配車サービスからモビリティサービスへ
ドイツ・ハンブルグ生まれのタクシー配車アプリmytaxiが、年内にFREENOWにリブランドするという発表があった。mytaxiユーザーに対して送られたメールでアナウンスされたものだ。
これは、mytaxiの株主であるダイムラーとBMWが、相互に出資するモビリティ関連のサービスを統合し、5つの NOW というブランド名に統合していく動きの一環、ということらしい。
mytaxiはUberと同じ2009年に創業したサービスで、いわば白タクの配車を行うUberに対し、mytaxiは正規のライセンスをもつタクシーの配車を行うところに違いがある。2016年には、同じく正規のタクシー配車を行うイギリス発のサービスHailoと経営統合をし、ヨーロッパの正規タクシーの配車サービスとしては最大級のドライバーと配車数を擁するサービスとなった。
今回のリブランドと各種サービスをNOWのブランドで統合していくことで、新しいモビリティサービスを目指すということが狙いのようだ。
一つ気になるのは、この動きはダイムラーとBMWが主導していて、自動車業界の範疇にとどまっていること。もちろん、自動車はEV化から自動運転まで、そして自己保有からシェアへという、大きな変化の中にあり、それだけでも十分に大きなインパクトがあることは間違いない。ただ、自動車の範疇に止まるなら、その動きはヨーロッパだけではなくアメリカでも十分に起きうるし、現に起きようとしている動きであり、そうなるとイノベーションの起きやすさなどの点で、アメリカの方が有利である可能性も高い。
一方で、モビリティを広く交通全般、ヒトやモノの移動に関わる全てと捉えるなら、クルマはもちろん、飛行機や鉄道(高速鉄道から通勤鉄道や路面電車まで)、水運や自転車といったものまでが含まれるべきだし、ヨーロッパやアジアの都市部は、実際にそういった多様な交通手段が相互に補完し合う形で交通体系が作られている。こうした環境は、アメリカであればニューヨークのマンハッタン島くらいにしかない、と言ってよいと思う。
ヨーロッパやアジアは、こうした強みを生かして、アメリカでは成立しにくい、新たなモビリティサービスを生み出していくことが大切なのではないか。
ドイツでは、日本と同様・同等の各種交通機関に加え、多くの街でトラム(路面電車)が走り、また国境をまたがって流れる河川を利用した水運も盛んであるなど、モビリティの多様性を考えるときに非常に恵まれた環境にある。例えば、すでに、ルフトハンザ航空の便名がついた高速列車ICEや都市間バスがある。そういう点で、ダイムラーとBMWにとどまらず、ルフトハンザやDB(ドイツ鉄道)、そして各地域の公共交通運営母体など、幅広いモビリティ関連プレーヤーの参画によって、アメリカでは成立し得ない緻密で有機的なモビリティサービスを生み、それがスマートシティの重要な一要素となるような展開となることを期待したい。
もちろん、そのような動きが日本からも生まれてしかるべきと思うのだが、日本の現状はどうしても既存の業界の枠組みの中での争いと枠組みの外への無関心が感じられ、とても残念な状況である、と感じている。out of the boxな発想と取り組みが日本でも生まれてくることを期待したい。
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