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サカナクションに学ぶコミュニティ醸成の極意:種火からキャンプファイヤーへ

ライブ会場でファンが一体となる高揚感を感じたことはありますか?

先日、サカナクションのライブに行ってきました。私が参加したサカナクションのライブは、ボーカルの山口一郎さんが体調不良のため、2022年7月から休養を取っていましたが、その後約2年ぶりの全国ツアーの2日目のライブでした。“完全復活”を告げる2年ぶりの全国ツアーはファンにとっても待望であり、始まる前から会場の熱量は高まっていました。

今回のライブ、そしてコロナ禍に入った時からサカナクションがつくってきたファンとのつながりの取り組みを通じて感じた「コミュニティが醸成される熱の高め方」について考えてみたいと思います。

ライブで感じるエネルギー

今回の全国ツアーは、2年ぶりの「復活」がテーマだったこともあり、開始前の会場アナウンス(本人たちの声ではない)が流れただけで、大きな歓声が上がるほどの熱気でした。久々に揃ったメンバー5人が登場すると、いつも以上に大きな拍手と温かい歓声に会場は包まれました。

そして曲の演奏が始まり、ライブが進むにつれて、会場の一体感が高まっていくのを感じました。その一体感は会場の中で増幅され、心に響くパワーとして感じることができるものでした。一体感は実際に目に見えるものではありませんが、そのエネルギーをはっきりと感じることができたのです。

コロナ禍で高まったオフラインの場の価値

ライブで感じるエネルギーが何であるか、どのように高まるのかを紐解いていく前に、この数年間を振り返ってみたいと思います。

2020年から人々が自由にオフラインで集まりにくい期間が約3年間続きました。人と会えない期間に「オンライン」の活用の幅は一気に広がり、会えない状況下でも、人々のコミュニティ活動、家族や友人とのつながり、ファンとのつながりなどをオンラインの場が支えました。一方でオンラインのみでの活動が続くと「オンライン疲れ」という言葉もよく聞くようになりました。

オンラインでの活動の期間が長くなると、オフラインでの対面の価値がコロナ禍以前と比べて大きく高まりました。人々のオフラインの場への渇望は日に日に大きくなっていったことを覚えています。長期間の隔離やソーシャルディスタンスが続いたことで、人々は直接的な人間関係や対面での交流の重要性を再認識しました。オフラインの場での直接会って行うコミュニケーションの価値がより一層重要視されるようになりました。また、リモートワークやオンラインイベントが広く普及した結果、オフラインの場での活動にオンラインの利便性を取り入れるハイブリッドモデルも増加しました。例えば、会議やイベント、ライブが現地での対面とオンライン参加者を同時に両方受け入れる形式で行われるようになりました。

コミュニティ醸成=焚き火を焚くこと

さて、また話をライブでのファンの熱量に戻したいと思います。

オフラインのライブはファンにとってはハレの場であり、ライブ会場でのファンの熱気は焚き火に例えるとかなり大きな炎であり、いわばキャンプファイヤーのような状態になっていると言えます。キャンプファイヤーを取り囲むファンの個々の熱量、シンクロによって炎はより大きくなっていきます。今回私が参加したライブでは、本当に大きく高い温度の炎、キャンプファイヤー(=熱狂) だと感じました。

では、この大きなキャンプファイヤーの炎はオフラインの場であれば自然と発生するのでしょうか?

私の答えとしては「No」だと思っています。

焚き火を、高さがあり熱量のあるキャンプファイアーにするには、しっかりと「種火」から育てていく必要があるのです。「種火」がなければ、いくら立派な薪をくべても火はつきません。日頃から「種火」を大事に育てることで、コミュニティ、ファンの温度がゆるやかに高まり、ライブという場において、大きなキャンプファイヤーになるのです。

サカナクションは、コロナ禍にちょうど突入した2020年2月29日から過去のライブ映像をYouTubeで配信する「#夜を乗りこなす」というライブ映像配信企画をスタートしました。Real Soundの記事の中で、"ライブ映像配信はファンの士気を高めるだけでなく、これを機にサカナクションに出会う新たなリスナーの存在も見据えているのだろう。"と書かれているように、まさにライブ映像配信企画により、オフラインのイベントに向けての素晴らしい種火がオンラインの場で育てられていたのです。

サカナクションもツアーが延期となり、思うような活動をできない現状がある。そんな折における「#夜を乗りこなす」ライブ映像配信はファンの士気を高めるだけでなく、これを機にサカナクションに出会う新たなリスナーの存在も見据えているのだろう。

Real Sound

さらに今回サカナクションは、ライブの直前の週にリハビリ歌唱配信と称してオンラインでの生配信も実施しました。その生配信を見て感じたのは、種火から少し大きな火に変わる感覚です。種火がいよいよ燃え上がる感覚、高揚感がありました。

丁寧に種火を育てていたことに加え、直前にも温度が高まるオンライン配信があったことで、当日オフラインのライブに集まったファンの熱量がグッと高くなり、大きなキャンプファイヤー、つまり熱狂になることで会場を温かい空気で包んだのだと思います。

そして、温かいファンの気持ちに包まれた炎は、ライブ後に炭火となり、熱を持ち続けます。その炭火が種火となり次の焚き火につながっていき、ファンコミュニティが醸成されていくのです。

まとめ

今回、サカナクションのオフラインのライブに参加した際に、本当に熱量が高く、空気が温かいのに感銘を受けました。そして、その温度と空気こそがファンコミュニティが育っていく息吹なのだと感じました。
最初は、2年ぶりの復活ライブであったことが熱量が高まっている大きな要因だと思っていましたが、ふとサカナクションの最近の活動を振り返った時に、コロナ禍に入った時からのファンとのつながりを継続するための種火を生み育てる活動を思い出しました。

そこから、コミュニティの醸成は、焚き火と一緒だということを改めて認識したのです。
種火を生み、育てることで、ハレの場を大きな熱量に包まれるキャンプファイヤー(熱狂)にすることができる。そしてキャンプファイヤー後は炭火となり熱量が継続していき、次の種火に、そして焚き火につながっていく。これこそがコミュニティが醸成されるメカニズムなのです。

今回は、サカナクションの活動を通じて、コミュニティ醸成の本質に触れることができました。コミュニティの熱量を高めていく上で重要なのは、オンラインとオフラインをうまく活用し、焚き火を育てていく感覚であることを改めて学ばせてもらいました。


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