後悔しないキャリア選択:「60歳の自分」と「周りの反対」を判断基準に
日本の転職率は現在約60%と言われています。以前と比べると日本における転職は珍しいことではなく、ごく普通のことになってきています。
日経ヴェリタスの記事でも「転職希望者が1000万人の大台に迫る。日本の就業者数6787万人(9月時点)のおよそ7人に1人にあたり、実際に転職をした人の数でみても年間に100人中4〜5人が転職していく計算になる。」と書かれています。
私自身、2002年に新卒でインテリジェンス社(現 パーソルキャリア)に入社し、人材紹介業に約1年間関わっていましたが、既に当時転職するということに対しての抵抗は少なくなり始めていたと記憶しています。それから約20年間、転職市場は大きくなり続けています。とはいえ、世界と比較してみると、2023年6月27日時点での調査で、日本の転職経験率は59.7%で、転職未経験者の割合は40.3%です。欧米の転職経験者の割合はイギリスが92.7%、アメリカが90.1%、ドイツが84.2%となっており、日本は最下位なのです。
転職をする・しないに良し悪しはありませんが、選択肢としての「転職」というカードを持っていることは重要だと考えています。
日本経済新聞とnoteが共同で開催している「仕事や働き方」に関するお題企画で、自分の転職体験記をシェアする投稿募集があったので、今回は私の転職体験記について振り返ってみたいと思います。
私の転職歴
私のこれまでのキャリアは下記のようになっています。
2002年4月 インテリジェンス社(現パーソルキャリア社)に新卒として入社
2003年3月 アマゾンジャパンに転職
2009年7月 起業のためアマゾンジャパン退社
2009年7月 Orinoco株式会社 創業 (現Peatix)
上記の通り、新卒1年目の後半にインテリジェンスからアマゾンジャパンに転職したのが最初で最後の転職となっています。(次は起業なので)
では、私はどのようなことを考え、転職を決めたのか。その時にどのように考え決断したか。それは今でもはっきりと覚えています。
新卒時-転職のきっかけ
新卒で入社したインテリジェンス社では、エクスペリエンス社というグループ会社に配属され、配属先のエクスペリエンス社の社長は当時25歳、社員数も15名ほどで、まさにベンチャーという感じでした。大きな不満があるわけでもなく、時間を忘れがむしゃらに仕事をしていたことを覚えています。今だとブラック企業などと言われるのかも知れませんが、周りの先輩などにも恵まれ、当時朝から夜中まで没頭して仕事をすることに大きなやりがいを感じており、大変な中でも充実して時間を過ごしていました。
また、私が学生時代を過ごしていた2000年頃、世の中には多くのスタートアップ企業が誕生し、渋谷エリアはビットバレーと呼ばれ熱量に包まれていました。そのような中、私はいつか起業したい、起業するんだと考えていました。そうした思いから、サイバーエージェントの藤田さんを輩出し、ベンチャースピリットを持ったインテリジェンス社への入社を決めた経緯がありました。そして、その中でもさらにベンチャーの気質が高いグループ会社に配属され、まさに得たいと思っていた経験を得られる日々を過ごしていました。
そのような状況の中、なぜ就職から1年に満たない時に転職を決めたのか。
インテリジェンスは私が入社したタイミングでは、特定のエリアを専門領域とするグループ会社を複数持つ戦略を展開していましたが、入社した年の年末頃に方針が変わり、いくつかのグループ会社は本社に吸収する決定が下されました。その流れで私が所属されたエクスペリエンス社も本社への吸収が発表されました。この決定に対し、若気の至りかも知れませんが、違和感と不満が事実ありました。そして、そのことが転職を考えるきっかけになったことは確かです。
私の転職の判断基準
インテリジェンスでは裁量も与えてもらっており、優秀な先輩たちから多くの学びと刺激をもらいながら過ごしていました。常に起業する時に必要となる経験を得られる場にいたいと考えていた自分にとって、当時最良の選択だとも考えていました。
前述の通り、本社による配属先を含むグループ会社の吸収が転職を考えるきっかけではありました。しかし、(私の場合は起業も含みますが)転職に関しては、当時から2つの基準を持っていました。
1. 60歳になった時に後悔しない選択
私は学生時代から起業したいと考えており、グローバルで見た時に、当時最も成功した起業家の一人であったAmazon創業者ジェフ・ベゾスは憧れの存在だったこともあり、関連した書籍も色々と読んでいました。そのベゾスはAmazonを創業する前、ニューヨークの大手ヘッジファンドにて、4年で副社長の座まで上り詰める成功を収めていました。そのベゾスが大きな成功の道を捨て、なぜ新しい挑戦に乗り出したのか。その時の判断基準として、「歳を取った時に後悔しない」ことを考えたと言います。当時急成長の兆しを見せていたインターネット業界へのチャレンジを自分がしなかった場合、必ずや誰かが成功を収めるであろう。挑戦するチャンスを見逃し、やらないことで、将来必ず後悔をするだろう。それであれば挑戦するという選択肢以外はあり得ないと考えたのです。
このベゾスの考えは、今でも私の中の判断基準の1つになっています。
「60歳になった時に後悔しない選択」をする
いつか起業したいと考えていた自分にとって、世界最大規模のスタートアップ企業であり、稀代の起業家ジェフ・ベゾスが創業したAmazon社に入り、ビジネスの考え方・動かし方を学ぶことはかなり魅力的でした。そして、Amazonの日本支社であるアマゾンジャパン社は支社創業からまだ数年しか経っておらず、当時まだ社員数が150人ほどでした。そのような環境に身を置けるチャンスはなかなかありません。インターネット創成期に最も面白い打ち手を繰り広げるAmazon社に入らなければ、60歳になった時に後悔する。そのように考え、インテリジェンスを辞め、Amazonへの転職を決めました。
2.周りの知人や親からの反対
そしてもう一つの決断の基準としては、自分の選択に対し、周りがどのように反応するかです。一見、周りの反応を気にするのはどうなのか?と思う人もいるでしょう。しかし、見方を変えると、この周りの反応こそが一つの判断基準になるのです。
このことは以前、日経COMEMOの記事にも書きましたが、Amazonに縁をいただき転職のチャンスを掴んだ時、周りからは大きな反対がありました。
「成功が難しい領域になぜ行くのか」
「ネットバブルはもうはじけている」
「外資だしすぐに離職に追い込まれるのではないか」
など様々な反対意見がありました。
インターネットの領域に大きな可能性を感じていた私は周りに対し、その可能性について説明し、自分の決断が揺るがないことを伝え、入社を決めました。「もうダメだろう」と言われていたAmazonのその後に関しては皆様のご存知の通りです。大切なことは
周りの知人や親が反対するのであればそれはポジティブなサイン
であるということです。誰もが賛同する企業やマーケット・業界はそのタイミングでは安定もしており一見良い選択肢に思えるかも知れませんが、成熟している状態なので、そのタイミングで入社し自分が作りあげていくのを実感するのは難しいですし、何よりこれから大きく成長する新しいビジネスに関われる可能性は高くはないのです。
まとめ
「転職」それは簡単ではないことであり、どのように判断するか迷いも生まれることでしょう。そのような時、自分自身にとって判断基準を持っていると納得のいく判断をすることができます。
私の場合、転職や起業をするか考える時に下記2つの基準で判断しています。
1. 60歳になった時に後悔するのはどちらの道か
2. 周りの知人や親が反対するか
こうした基準を持つことにより、後悔のない道を進んでくることができた。そのように考えています。
皆さまも是非ご自身の判断基準を言語化し、後悔のない道を進んでいただければと思います。