岸田新政権とスタートアップ振興政策
自民党の総裁選で岸田氏が選出され、100代目の内閣総理大臣になることが決まった。
成長戦略の重点項目として、岸田氏がスタートアップに言及していることは総裁選の段階から気になっていた。
まだ新総裁として選出されたばかりであり、政策の具体化についてはまだまだ時間がかかることと思うが、スタートアップの育成、さらに言うなら産業の新陳代謝促進にどこまで力を入れられるかという点には注目していきたい。
岸田氏は政調会長だった約2年前にスタートアップの会合に出席し、以下の記事のように意見交換を行い、スタートアップを支援・振興する趣旨の発言をしている。
こうした一連の経緯をみると、岸田氏がスタートアップについては少なくても数年前から成長戦略の一環として位置付けることに何らかの意識を持っていたのではないか、と思われ、これは日本のスタートアップにとってはプラス材料だ。
一方で懸念材料もある。まだ始まったばかりではあるが、自民党の幹部や新内閣に起用する人材について、
「老・壮・青のバランスが大事だ」と述べ、中堅若手や女性の起用にも意欲を示す。
とはいうものの、現時点で起用が見込まれている人たちの顔ぶれを見ると、やはり若手が少なく女性も含め思い切った人材の登用という点では、残念ながら現時点ではめぼしいものがないと個人的には感じている。「若手」とされる福田氏でも54歳であり、40代(以下)の人材の起用があるだろうか。自民党や新内閣のトップに占める人々が年齢の高い人ばかりであれば、もちろん個人差も大きいが、一般論としては新しい動きに対する理解が十分にされるのかという点は心配だ。
総裁選挙で自らを支持してくれた人たちに対する目配りも必要ではあると思うが、バランス型の政治になればどうしてもすべてが「前例踏襲」「想定の範囲内」に収まってしまい、優先度に差をつけた施策が取りにくくなる。そうなれば、既存の企業や既得権を持つ産業を重視せざるを得なくなり、スタートアップ育成は後退するのではないかという懸念もある。
引き続き、新型コロナウイルスについては第5波はおさまったものの次の感染拡大がないという保証はなく、むしろそれがあると見込んだ上で経済政策を考えていかなければならないのが現状だろう。そういう中で新しい施策を取ることには難しさがあるのも理解できる。
しかし、現在の社会状況に対応して、リモートワークも積極的に取り入れている、というよりは、もともとそれが当たり前に行われていた会社がスタートアップには多いことを考えると、これからの時代に即した、パンデミックにも強い企業の在り方として、スタートアップを取り上げていくことができるのではないだろうか。
例えばリモートワークを積極的永続的に導入する企業に対して、法人税減税や規制緩和など何らかの優遇措置を取るのであれば、多くのスタートアップがそこに含まれる形となり、既存の企業に対しても公平な施策の一環として結果的にスタートアップを後押しするといったこともできるのではないかと思う。
また、リモートワークの浸透に伴って、リモートワーカーを誘致することで地域の活性化につなげようとする地方の動きも各地で起きている。
こうした点でリモートワークを国が掛け声だけでなく実効的な施策を伴って推進するなら、スタートアップと地方創生を同時に推進することにも繋がっていく可能性がある。これが実現するなら、新型コロナウイルスだけでなく今後発生するかもしれない各種のパンデミックに対する平時からの備えを持っておく意味でも有益な施策になるのではないだろうか。
岸田新政権には、スタートアップ振興を他の施策と切り離された単独のものとらえるのではなく、地方創生やリモートワークの推進と言った社会全体の課題の中にスタートアップ振興を含める形で、多くの人の理解や共感を得やすい形で政策に組み込んでいくことを望みたい。
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