見出し画像

格差改善にも効果的な高圧経済

豊かさの現在地 経済成長、日本と世界:日本経済新聞 (nikkei.com)

バイデン米政権下で金融・財政政策のフル稼働が続いたことにより、米国経済は世界に先駆けて金融政策の正常化に向かいつつあります。背景には、イエレン財務長官とパウエルFRB議長が高圧経済政策を意識してきたことがあります。高圧経済論は、経済の過熱状態を暫く容認することで、格差問題の改善も含めて量・質ともに雇用の本格改善を目指すものとされています。

実際に、著名経済学者オークン氏が1973年に執筆した論文では、高圧経済によって労働市場で弱い立場にある若年層や女性雇用に恩恵が及び、経済全体の生産性も高まることが示されています。リーマンショックやコロナショック等の深刻な不況が失業者の人的資本の毀損等を通じて潜在成長率も低下させたことからすれば、高圧経済は潜在成長率も高めることになるでしょう。

海外で進んでいるマクロ経済政策の新たな見方では、成長を促す分野や気候変動対策などへの効果的な財政支出による成長戦略が新たな経済・財政運営のルールとなりつつあります。このため、政府と中央銀行のバランスシートを連結した一体運営が重要とされており、金融政策の限界を念頭に低インフレ、低金利で金融政策の効果が低減する中、金融政策と財政政策を一体運営することで、財政政策の役割の重要性が示されています。超低金利下では財政収支悪化のコストも小さく、格差の是正など多様化する中長期の社会・経済課題の解決に向けて改革に取り組む必要があるとされています。

しかし、日本で高圧経済政策の環境が整っていない理由として、財政規律が意識された政府・日銀の政策連携についての共同声明の存在や、2025年度のプライマリーバランス黒字化目標が維持されていることがあります。政府と日銀の連携をより強めるには、インフレ率とGDPギャップの関係が重要といえるでしょう。具体的には、内閣府のGDPギャップに2四半期程度遅れてコアCPIインフレ率が連動しており、インフレ目標+2%に達成するために必要なGDPギャップ率が+2%程度になることがわかります。

日銀がインフレ目標2%に向けて金融緩和を続けても、アベノミクス時のようにGDPギャップが+2%に到達する前に財政政策が引き締めに転じてしまうと、日本経済の正常化は困難でしょう。このため、日本で高圧経済政策が機能するには、政府と日銀が現在の財政規律を意識するアコードを見直し、内閣府のGDPギャップ+2%達成するまで財政規律目標先送りが必要になると思います。

いいなと思ったら応援しよう!