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アップデートできていない感染対策とブレーキとなる同調圧力

 まだ6月なのに梅雨明けしたような夏空と猛暑であり、東京都心で6月に2日連続猛暑日となるのは観測開始の1875年以降初めてということです。

 当然ながら熱中症のリスクも高まるわけですが、炎天下でのマスク着用はそのリスクを助長する可能性もあります。厚労省は「新しい生活様式」における熱中症予防行動のポイントとして以下のような指針を出しています。

マスクは飛沫の拡散予防に有効で「新しい生活様式」でも一人ひとりの方の基本的な感染対策として着用をお願いしています。ただしマスクを着用していない場合と比べると、心拍数や呼吸数、血中二酸化炭素濃度、体感温度が上昇するなど、身体に負担がかかることがあります。したがって、高温や多湿といった環境下でのマスク着用は、熱中症のリスクが高くなるおそれがあるので、屋外で人と十分な距離(少なくとも2m以上)が確保できる場合にはマスクをはずすようにしましょう。

また屋外・屋内/子どものマスクの着用についてとしてどのような場面で必要なのか、リスクが高まるのかをリーフレットにしています。屋外だけではなく屋内でも会話をほとんど行わない場合、すなわち一人で買い物や美術館などで鑑賞する場合には不要であることになります。しかしながら日常生活ではこの指針に拮抗する場面が少なくはありません。

例えば以下のようなものです。

① 一人で買い物や美術鑑賞をするのにマスク着用が呼びかけられる

② 周囲を触ることがほとんどないのに手指消毒を求められる

③ マスクをしているのに十分な距離をとるように指示される

さらには未だに続けられている意義があるのか疑問に思う対応もあります。

① バスの最前席が使用できない

混雑してきたら後ろに詰めてくださいとアナウンスされますが、後ろは密になっており、その座席を使用すれば少しでも緩和されるのではないでしょうか?

② 航空機内で会話をしていないのにマスク着用が義務付けられている

「キャビンは数分ごとに空気が入れ替わっているのでご安心下さい(=換気は良好にできている)」とアナウンスがあるにもかかわらず、また通勤電車のように密集・密着している訳でもなく全員が座っている環境で「鼻と口を覆った状態」でマスクを着けさせることにどこまで意義があるのでしょうか?「一定の距離をあけて乗り降りしてください」というのも狭い機内ではほぼ不可能です。マナーといえばそれまでですが、それは感染対策の領域を逸脱しており、航空機でのマスクトラブルが散見されるのも義務ではないのに強制的に課されている(=従わない場合は降機させられる)ところにあるような気がします。

③ 待合室などのソファーに座れない場所が設定されている

会話もしない状態で離れる意義があるのでしょうか?むしろ座れない人がかえって多くなることには対応しないのでしょうか?距離が保てない、お互い会話をするからマスクをするわけであり、第3者どおしが会話することなく離れていればマスクは不要ではないでしょうか?

 これらの背景には様々な団体でのガイドラインが新型コロナが発生したばかりの頃の徹底した感染対策のままでアップデートされていないことにあると思われます。先日某番組で話題になりました。

 大元が変わらなければその傘下にある事業者はそれに従わなければならず、ひたすらアナウンスをして注意を促さなければならない訳です。むしろ国民一人ひとりの方が公衆衛生知識をアップデートして臨機応変、柔軟な対応を求めているにもかかわらずです。

 新型コロナ発生当初は感染対策がおろそかになっている方々を中心に検査陽性者、集団発生事例が報告されていたことから、国内で感染を制御するためには多くの人たちの協力が必要とされたわけであり、連日の報道などで基本的な感染対策が呼びかけられ、現在ではほとんどの国民が感染対策の必要性を理解し、日常生活に刷り込まれたことは大きな意義があり、素晴らしいことであると思います

 しかしその一方「手を消毒しない・マスクをしない=感染する」といった短絡的な先入観や固定概念も定着してしまったことで、融通が利かない、柔軟な対応が難しくなってしまったような印象もあるような気がします。このようなことが日々蓄積されたことで、周囲がしているから自分もそれに合わせなければならない、周囲と異なったことをすると気まずいなどといった日本人に特徴的ないわゆる「同調圧力」が生まれ、すぐに変えることができない状況がいまの世の中なのでしょう。

日本ではマスク着用が法律で義務付けられていない。外すかどうかは最終的に個人の判断となる。「周囲が外していなければ着用すべきだ」とマナーとして求める風潮も根強い。政府見解では会話をほとんど行わない屋外ではマスク着用の必要はないとしたが、今でも外出時にマスクをつけている人が少なくない。順天堂大学の堀賢教授(感染制御学)は「風潮を変えるには、多くの人が感染の仕組みを正しく理解することが重要だ。感染リスクが低いと分かれば、外す判断もできるし、尊重できる。幅広い世代に啓発しなければならない」と話している。

 多くの識者が述べているとおり、私もお伝えしてきましたが感染症が拡がるには3つの要素(感染源・感染経路・感受性宿主)があり、一つでもブロックすることができれば拡がることはありません。https://www.ntv.co.jp/sukkiri/articles/1727sdp4e6jn9movchjv.html

 自分が感染源であったとしても感染経路(*コロナでは飛沫感染・接触感染が主たる感染経路)を遮断(=マスクをする・人と会わないなど)すれば感染は拡がりません。また感染経路の遮断ができない(マスクをしていないなど)状況であっても感染源がいなければ感染は拡がりません。但しこの感染源がいないということを知ることが難しいのが新型コロナの特徴であるのですが、誰もいない屋外であればその可能性はないでしょう。この原理を理解していれば、おのずとどのような状況や場面でリスクがあるのか、あるいは自分が感染源であった場合にうつしてしまうのかが理解できるのではないでしょうか。

 いずれにしても「マスクを外さなければならない」ということではなく、それによるメリットよりもデメリットの方が大きくなってしまうのであれば本末転倒です。もちろんするかしないかは本人の自由なのですが、本日のニュースなどを見ていても、マスクで顔を半分以上覆っている人たちが「暑い!」「もう死にそう・・」などと扇風機や氷などを肌に当てている姿をみると「マスクを外せば顔の表面温度が下がり少しでも暑さが和らぐのはないか」と余計なお世話をつぶやいているところです。

#日経COMEMO #NIKKEI

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