが、現実的に「価格を早めにいわないことで失注」しては営業としては元も子もないので、以下のようなチャート図のように考えています。

詳しくは以下のnoteに書いていますので、興味がある方はぜひご一読ください。

終わりに(最終回へ続く)

今回は営業の育成の中でも「商談の進めかた」について、ご紹介をしました。

次回は、最終回として「商談のあと」についてご紹介するので、できればnoteやTwitterをフォローしてお待ちください。

RightTouchではまだまだ創業メンバーを募集中で、成長できるフィールドは山のようにあります。

エンタープライズ営業も含めて、こんな環境で少しでも働いてみたいと興味を持っていただいた方は、ぜひ応募をご覧いただき、カジュアルに話しましょう。


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野村修平
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