円安抑止の処方箋~対内直接投資~
23年末の対内直接投資残高も順調
目下、円安抑止策を問われることが増えています。この点に関しては過去のnoteで沢山議論しておりますが、選択肢は実のところ、それほど多くありません。しかし、その中でも長期的且つ国の形を変え得る一手として対内直接投資の促進はやはり外せません。過去にも議論させて頂いているところですが、より戦略的に議論を深めてみたいと思います。
岸田政権は対内直接投資残高の目標として「2030年までに100兆円」を掲げています。これは昨年6月の「骨太の方針」に明記されています:
正式な「対外資産負債残高統計」は5月末の公表を待つ必要がありますが、対外資産負債残高の四半期推計(一次推計)によれば、2023年末の対内直接投資残高は前年比+7.5%の49兆6460億円と増勢が維持されています:
2014年から2023年の10年間に関し、対内直接投資残高の伸び率を平均すると年+9.9%程度です。仮に、2024年以降もこの伸びが続くと仮定すれば、2030年には約94兆円、2031年には目標の100兆円を突破する計算になります。100兆円は簡単ではありませんが、不可能ではない絶妙なハードルと言って良いでしょう。また、既報の通り、半導体製造工場を筆頭に対内直接投資のニュースは頻繁に報じられているところであり、これまでの伸びを超えた動きも予見できるものです。象徴的な企業が台湾のTSMCですが、関連ニュースは多過ぎて、日経電子版でもまとめサイトができています:
過去2年間の円安を通じて「安い日本」が極まる中、2030年を待たずに100兆円に到達する未来もあるでしょう。
アジアマネーの存在感が高まった10年
順当に増勢を維持している対内直接投資ですが、どこの国・地域がどこの業種に対して実行しているものなのでしょうか。直接投資への期待は大きいものの、意外と掘り下げられていない議論だと思います。
まず、国・地域別の対内直接投資残高について、主要国・地域の比率推移を見たものが以下の図表になります:
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