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古典的話題である「友達って何?」

「友達って何?」という話題は、誰でも幼少の頃から考え、議論が伯仲する大問題ではないでしょうか?

それなのに、何十年間も生きてても、人生論ほどには友人論が話せないはずです。

なぜでしょう?

ロンドンに同時期に留学していた3人の女性デザイナーが話す、Snacks for Thoughtというポッドキャストを聞きました。11月1日にリリースした回で友達を多角的に話しているなかで、1人がこう語ります。

特定の個人とかの噂話とかじゃなくて、友達とはとか、フレンドシップとはっていう風に話す機会って、社会的にすごい少ない気がしてて、なんかね。自分になかでそれを語るボキャブラリーが、引き出しがあまりないなって感じたんだよね

このセリフを耳にして、「確かに!」と思ったぼくは、自分の引き出しに何があるかと考え始めたのです。こんなにも素朴な、今さら感のある問いーアリストテレス『二コマス倫理学』では2つの章を友愛にあてているーをネタにもってきた理由です。

咄嗟に浮かんだのは、イタリアに住み始めた頃、ボスの息子が何気なく放ったフレーズです。

よく、人は、あの人が友達ならただで気安く紹介してくれるよね、と期待してくる。反対だよ。友達ほど長い時間をかけて投資するものはないんだ。だから、それに見合う配慮をしてもらわないと困る。

その頃、彼は20代の青年でしたが、見事な見識だと思いました。友達を無形資産とみているわけですね。いや、多くの人は紹介を頼む相手の腹は無形資産がゆえに傷まないはず、と思い込むのですね。だから、青年は「胸に痛みを感じてくれ」と言いたかったのです。

イタリアはラテンの国として「友達」という言葉を気安く使う文化圏だと思っていたぼくは、彼の言葉にかなり衝撃を受けました。イタリアの文化をなめちゃあいけないと気を引き締める契機になりました。

次の例はやや一般的によく聞くセリフです。誰のというよりも、あの人もこの人も同じことを言っている。特に、日本よりもヨーロッパで聞きます。

離婚してからも、お互い、よく会っているよ。子どもがいるからだけじゃなくてね。結婚していた時よりも仲がいいくらいで、結局、友達なら最高なんだよ。でも、夫婦という役割にあてはめるとうまくいかなかった。それは離婚して分かったんだよね。

これは、ぼく自身は経験していないので実感がありませんーただ、奥さんのことを親友とも思っています。

青春時代によく語られる「男女の間の友情は成立するか?」とは違った次元で、離婚後の元夫婦の友情があるだろうと想像できます。共に困難な局面を戦った戦友的な要素もあるのかな、とも思います。

これを少し広い範囲に応用すると、一定期間何かを一緒にやり、お互いの凹凸がよく分かった上での友達は安定感を生むということです。その意味では、友達ができるのは学生時代までで、それ以降は損得が入るので友達になりにくい、というフレーズに賛同しません。逆ではないか、と。

三つ目は、親しい友人がよく話す方針です。

友達だからこそ、相手のプライバシーには深く踏み込まない。

この方針はよく守られています。微妙なところにいきそうな時、スルリと会話が逸れます。そのたびに、ぼくは、これだから彼とは友人でいられるのだと安堵を覚えます。

で、友達についてのぼく自身の「名言(?)」ってあるのだろうか、振り返えります。だって前述はすべて人の言葉ですからね。ぼくの言葉はないかも・・・。馬鹿みたいですが、ここに至って、人との関係について語り過ぎる人が苦手だったと思い出したのです。

「私はこういうタイプで、人からはどう見られている」と自分語りが好きな人の話を聞いていると、Aさんはそう思ったかもしれないけど、ぼくはそう思えないから、それを自分への評価として他人に説明するのはどうなの?と思うのですね。

「あいつは友達だよ」と言うので、指し示しめされた人に「そうなの?」と確かめると、「友達というほどでも・・・」ということがありますね。この手の話と同じで、人の関係風景は主観によって成り立ちます。あるいは、あえて言えば、友達であるかどうかは瞬間風速的なものです。

だから、友達の定義や教訓はほどほどにしておくのが適当なのでしょうーというわけで、引き出しも多すぎないくらいがちょうどよく、「飲み友達」というやや揶揄もある表現が成熟した印象を残します。

当初は知名度が低いのでお客さんは飲み友達中心だったが、2年目から徐々に顧客が増え生産が追いつかなくなる。設備の都合上、1週間に1回、250リットルをつくるのが精いっぱいだからだ。

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冒頭の写真はMarino Marini (1901-1980)のPeople (Le couple) というタイトルの作品です。ミラノにある900美術館に展示されています。

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