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コロナ後に必要な規制緩和と就業支援

記事でもご指摘の通り、日本で労働市場の流動性が低いことの根本にあるのが、新卒一括採用、年功序列、定年制を象徴とした、同じ会社で長く働けば長く働くほど恩恵が受けやすいという就業構造があると思います。

この部分を段階的に変えていかなければ、コロナ後の日本経済の成長持続は危ういでしょう。

象徴は、正社員の賃金構造が年功序列となっていることであり、これを打破すべく一刻も早く踏み込みが必要な政策が、正社員の解雇ルールの明確化やホワイトカラー・エグゼンプションのような労働市場の流動化を促し労働生産性を上げる政策でしょう。

実際、OECD諸国の勤続10年以上の労働者割合と潜在成長率の相関をとると、明確な負の相関関係があります。

更に、潜在成長率を先行させた場合の相関と遅行させた場合の相関を比べれば、潜在成長率を遅行させた場合の相関が高いことからすれば、労働市場の流動性がその後の潜在成長率に影響を及ぼしている可能性が示唆されます。

つまり、これは労働市場の流動性が高い国ほど潜在成長率が高くなりやすいということを意味しています。

このように、労働市場の流動化と経済成長の関係を見ても明確な関係があり、背景には成長分野に労働力が迅速に配分されること等により、家計の収入も増えやすいことが推察されます。

ここは、成長戦略の中でも最も踏み込みが期待される部分です。

そして、労働市場の流動化を促すうえで象徴的な制度改正になると期待されるのが正社員解雇の金銭解決や脱時間給制度となりますが、残念ながら安倍政権が打ち出した「働き方改革」では踏み込んでいません。

ただ一方で、労働市場の流動性が高い国々では、労働者に職業訓練や職業紹介を行い、雇用主には労働者雇用に関する助成金を支給するなど、労働市場に積極的な働きかけを行うために相当な予算を使っているのも事実です。

従って、こうした労働市場の流動化を促す一方で、労働者の能力開発を促進して失業の長期化を防ぐ積極的労働市場政策に一刻も早く踏み込むことがコロナショック後の喫緊の課題といえるでしょう。

特に、コロナショックを受けて、人の移動が抑制されることにより、新常態下では産業構造の変化は不可避となるでしょう。

そういう意味では、雇用維持策だけでなく、業態転換しやすい規制緩和やデジタル化に対応できるような就業支援の重要性が増してくるでしょう。

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